定職にも就かず、ギャンブルに明け暮れ、借金まみれの男が居ました。
家も追い出され
仲間にも見放され
ブラックリスト入りしてサラ金からも借りれない
食い物にも困りだした男は、いくあてもなくフラフラと裏通りを歩いていました
ふと目の前を歩く初老の紳士に目を引かれじっと見てみると。
高級そうなコートに
高級そうなステッキ
高級そうなバッグ
高級そうな指輪
男はニヤリと笑い
(このじじいから生活費を頂くとしますか)
初老の紳士を後から羽交い締めにし、ビルとビルの間に引きずり込み
金目の物を剥ぎ取るように奪いました
「辞めてくれ!金はいくらでもやるから命だけは!!」
紳士は涙を流し懇願しました。
「俺もそこまで悪じゃねぇよ。殺しはしねぇからよ」と言うと男は紳士の指輪を奪おうと、紳士の右手に腕をのばしたその時
「辞めてくれ!!この時計だけは!!!!」
と紳士が叫びました。
(こんな汚ねぇ時計いらねえよ。でも…こんなに必死になるって事はかなりの高級品か?)
男は紳士から時計を奪い、返してくれとしがみついてくる紳士を蹴りあげました。
数メートル飛んだ紳士は耳から血を流し、死んでいました。
焦った男は、盗んだものを持ちその場を逃げました。
その後盗品を質に入れに行ったのだが、時計だけは価値が無いと言うことで買い取って貰えなかった。
(なんだよ…あのじじいの反応からして高級品と思ったのに)
仕方なしに自分の腕にはめてみると、しっくりきました。
(まぁ愛用してやるか)
数日後何もする事がなく、ボーッとしながら時計を弄ってたとき、
針をグリグリと回したとたんに目の前が一瞬光りました。
(なんだ?今の?)
何気なしにテレビを見ると二時間程前に見たトーク番組をまたしていました。
(あれ?またやってる。
ていうか、内容も同じ?)
携帯を見てみると時間がさかのぼっていました。
腕時計の時間に合わせるかのように。
(もしかして…時間を操れるってことか?だからあのじじいあんなに必死だったのかよ!)
そして男は次の日、競馬場へと向かい、レース毎に記録を書き、時計をさかのぼらせ万馬券を買い
多額のお金を手に入れました。
(ケッケッケこれで俺は一生大金持ちだぜ)
大金を手に入れた男は夜通し遊び倒し、女をはべらかし、千鳥足で家へと帰っていきました。
タクシーを拾おうと、大通りの車道と歩道の境に立っていると、通行人が後からぶつかり、男は車道へと倒れてしまいました。
そこへ大型ダンプが突っ込み男の頭はぐちゃぐちゃになった。
倒れてダンプが突っ込んでくる時男は恐怖と痛みに襲われていた。
しかも、ダンプに潰された衝撃で時計が壊れ
この恐怖と痛みの瞬間を永遠に刻み続けた。
まるで、ビデオのリピート機能のように。
時を操る時計を手に入れた男は。
死ぬより辛い苦しみを味わい続けている。
怖い話投稿:ホラーテラー 小野田 優良さん
作者怖話