大学の頃の後輩Aは、今までに何度も霊を見ている奴だった。
ある日、所属しているサークル内で肝試しの話が持ち上がったという。
大学から少し離れた、近所ではいわく付きの墓地だった。
すっかり辺りも静まった真夜中、墓地にメンバー数人が集まった。
一人ずつ墓地の周りをぐるり一週するが、特に何も起こらず肝試しは終わろうとしていた。
皆ガッカリした雰囲気で、墓地から去ろうとした時だった。
「おい、アレ見ろよ!」
メンバーの1人が、ポツンと離れて立つ墓石のほうを指差した。
(ん……?)
Aがそちらを見ると、墓石の手前に女が立っていた。
白い服を着て、ボーッとたたずんでいる。
(なんだ…あんなものなら、見慣れてるよ)
怖がり逃げだす他のメンバー達を尻目に、Aは余裕でほくそ笑む。
メンバーの1人が慌ててAを急かす。
「何してるんだ!早く逃げるぞ!」
Aはやれやれという顔で、言う。
「あの墓石の手前の女だろ?あんなものは大した事ない……」
そう言いかけるのを遮り、他のメンバーは忠告する。
「女…?そうじゃない!墓石の向こうに、鉈を持った大男がこっちを睨んでるだろ!」
Aは途端に青ざめ、一緒になって逃げ出した。
「あのとき、手前にいた女の霊が邪魔で、全然見えなかったんですよ…」
あのまま油断して女の霊に近づいてたらヤバかったかも、とAは身震いしながら語っていた。
怖い話投稿:ホラーテラー geniusさん
作者怖話