それは、遠い昔の悲しいお話。
アるところに、とてもとても貧乏で、とてもとても小さな村がありました。
村の人達は、畑を耕したり、猟をしたりして頑張っていましたが、村は貧乏のままでした。
蓄えていた食料はとうに底をつき、その日の食べ物を確保するだけで精一杯の状態でした。
しかし、村の人達は穏やかで、真面目で、心の優しい者ばかりでした。
皆は、助け合って生きていました。
そんナある日、ある夫婦の間に子供が生まれました。
まんまるい目をしタ、可愛らしい男の子でした。
村の人達は夫婦を祝福しました。
そノ男の子は、神様の加護を受けた、不思議な男の子でした。
男の子の涙は、真珠になりました。
それは目が飛び出る程の、高額なお金で売れました。
男の子の血は、どんなに深い傷でもたちまち治りました。
傷口に男の子の血を一滴垂らすだけで、傷口は塞がりました。
男の子の肉は、どんなに重たい病でも元気になりました。
男の子の肉を食べると、布団でウんうん唸っていた人はすぐに飛び起きて、走り回るのでした。
それは、神様からのプレゼントでした。
貧乏で生活が苦シくても、助け合う事を忘れずに、綺麗な心で生きてきた村の人達への、プレゼントでした。
村はたちまち大金持ちになりました。
男の子の涙を売るだけで、お金は手に入ります。
村の人達は、ロくに働かなくなりました。
村の人達は、豹変しました。
あんなに優しかったのニ、お金に執着し、とても怖くて暴力的な人に変わってしまいました。
男の子は、たくさん泣かされました。
肉を裂かれ、血を抜き取られ、泣かされました。
痛くてたまりませんでした。
男の子は首輪につながれ、外に放置されていました。
雨の日も、風の日も、雪の日も、外にいました。
村にオ金が無くなってくると、泣かされました。
お金がいっぱいある時でも、泣かされました。
それが村の人達を喜ばせているト分かっていても、涙は止まりませんでした。
村の人達は、大人もコ供も皆、男の子をお金になる道具としか見ていませんでした。
殴られ、肉をむしられ、血はいっぱい流れましたが、男ノ子が死ぬ事はありませんでした。
男のコは食べ物も十分に与えてもらえず、痩せこけていきました。
そうして6年の月日ガ流れました。
男の子は普通の6歳よりも、ひどく小さくて、ボロボロで、所々髪が抜け落ちていました。
それでも男の子は、イつか報われる日が来ると信じていました。
あル春の日、その村に旅人が訪れました。
心ノ優しい旅人は、外に投げ出されるように放置されている男の子を見て、大変怒りました。
旅人は、男の子の能力を知らないのです。村で秘密にされていたのでした。
その旅人は、国の偉い人に現状をありのまま伝えました。
偉い人はすぐに動きました。
今でいう警察のような人達ガ男の子を助け出し、その日の夜中、その村に爆弾を落としました。
村は、瓦礫と砂に変ワりました。
生きている者は一人もいませんでした。
男の子に笑顔が戻りました。
これで、幸せになれると思いました。
でもなれませんでした。
男の子は国で世話される事になりましたが、男の子の能力を知ると、たちまち村の人達と同じ事をされました。
男の子は冷たい、石で造られた牢屋のような所にいれられました。
そして、9歳になりました。
男の子は狂いました。
男の子は叫びました。
息が続く限り、絶叫しました。
息が切れてもすぐに叫びました。
声がカすれ、喉が裂けて血が出ても、大きな声で叫びました。
目を見開き、涎を流し、白目を剥いても叫びました。
切り取られた肉から血が流れても、叫びました。
それは、三日三晩続きました。
あまリにもうるさく叫び続け、皆は嫌になりました。
男の子は殺される事になりました。
国としては残念だったのですが、狂った男の子は邪魔なだけでした。
男の子は、肉をはがれました。
血はすっかり抜き取られました。
真珠の涙はもったいなかったのですが、男の子は泣かなくなってしマったので、諦めました。
男の子は恨みました。
故郷の村の人達を恨みました。
旅人を恨みました。
国を恨みました。
自分に関わった人達全てを恨みました。
男の子の叫びは、男の子が絶命スるまで続きました。
男の子は、人の温もりを知らずに死にました。
体は死にましたが、魂は残りました。
天国には行けません。
男の子の心は、とても汚れてしまっていました。
地獄にも行けません。
男の子の心は、閻魔様にも手におえません。
男の子は呪いをカけました。
自分に関わった者全てを呪いました。
男の子に関わった人は、いろいろな方法でこの世から去りました。
男の子はソうして、一人一人確実に呪っていきました。
誰も、男の子の呪いとは知りません。
月日は流れましたが、男の子の怒りは静まりません。
男の子に関わった人の子孫にも、呪いは降りかかりました。
ある者は行方不明に、ある者は事故に、ある者は病気に。
誰も知らないうちに、誰も気付かないウちに。
男の子の呪いは確実に、降りかかりました。
男の子は今も、さまよっています。
あっちの世界から、こっちの世界を見ているのです。
自分には関係ないと、思いますか?
これは、昔々の、私達のご先祖様のお話。
男の子に関わったご先祖様は、千人前後、いらっシゃいます。
その人達の血を引いていナい、と言い切れますか?
次に男の子に狙われる子孫ハ、あなたかもしれませんよ。
………ほら、感じませんか?
背後からノ、冷たい視線を。
でも、振り返ってはいけません。
きっと、そコには……………、
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怖い話投稿:ホラーテラー ジェイさん
作者怖話