・・・ある夏のお盆休み、母と私はたまには一緒に旅行にでも行こうと言う話になり、会員なっている旅行会社で調べてもらい湖の近くのホテルに泊まることにしました。
そこはホテルではありますが和室もあり落ち着いた佇まいの感じの良い所でした。
旅行当日、朝早く家を出て渋滞に何度かハマリながらも何箇所か観光地を巡り楽しい時間を過ごしました。そしてチェックインの時間に間に合うようにホテルへと向かったのです。
カーナビの指し示すゴールの方向を見ると想像していた通りの落ち着いた感じのホテルが建っていました。
期待に胸を膨らませホテルに着き、チェックインを済ませると部屋へと案内され、一通りの説明をしホテルの方が居なくなった後、部屋をまじまじ見て私達は絶句しました。
その部屋は和室などなくベットが二つ並んでいるだけのこじんまりとした部屋だったのです。
私と母は相談し、フロントに電話する事にしました。すぐにホテルの方が駆けつけてくれ、事情を説明すると急いで調べてくれたのですがどうも旅行会社の人が勘違いをしていたらしく和室の部屋はもう少し金額の高い部屋だったそうで予約の部屋に間違いはなっかたとの事。
結構部屋を楽しみにしていた私達ががっかりしているとホテルの方が驚く事を言ってきたのです。
「せっかく楽しみに来て頂いたのにこれではあまりにも申し訳ないので、別の部屋をご用意させて頂きました。もしよろしければそちらの部屋に御案内させて頂きたいと思うのですが・・。」
私達は少し考えましたが、お恥ずかしい話ではありますが金額は変わらないという言葉ですんなり了承しました。
案内された部屋は旅行会社で見た写真の和室の部屋で、高い部屋だという事が分かってしまっているのでさすがに遠慮してしまったのですが、
「たまたま空いていた部屋なので、お気になさらずお寛ぎ下さい。」
結局私達は、ホテルの方の言葉に甘えさせて貰いその部屋に泊まる事となったのですが、私は少し腑に落ちない事がありました。
この観光シーズン真っ只中の観光地で人気のホテルに空き部屋がある事の不自然さに気付かずにはいられませんでした。
でも母が喜んでいる姿を見ると言葉にはできず、せっかくの旅行だし母も喜んでいるのだから気にしないようにしようと自分に言い聞かせ、自分も楽しむ事にしました。
大浴場のお風呂には露天風呂もありゆっくりと疲れをとった後は、お楽しみの夕飯です。
何と夕飯も部屋に合わせ本来のものより良いものがでてきたのです。
母と二人、大喜びしながら美味しい料理を堪能し、その後のホテルのサービスにも大満足し、私はすっかり初めに感じた不自然さは忘れてしまいました。
そうしてそろそろ寝る時間となり、二人ともベットへと横になり私は運転の疲れもあってすぐに眠りに落ちたのです。
どれくらい時間が経ったのでしょうか・・、多分夜中だとは思うのですが私はふと目を覚ましたのです。
何で目が覚めたのかはすぐに分かりました。
外からすごく賑やかな声が聞こえてきていたのです。
「こんな時間にうるさいなぁ」
と思いながらもしばらくは我慢していたのですが、あまりのうるささにベットから出て寝ぼけながらも声のする方向の窓を開けて下を覗いて見ると、すぐ下の部屋の電気が点いており声はその部屋から聞こえているようでした。
大勢の声が聞こえる事から、私はきっと大広間があり宴会が盛り上がっているのだろと思い、その部屋の空いていた理由も納得しました。
初めに説明が無かった事には不満を感じましたが、十分満足するサービスも受けたし気を使ってくれての事だったのでしょうがないと思い、諦めまた眠りにつこうとベットに戻ったのです。
下の部屋はずっと騒がしく、寝むるまでだいぶ時間がかかりましたがなんとか寝つけ朝を迎えました。
朝目が覚めて、朝風呂に入りに大浴場に向かうと館内の案内図があったので何気なく宴会場を確認しようと見てみると愕然としました。
下の階のあの場所には宴会場など無く、ましてや部屋というものが存在していないのです。
私はあまりの恐怖に急いで部屋に戻り母に話をしようとしたのですが、母はまったく昨晩の声にも気付いていなかったようで
「よく眠れたねー」
って幸せそうに話す姿を見た私は言葉を飲み込みました。
結局楽しそうな母に水を差すのも可哀想で何事もなっかたように過ごし、ホテルに聞く事もできず一人恐怖を抱えながらもチェックアウトとなりました。
・・・しかし、その後更なる恐怖が私を襲う事となりました。
その旅行の後から夜眠りについた後、どの部屋に居ようとも外から聞こえてくる賑やかな声に目が覚めるのです。
そしてその声は日に日に大きく、そしてはっきりと聞こえてくるようになっていきました。
精神的にも肉体的にも限界だったそんなある日、あの旅行の写真が出来上がってきたのです。
「!!!!!!!?」
写真を見た私は慌てて近所のお寺に駆け込みました。
その写真に写っていたのは、あのホテルの部屋に浮かぶ沢山の人の顔でした。
お寺の住職さんが言うには、そのホテルの部屋にはちょうど霊道が通ってしまっており声を聞いてしまった私に何体か憑いてきてしまったとの事でした。
その場ですぐお祓いをしてもらい事無きを得ましたが、そのままほっといていたら連れていかれてたかもしれないと聞きぞっとしました。
それからはその事がトラウマとなり泊まりで旅行に行く事はありません。
あの時素直に最初の部屋に泊まっておけばと、後悔してもしきれません・・・
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話