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中編3
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時を操る時計

定職にも就かず、ギャンブルに明け暮れ、借金まみれの男が居ました。

家も追い出され

仲間にも見放され

ブラックリスト入りしてサラ金からも借りれない

食い物にも困りだした男は、いくあてもなくフラフラと裏通りを歩いていました

ふと目の前を歩く初老の紳士に目を引かれじっと見てみると。

高級そうなコートに

高級そうなステッキ

高級そうなバッグ

高級そうな指輪

男はニヤリと笑い

(このじじいから生活費を頂くとしますか)

初老の紳士を後から羽交い締めにし、ビルとビルの間に引きずり込み

金目の物を剥ぎ取るように奪いました

「辞めてくれ!金はいくらでもやるから命だけは!!」

紳士は涙を流し懇願しました。

「俺もそこまで悪じゃねぇよ。殺しはしねぇからよ」と言うと男は紳士の指輪を奪おうと、紳士の右手に腕をのばしたその時

「辞めてくれ!!この時計だけは!!!!」

と紳士が叫びました。

(こんな汚ねぇ時計いらねえよ。でも…こんなに必死になるって事はかなりの高級品か?)

男は紳士から時計を奪い、返してくれとしがみついてくる紳士を蹴りあげました。

数メートル飛んだ紳士は耳から血を流し、死んでいました。

焦った男は、盗んだものを持ちその場を逃げました。

その後盗品を質に入れに行ったのだが、時計だけは価値が無いと言うことで買い取って貰えなかった。

(なんだよ…あのじじいの反応からして高級品と思ったのに)

仕方なしに自分の腕にはめてみると、しっくりきました。

(まぁ愛用してやるか)

数日後何もする事がなく、ボーッとしながら時計を弄ってたとき、

針をグリグリと回したとたんに目の前が一瞬光りました。

(なんだ?今の?)

何気なしにテレビを見ると二時間程前に見たトーク番組をまたしていました。

(あれ?またやってる。

ていうか、内容も同じ?)

携帯を見てみると時間がさかのぼっていました。

腕時計の時間に合わせるかのように。

(もしかして…時間を操れるってことか?だからあのじじいあんなに必死だったのかよ!)

そして男は次の日、競馬場へと向かい、レース毎に記録を書き、時計をさかのぼらせ万馬券を買い

多額のお金を手に入れました。

(ケッケッケこれで俺は一生大金持ちだぜ)

大金を手に入れた男は夜通し遊び倒し、女をはべらかし、千鳥足で家へと帰っていきました。

タクシーを拾おうと、大通りの車道と歩道の境に立っていると、通行人が後からぶつかり、男は車道へと倒れてしまいました。

そこへ大型ダンプが突っ込み男の頭はぐちゃぐちゃになった。

倒れてダンプが突っ込んでくる時男は恐怖と痛みに襲われていた。

しかも、ダンプに潰された衝撃で時計が壊れ

この恐怖と痛みの瞬間を永遠に刻み続けた。

まるで、ビデオのリピート機能のように。

時を操る時計を手に入れた男は。

死ぬより辛い苦しみを味わい続けている。

怖い話投稿:ホラーテラー 小野田 優良さん  

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