大学卒業も間近な4回生の冬、実家で飼っていた犬のジョンが亡くなった。
当時私は地元を離れ一人暮らしをしており、母からのメールでそれを知り、泣いた。
卒業して実家に戻った私に、父がこんな話をしてくれた。
ジョンが亡くなってすぐのある夜、父は会社帰りに飲みに行き、たいへん酔っ払って深夜に帰宅した。
しかし、酔っ払っている為鍵がどこにあるか分からない。
そんなダメダメな父なので、普段は父がどんなに遅く帰っても母が寝ずに待っている。
しかしその日は家の電気が消えており、チャイムを押しても誰も出ない。
父は「先に寝やがった!」と立腹し、怒りに任せて玄関フードのガラスを蹴破り、その場でふて寝してしまったらしい。
どのくらい経ったのかは知らないが、父は自分の頬が舐められてるのに気付き、目を開けた。
そこには、ジョンがいた。
酔っ払ってる父はジョンが死んだことなど忘れており「お~ジョン、ジョン」と頭を撫でたそうだ。
ジョンがきゅ~ん…と鼻を鳴らしたところで父はハッと気付き、起き上がった。
「このまま寝たら凍死する…」
私の実家は北国である。まだ雪も残るそんな時期に、ガラスの割れた玄関フードなんかで寝たら確実に死ぬ。
父は近所に住む叔母に電話をかけ、泊めて貰うことにした。
ジョンの姿はもうなかった。
叔母の家に行く道すがら、あれは夢だったのだろうと考えた父だったが、到着した父を見るなり、叔母がこう言った。
「どうしたの、あんた…犬の臭いがするよ」
父は、あれは夢ではないと確信した。
「きっとジョンが助けてくれたんだよ」と、父は私に語った。
父は霊的なものは一切信じない質なのだが、これだけは信じているらしい。
(ちなみに、その日母は先に寝てたわけではなく、祖父の家に出掛けていたらしい。事前にその事は父に話していたが、酔っ払った父は忘れてたそうな…ダメすぎるよ、父)
余談だが、兄も「夢にジョンが出てきて喋った」と言っていた。
「あまり遊んでやれなくてゴメンな」と兄が泣きながら謝ると、ジョンは「いいよ。ありがとう、Sちゃん(兄のあだ名)」と言って去って行った、と。
喋った内容は覚えているが、どんな声だったかは覚えてないらしい。
「ただの夢かもしれんが、俺はジョンがお別れを言いに来たと思ってる」
兄は涙ぐんでそう言った。
私も涙目で頷いた。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名MAXさん
作者怖話