墓参りをしに田舎に帰ったNは、不運にも山で熊に出あう。九死に一生を得たものの、助けを求めたさいにマトモに話を聞かなかった親類に対し腹をたてたNは、母をふくむ一同を皆殺しにする。
意識は途切れ、目覚めた先にあった光景は殺したはずの親類が庭でバーベキューの準備をしているところであった…
N「頭メッチャ痛いわぁ。なんかメチャメチャ怖い夢みてた気するけど、思い出されへん。俺、うなされたりしてなかった?」
親類「…。」
N「???」
N「てか、オカンは?」
親類「ボソボソ…」
Nは違和感を感じた。親類がなにか変だ。
背後から話しかけていたNは、親類の様子をうかがおうと正面にまわった。
途端にNの表情が凍りつく。
親類の顔は土気色をしており、目は虚ろで光を失っている。頭部がパックリと割れていて中の脳みそが見えるほどだ。
驚くべきは、血が一滴も流れでていないことである。
Nは、なにか重大なことを忘れている気がした。
懸命に思いだそうとするも、恐怖で思考がうまくまとまらなかった。
体が動かない!
必死に力を入れ逃げようとするNに親類たちが近づき周りを取りかこむ。
そのとき、後ろにいた誰かにNは腕をつよく引っぱられた。
母親だった。
母親も親類たち同様、頭は割れ顔色も悪い。だが目だけは違った。
使命感か正義感か…いや、もっと高尚な光が宿っていた。
母「早よ戻りぃ!」
N「えつ???」
Nは訳がわからなかったが母親に引かれるままついて行った。
優しい光がNを包み、意識が曖昧になっていく…
N「・・・・はっ…。」
そこは病院だった。
医者は調子はどうか?と聞き、Nは「大丈夫です」とだけ答えた。
Nの表情から状況をよくつかめていない事を察した医者が、説明をはじめた。
医者「君が橋から落ちるところを、たまたま近くを通りかかった人が見ていて慌てて救急車を呼んだそうだ。とにかく今はゆっくり休みなさい。」
Nは少しずつ現状を理解していった。
山で熊に遭遇したこと・母を含むその他親類をみんな殺してしまったことが現実であるという事。
その後、自省の念にかられたNは自殺をはかり、近くの橋から身をなげたこと。
恐らくは自分が生死の境をさまよっている時に親類にとりこまれそうになっていた事。
悲哀におそわれたNは、泣きながら医者に全てを自供した。
医者が警察に知らせ、母とその他親類5人の遺体が確認された。
警察が病院にきたが、今はゆっくり休ませてやってほしいと医者がとりはからってくれた。
その晩、Nはなかなか寝つけずにいたが夢うつつの中、母親があらわれた。母はただニッコリと笑顔をみせただけですぐに消えてしまった。
起きてからのNは自分の犯した過ちをただただ後悔した。
幾度となく脳裏をよぎる「自殺」の2文字を思いとどまらせたのは、母親の心情を理解したからだった。
あの時の高尚な瞳の輝きは、間違いなく息子に対する惜しげもない「愛」によるものだった。
Nは何度も、何度も泣いた。
生きることを決意したNは体が回復した後、警察に引き渡された。
Nの犯した過ちは決して許されるものではない。
この男は、罪と後悔を背負い一生を生きていくのだ。
いかがだっただろう?
血縁の者の殺害という過激な内容であったから不快に感じた人もいるかもしれない。
また後半が、ややぬるい出来あがりになってしまったが、この話で僕が描きたかったのは親の愛情の底知れない深さである。
母親は理由もわからないままに我が子に殺され、尚も息子を愛しつづけていたのだ。
「親の心、子知らず」
我々が親にどれほど愛されていたかを知るのは自分に子供ができた時である。
そして親孝行というのは「しよう」と思いやるのではなく、「しとけばよかった」と後悔するのが大半である。
あなたが実家暮らしなら今晩あたり肩たたきでもしてあげてはどうか。
コメント欄にて応援してくれた方、中傷してくれた方、ベリーグッド・グッドをくれた方、採点なしだった方に等しく感謝します。
稚拙な物語ではありましたが、これを読んでくれたあなたが何かを感じてくれたのであれば嬉しく思います。
ありがとうございました☆
怖い話投稿:ホラーテラー BLACK・KIDさん
作者怖話