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双子の兄 匂いと臭い 終

中編5
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双子の兄 匂いと臭い 終

あちゃ~、妙に忙しくて、前回までのあらすじ書かなきゃまずい?ってくらい、間が空いてしまいました~(泣)

一応、やり始めたことは最後までやり通す主義なんで、懲りずに投下します。

覚えてくれている人だけでいいんで、読んでくれるとめちゃ嬉しいです。

では、続き

兄は神社に辿り着くまで、その山に強い違和感を感じていたという。

(霊の数、多過ぎないか?昔、合戦場だったというのならまだしも、ここ、山ん中だぜ??)

刀で切られた者、弓が刺さった者、生首らしきものも確認できた。

彼らは一様に、生前、自らの肉体に受けた苦痛を訴えてきた。

いや、正確に言えば、彼らは兄に直接、訴えかけていたわけではないらしい。

彼らに兄の姿は見えていない。

それを兄は判っていた。

彼らが見ているのは殆んど、彼らが勝手に思い描いた地獄絵図なのだ。

だから、憑依される危険は薄いと考えていた。

兄は言う。

「霊感と霊媒体質とは全く別のものだ」

兄自身は霊を寄せ付けない体質なので、霊感はあっても、悪霊に不意打ちを食らうことはまず無いという。

逆に世の中には、霊感など全く無いのに、知らぬ間に、悪霊を次々と引っ張り込む人がいるらしい。

自分の意志で取りつくわけではないから、人間に憑依していることすら、気付いていない霊が殆んどなんだとか。

兄が恐れるのは・・・

相手をしっかりと見据えた上で、攻撃あるいは憑依しようとする悪霊。

そんな霊と目を合わせたらお手上げだという。

霊の力が強力になればなる程尚更だ。

兄は断言する。

「ある程度の力を持った悪霊なら、人間に勝ち目など絶対に無い!」

山に入る時感じた

〈強い怨念〉

(やばそうなら逃げるしかない)

兄は内心、かなりビビっていたらしい。

予想通り神社には・・・

恐怖で立ちすくんでしまう程の、禍々しい気配に満ちていた。

(土というものは長いこと日に当たらないと、こんなに嫌な臭いを発するものなのか・・・)

大木に囲まれたその神社は、昼間だということを一瞬忘れさせてしまう程薄暗くじめじめして、腐ったような土の臭いが立ち込めていた。

兄は、例え悪霊が姿を現しても目を合わさないように注意しながら、静かに後ずさった。

すぐに逃げ出さなかったのは、(果たしてどんな霊が潜んでいるのか?)

という興味を、どうしても捨てきれなかったかららしい。

しかし・・・・

どんなに目を凝らしても

そこに悪霊の姿は無かった。

あるのはただ、

強烈な怨念が渦巻いているという異様な気配だけ。

(悪霊がいない??霊気はこんなに濃厚なのに・・・・)

兄の警戒心が少し緩んだ。

その瞬間!

目の前が真っ暗になる。

(痛い!)

(苦しい!)

強烈な念の波が一気に押し寄せてきた。

!!!

猛烈な吐き気が兄を襲う。

説明しようのない負のエネルギーに押しつぶされる!

かつて経験した事のない恐怖に兄は震え上がった。

(死ぬ!!)

心の中で

「怖い!助けて!!」

何度も大声で叫び続けた。

意識が遠のいた。

気絶する前に兄が見たもの・・・・

それは・・・

いつも父親とダブって見えていた犬顔の男が、お面を外そうとしている、そんな場面だったという。

それを見て兄は何故か、

(助かった!!)

と確信したらしい。

兄の意識が回復した時には、既に日は暮れかかっていた。

よろよろ立ちあがると山を下り始める。

頭が朦朧としていたせいもあるが、恐怖心は消え失せていた。

そして・・・・

50メートル程歩いた所で、兄は、来る時には気付かなかった花の匂いを嗅いだという。

(え!?何?この匂い・・・・)

兄は匂いのする方へふらふらと歩きだす。

神社を囲んでいる大木の外側は緩やかな崖になっており、その下には思わず目を疑うほどの美しい景色が広がっていた。

自然にできたのであろうか、そこだけが黒土の、20メートル四方のその畠には、小さな色とりどりの花が咲き乱れていたのだ。

そして、それまで気にとめたこともなかった花の匂いに、兄は打ちのめされたという。

大袈裟ではなく、実際、感動で涙が溢れたんだそうだ。

よく見るとその畠から例えようのない美しい色のオーラが天に向かって立ち上っている。

「ごめんよ」

兄は名も知らぬ小さな花たちに謝って、その畠に寝転がった。

(あ~いい匂い!!)

得も言われぬ幸せを感じながら、再び意識を失ったという。

「もう日が暮れてたな、Tがや○ざの親父さんと助けに来てくれたのは」

「へ~(笑)」

「俺を発見した時、死んでる!と思って焦ったらしいわ(笑)あの山、高く売れる杉の大木がたくさんあるらしいんだけど、切ろうとした者が死んだり事故にあったりして、材木を扱う者の間では〈呪われた山〉ってことで有名だったらしいわ。それ知ってて、急に怖くなって俺を置き去りにしたんだな。あいつ」

「(笑)Tらしいな」

「あの山、ある意味、パワースポットなんだな。おそらく、遥か昔に凄く徳の高い人が亡くなってる。たぶん、あの畠の辺りで。もしかしたらそこに埋められてるかも」

「まじ?」

「それに気付いた修験者か誰かが神社を造ったんだろう。だからボロボロの祠からは霊の気配を全く感じなかったんだ」

「けど、凄い霊気がしたって言ったろ??」

「考えてみりゃ、あの山で見た霊たち、殆んどが戦(いくさ)で死んでるんだ。呼び寄せてるのさ、あの山が。地獄でのたうちまわっている霊たちを。知らず知らずの内に天国の匂いに誘われてるんだ。あの、パワースポット、すげ~よ。どんな人が亡くなった跡なのかめっちゃ知りたいんだけど、無理だな、今の俺の力じゃ」

・・・・・・・

「あの神社で感じた強烈な怨念、あれはたぶん、まあ、想像だけど、成仏した霊たちが残して行った汚れた服みたいな物なんじゃないかな。まあ、魂の垢ってとこか。だから、霊の存在すら感じなかったんだ」

「天国の匂いって、どんな匂いなん?」

「ずばり花の匂いさ。何とも言いようのない花の匂い。俺、思うけど、花の匂いってそのまま天国と繋がってると思って間違いないと思う」

「日本はいい国だよ。嗅ごうと思えば花屋に行けば簡単に天国の匂いが嗅げるんだから」

??

「砂漠が国土の殆んどを占めてる国の子供なんか、天国の匂いを嗅ぐ練習をしようにも出来やしない」

????

「曲がりなりにもTのお陰であの少女を地獄から救う方法が分かったんだ」

!!

「その前に身体鍛えなきゃな」

???

「俺、わりいけど、修行僧なんかがよく荒行するだろ?あれ、ただのパーフォーマンスだと思ってたんだ」

・・・・・・・・

「肉体鍛えとかないと、下手すりゃ自分の魂追い出されるわ。いやまじで・・・・だから実は今、空手やってるんだ」

「兄貴が空手??」

弱い筈の兄貴が妙に逞しく見えた。

終りにするってことで終りにするけど・・・・実はまで途中もいいとこ。

後日談ってことでまた今度・・・・・大汗

怖い話投稿:ホラーテラー 双子の弟さん  

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