中編3
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3病棟

昔見習い看護学生として病院で勤務していた。

私が働いていた病院は

1病棟(個室)

2病棟(大部屋)

3病棟(離れの個室)

近々改装するらしく3病棟に患者さんは居なかった。

ただ2病棟で患者さんが亡くなった場合大部屋の為ご遺体を3病棟に移動させていた。

全ての患者さんに身寄りがあるわけではなく身寄りのない患者さんは1日病院でお線香をつけて次の日お寺の方が引き取りに来る。

たぶんそんな感じ。

その頃はそこまで把握してなかった。

亡くなられると身体を綺麗に拭いて軽くお化粧する。

これはもっぱら見習いの仕事で1回目だけ看護師がついてくれて後は1人で任される。

人は死ぬと肌が真っ白になる。

血の気がなくなるからかな。

何度か経験するとそんな余裕が出てくる。

ある日仲良しだった患者さん(Nさん)が亡くなった。

Nさんは2病棟の大部屋の患者さんで問題の多い患者さんだった。

突然叫んだり夜中に歌を歌ったり。

痴呆のフリをして同室の患者さんのお菓子を食べたり。

ナースコールもしょっちゅう鳴らしては看護師が駆け付けると知らんぷりをしていた。

私も初めは少し振り回されたが本当は寂しかったのが理由だと分かった。

同室の他の患者さんには誰かしらお見舞いに来てくれるのにNさんには誰1人お見舞いに来る人は居なかった。

話をするうちに昔は芸者さんをしていたと教えてくれた。

歌や踊りを教えてくれた。

看護師からはあまり感情を入れすぎないように。と注意されたが私はNさんが本当のお婆ちゃんのように感じ大好きになった。

ある日食事を運んでいるとNさんが血相を変え私にしがみついて来た。

持っていたお盆が落ち食べ物があたりに散乱した。

「どうしたんですか?」

「お迎えが来る。お迎えが来る…」

Nさんはひどく動揺していた。

落ち着くのを待って話を聞くと夜中に真っ白い人が足元に立ち足首を引っ張ろうとしたそうだ。

Nさんは慌てて足をばたつかせ逃げた。

「Nさん今度来たらナースコール鳴らして。私が助けに行くから」

そう会話した次の日Nさんは老衰で亡くなった。

見習い看護学生は日勤と土日のみ夜勤が入っていた。

Nさんが亡くなった日ちょうど夜勤だった。

夜勤の仕事は見回りとナースコールの応対が主。

ナース室でNさんのことを考えながら明日の準備をしていた。

ナースコールが鳴った。

「どうされました?」

聞きながら部屋番号を見る。

「…」

あれ?おかしいな。

点滅している部屋は3病棟。

3病棟に患者さんは居ないはず。。

!!!

Nさんのことが頭をよぎった。

私は急いでナースコールの鳴った部屋に向かった。

3病棟の個室。

Nさんのご遺体がある。

Nさんの両手を触ってみた。

冷たく硬直していた。

肩を落としナース室に戻るとまたナースコールが鳴った。

Nさんのいる部屋からだった。

「…誰かのいたずらかも」

看護師は分かっているのにあえてそう私に言い一緒に部屋を再度見に行った。

「…鳴らないよぅに元を外しておきましょう。」

看護師はそう言うとNさんのご遺体の横たわるベッドに備え付けてあるナースコールを外そうとした。

…看護師が黙って立ち尽くしていたので見るとナースコールは外してあった。

改装をひかえていたし患者さんが居ないから少し前に外してたみたい。

鳴るはずがないナースコールが鳴っていたんだけど

翌朝看護師の主任に呼ばれた。

「だからあまり感情を入れすぎないようにと言ったでしょう」

感情を入れすぎないようにと言う意味が分かった。

Nさん助けてあげれなくてごめんなさい。

怖い話投稿:ホラーテラー じゅりさん  

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