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中編6
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上海DVD

今からする話は、あまり面白くないかもしれません。

しかしながら、これは私が体験した事実です。

1年前の春、私は会社の命令で、中国の上海に駐在員として行く事になりました。

私の会社はIT企業で、中国に進出している日系企業に対し、業務効率を図る為の

システムを販売しアジアシェアを拡大するという計画のもと私は派遣されました。

上海は、中国の中でも国際的な都市で、中学レベルの英語が話せれば特に不自由は

ありませんでした。住まいも会社に用意された家具つきのマンションに住み、

通勤も地下鉄を使って20分という日本に居たころより快適な生活が用意されていました。

駐在して3ヶ月が過ぎたころです。私はいつものように、仕事を終え地下鉄に乗り

帰宅する途中、不意に声をかけられました。

「ニーリィベンレンマ?=おまえは日本人か?」

声を掛けてきたのは、路上でDVDを販売している20歳そこそこの中国人女性でした。

上海ではこのような、路上DVDの販売はなんら珍しいことではありません。

「シィーダ=はい」私は覚えたばかりの中国語で答えました。

その女性は、にんまりした笑顔で、なにやら私に話しかけてきましたが、私の語学力では

それが何かわからず「ティンプゥトン=言葉がわかりません」と答えその場を立ち去ろうとしました。

しかし、私はこれもいい語学の勉強だと思い、DVDを買うことにしました。

中国はコピーDVDが横行しているため、5元(70円)~10元(150円)くらいでDVDが買うことができます。

私は映画のDVDでも買おうと思い、片言の中国語でその女性から洋画のDVDを一枚買いました。

翌日は休みだったこともあり、帰ってゆっくり観ようと思いました。

家に帰り、買ってきたDVDのパッケージをあけると、中にはなんの変哲もない表面の白いDVD-Rが一枚

入っていました。「???」いくら中国のコピー品とはいえ、表面には通常パッケージのステッカーが

張ってあるものです。しかしこのDVDにはステッカーが張っていない??

とりあえず、DVDを再生してみることにしました。。。。

DVDプレーヤーのカウントは進んでいますが、画面は黒いまま・・・。ただ「キーン」という電子音が

耳に響くだけ・・。「(壊れてるのかぁー。)」私は、どうせ安物だし、中国だからそんなこともあるんだろう

と思ったそのときです。

「ケケケ・・・」

背筋がゾクっとしました。

確かに声が聞こえました。とっさにプレーヤーのカウントをみました。「1:22」

私は10秒ほど巻き戻してもう一度聞いてみました。錯覚だったのかもしれない・・・。

「1:16、17、18・・・」「(あれ??)」声は聞こえません。

錯覚だったのかと思い少しほっとして、DVDを止めようとしました。。

しかし、リモコンの停止ボタンを押しても止まりません。「(電池切れ?故障?)」

プレーヤー本体の停止ボタンを押しに行ったそのときです!

テレビ画面に、目のつりあがった青白い女性の顔が映りました!

「うわぁぁあ!!!」

私はびっくりしてそのまま後ろにひっくり返りました!

「ケケケ・・・」

目のつりあがったテレビの中の女性が確かに笑っています!

私は焦ってテレビを消そうとしましたが、電源ボタンを押しても消えません!

コンセントの電源を急いで抜いたときテレビは消えました。

「(あれはなんだ!!???)」

青白いつり目の女性・・・。日本人?中国人?アジア人なことは確かでしょうが、

あの表情は普通の人間のできる顔ではなかった。。。

気持ち悪くなった私はそのまま、ベットに潜り込み、電気をつけたまま寝ました。

翌日、冷静になった私はそのDVDを誰か他の人にもみてもらおうと思いました。

リビングに行き、昨晩強制的に電源を落としたDVDプレーヤーからDVDを取り出そうと

したそのとき

「(あれ??)」

プレーヤーの電源が付きません。。。電源が付かないということはDVDが取り出せない。。

「(テレビは付くかな??)」

とテレビの電源を入れようとしたそのとき、私は目を疑いました!

電源の入っていないテレビの画面に反射して移る私の背後に、人が立っている。。。

背筋が凍りました。心臓がドクドクいい出しました。

恐ろしくて振り向けない。そして、画面から目を逸らせない。じっと静止したまま、

その人影はこちらを見ているようでした。確かに背中に視線を感じました。。。

「(DVDの女!!???)」私はそう思いましたが、その人影は女性にしては大きく

男性の様に見えました。私は意を決し振り返りました。

しかし、そこには何も居ません。ホッとしましたが、テレビの画面を観るのは怖いので、

とりあえず、テレビ画面を見ないようにバスタオルをかぶせました。

私は考えた末、こちらで知り合った日本人の友達のA君に来てもらうことにしました。

A君は上海に留学生の頃から来ており、もう上海暦8年という私にとってとても頼りに

なる存在でした。A君に昨日からの経緯を説明したところ「んー疲れてんじゃないの?」

とまともに取り合ってはくれませんでしたが、テレビやDVDプレーヤーが動かないという

事実に関しては、修理しなければならないという話で、とりあえずDVDプレーヤーを持って

帰ってもらいました。

その2時間もしない間にA君からの連絡でDVDプレーヤーが治ったという連絡がありました。

私は問題のDVDを見てくれないかとお願いしました。

その日の夜、私はベットルームのPCで、音楽を聴きながら仕事をしていました。

夜の9時を回った頃でしょうか。「コンコン!」とドアを叩く音がしました。

私はおそるおそるドアのところに行き「誰ですか!?」と尋ねました。

「Aだけど、プレーヤー持ってきたよ。」という声がしました。

私はホッとして、ドアを開けDVDプレーヤーを受け取りました。

「DVDは再生できなかったよ。壊れてるんじゃないの??はいDVD。」

とDVDも返されました。お茶でも飲んでいかないかと誘いましたが

用事があるからとAはそのまま帰ってしまいました。

少し不安になりましたが、私の錯覚だったのだと思い込み、リビングに

DVDとプレーヤーをそのまま置き、またベットルームで仕事の続きをはじめました。

それから少し経って、「コツコツコツ・・」足音が聞こえてきました。

リビングの方からです。「コツコツコツ・・・」こちらに歩いてきます。

「コンコン」ベットルームのドアが叩かれました。ありえない。。

家には私しかいない!!誰!!??「ガリガリ・・・」ドアを引っ掻いている!

私は急いでドアの鍵を閉めました。「ドン!ドン!ドン!」ドアを叩くというより

もはや殴っているような音です!「(やばい!やばい!やばい!)」私はパニックに

なりそのままベットにもぐりこみました。震えが止まりませんでしたが、息を凝らして。

「カチャ!」ドアが開いた音がしました。

「○×△××○・・ケケケ」

何語かわからない言葉で声がします。昨日の青白いつり目の女の声です!

「×△△○××・・ケケケ」よくわからない言葉をいいながら少しずつ近づいてきます。

「うわぁ~うわぁ~!!」私はもう何がなんだかわからなくなり、叫びだしました。

『ガタガタガタ!!!』ベットが揺れました!

「(もうだめだ!!)」

・・・私はふと気づくとそこはベットの上でした。電気は煌々とついており、

PCの電源もつけっぱなしで、時計をみたら夜中の3時。。。

汗をぐっしょりかいていました。おそるおそるリビングのほうに行くとそこには、何も替わりはなく

さっきA君が帰ったままの状態でした。

私は、ぼーっとしたまま、リビングのソファーに腰をかけました。

「頭がおかしくなったのかな・・・それとも何かに呪われたか。。。」

とりあえず気味が悪いので、次の日からサービスアパートメントに移り

その部屋は引っ越すことにしました。

DVDプレーヤーとDVDを置いて。。。

後日、中国人の知り合いでオカルトに詳しい人に話ししたところ、

それは中国の「鬼」ではないかということでした。

中国で言う「鬼」とは日本でいうところの「お化け」で

男の鬼と女の鬼がいるそうです。

女の鬼は人間の男にいたずらすることがあるそうで、

それを男の鬼に嫉妬されると呪い殺されるという話があるということでした。

私は危なかったのかなぁと少し思いました。

「ケケケ・・・」

まだたまに、背中に悪寒を感じるとこの笑い声が聞こえてくる気がします。

怖い話投稿:ホラーテラー TOKUMEIさん  

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