『…自動車が崖から転倒…若い男女のカップルが今も意識不明の重体で…』
「やれるコトはやった…後は彼らの生命力に懸けるしかないな…」
医師は集中治療室から出て来るとそう言った。
部屋には二つのベッド、そこにたくさんの管をつけた祐介と真奈美が
今も微かな命の火を灯していた。
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気付くと祐介は、小川の真中にいた。深い森の中に流れる、一本の長い小川であった。
(…?は?どこだ?ここ)
事故に遭った事実、現実とは思えない世界…祐介はここがどこなのか直感的に解った。
「これが三途の川…ってヤツか?」
なんとなくそうは思ったものの、疑問もあった。普通三途の川とは『渡る物』である。なぜ俺は川の真ん中にいる?
そしてもう一つ…
川を挟んでどちら側が現実世界で、どちら側が死の世界なのか、というコトである。
(安易に川から出てフラフラと歩いて行ったら、死の世界に行っちゃうかも…)
そんなコトを考えていたら、不意に後ろから声をかけられた。
「クスクス…お兄さん、こんな所で何してるの?」
そこには見知らぬ女の子がいた。
(申し訳ないが続く)
怖い話投稿:ホラーテラー 春近さん
作者怖話