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中編3
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鬼の面

高校の頃、たまに集まって遊んでいた悪友達がいた。

あれは夏休みの事。

ヒマを持て余していた私達は、集まって肝試しでもしようかという話になった。

私はあまり気が乗らなかったが、しつこく誘われ仕方なく参加することになった。

そして肝試し当日…

近くのお寺の裏にある、いわく付きの山林に集まった。

集まったのは、いつものメンバー六人。

前フリの怪談話でさんざん盛り上がった後、さっそく一人目が山林へと入っていった。

それから少しして、メンバーの1人Kが「ちょっと小便…」と言って山林のほうへ入っていった。

そして、しばらくして……

「ぎゃーーっ!!」

叫びながら、一人目の奴が山林から飛び出してきた。

山林の中で、木の影に潜んだ鬼を見たのだという。

小便にいったKは未だに戻ってこない。

それで私はピンときた。

Kが何か変装をして、脅かしたのではないかと。

しかし面白かったので、皆には黙っていた。

二人目の奴が山林に入っていくと、しばらくして同じように叫びながら飛び出してくる。

やはり山林の奥で鬼を見たというのだ。

そしていよいよ三番目、私の順番が回ってきた。

少し期待しながら、山林の中の道を進んでいく。

やがて奥へと進み、大きな木の近くに来た時だった。

木の影から、鬼の面をつけたKがこちらを覗いていた。

(顔は確かに恐ろしい鬼のようだけど、よく見ると服装がそのままじゃないか…)

私はこらえ切れずゲラゲラ笑っていると、木の影からKが出てきた。

「何だ、分かったのかよ…」

Kはガッカリしたように呟いていた。

…しかし近くで見てみると、実に良く出来た面だ。

まるで本物の鬼の顔を剥ぎ取ってきたかのようだ…

「いつまでそれ着けてんだよ。気味悪いから早く外してくれ」

私は少し笑いながらKに言う。

「ああ…今、外す…」

そう言って、Kは面に手をかける。

「あれ……?」

……Kの様子が、何だかおかしい。

必死に顔から面を外そうと、もがいているように見える。

「外れない…!」

そう何度も呟きながら、面を必死で外そうとしているKの様子からは異常な雰囲気が感じられた。

私も一緒になって外そうとするが、まるでびくともしない…

だんだん気味が悪くなった私は、もがき続けるKを連れて山林から出ることにした。

他の皆の所へ戻ると、必死でもがき続けるKの姿を見て驚いていた。

皆で一緒になってKの面を剥がそうとするが、まるで外れる気配もない。

まるで、Kの顔と一体化してしまったかのように…

「アアアー!ギャーーッ!!」

次第にKの様子も、狂ったように変貌していく。

これは異常だと悟った私は、ちょうど近くの寺へ行って相談しようと考えた。

寺の住職さんを訪ね、Kを見せると、すぐに顔色を変えていた。

すぐにKを連れていき、お経を読んで聞かせている。

すると、やがてKの顔から鬼の面がポロリと剥がれ落ちた。

それに合わせ、Kも落ち着きを取り戻した様子だった。

…そのあとKはたっぷりと叱られていた。

何でもKは、どうやって忍び込んだのか、寺で保管されていた鬼の面を盗みだしたのだという。

…その鬼の面には古い言い伝えがあった。

昔、祭りで鬼の面を被っていた男がいた。

しかし、なぜかその鬼の面が外れなくなってしまう。

恐ろしい鬼の祟りだと、男は村人から恐れられるようになる。

やがて悲しみにくれた男は、村里から消え去り、山奥で鬼として生きるようになった…

その男が死ぬまで被っていたのが、その面なのだそうだ。

面の内側には、古い人間の皮膚がべたりと貼りついている。

さらに、悲しみ・恨みの強い念が強く染み付いているのだという。

剥がれ落ちて床に転がる恐ろしい鬼の面が、なぜかとても悲しい表情に見えた気がした。

人々の怖れや悲しみ・恨みの念が、一人の人間を鬼へと変えてしまったのだろうか…

それ以来、Kと私達が一緒に遊ぶことは無くなってしまった。

…今でも、あの鬼の面は寺で大事に保管されているらしい。

怖い話投稿:ホラーテラー geniusさん  

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