私が小学生の頃。
よく友達数人で集まって「秘密基地」なるものを作っては、そこで遊んでいた思い出がある。
中でもすごかったのは、学校の裏山ふもとにある小さな廃工場だった。
入口は閉められ入れないのだが、一ヶ所だけ侵入口を見つけてからは、こっそり中に入って遊んでいた。
だいたい工場の中はすべて見て回ったところで、一つだけ入ることの出来ない小部屋があることに気づいた。
とても簡単には開きそうになかったので、放っておく事になった。
お菓子やら漫画やらを中に持ち込んでは、たまに集まってワイワイ遊んでいた。
ある日、学校が終わっていつも通り秘密基地へと入っていった。
「お、今日は一番乗りか…」
ちょっとした優越感を感じつつ、私はヒマだったので中をブラブラ歩いていた。
(あれ……?)
そこでふと気づいた。
いつもは閉まっていてビクとも開かない小部屋のドアが、かすかに開いていた。
キイキイ…
錆びついたドアの蝶番が、不気味な音を立てている。
気になり、恐る恐る中を覗いてみる。
部屋の中には誰も居ないようだ。
だが、部屋の床を見回して、私は背筋が凍った。
そこら中いたるところに、無数の骨・骨・骨……
ろくに足の踏み場がないくらいに骨があちこちに転がっていたのだ。
コツ、コツ、コツ…
続いて、工場の奥のほうから何かの足音がかすかに聞こえてきた。
私は思わずビクッと飛び上がると、忍び足でソーッとそこから逃げ去った。
次の日、友人達にその話をすると、まるで信じられないという風に笑われた。
あんな好条件の場所はそう見つからないだろうし、そのまま秘密基地として使おうという。
正直、あまり気が乗らなかったが…
大人に言っては秘密基地が台無し、怖くて行けないというのは癪に障る。
私も、黙って行くことにした。
学校が終わり行ってみたが、あの部屋のドアはやはりビクともしなかった。
先日見たのは、気のせいか?いや、そんなはずはないが…
納得はいかなかったが、仕方ないので放っておくことにした。
友達数人とトランプをして盛り上がっていた。
ケラケラケラケラ…
ん…………?
私達の笑い声に混じり、奇妙な笑い声がかすかに聞こえてくる。
ケラケラケラケラ…
ケラケラケラケラケラケラ…
妙に甲高いような気持ちの悪い笑い声だった。
みんな気づいたのか、シーンと静まる。
ケラケラケラケラケラ…
大きな柱の陰から、小さな子供がこちらを覗いて笑っている。
丸い坊主の頭に、青白い顔。
その顔には、目・目・目…
無数の目が、ギョロリと一斉にこちらを見つめていた。
もう私達は、そのまま固まってしまい声も出ない。
その子供は、良く見ると手に白い頭蓋骨を抱えている。
ケラケラケラケラケラ…
どれだけそうしていただろうか。
コツコツコツ…
どこかへ向かって、その子供は歩いて去っていった。
ギィ〜…バタン!
あの部屋の重いドアを開いて、閉める音が大きく響いた。
それを合図に正気に戻った私達は、大慌てでその場から逃げるようにして去った。
家に帰ると、母がえらい顔をして私を出迎えた。
何やら塩を盛ってきて、私の背中の辺りに何度も撒いている。
私の背中に、何やら憑いていたという。
まるでおんぶをしているかのように、人間の骸骨がダラリと密着していたそうだ。
私はそれを聞き、すっかり血の気が引いてしまった。
さすがにもう行くまいと思っていた。
しかし、次の日の放課後、学校に友人達の姿が見当たらない。
まさか…と思い、秘密基地へ行ってみることに。
アハハハハハッ!
ギャーハッハッハッハッ!
やかましいぐらいの笑い声が中から聞こえてくる。
ソーッと覗いてみると、友人達が狂ったように笑いながら何かいじくっている。
手に持っているものを見て、ゾッとした。
骨・骨・骨……
幾つもの骨を手にとっては、異様なほどの笑いをあげていた。
「何やってんだよ、お前ら!」
怒鳴りつけて頭を一人ずつ引っ叩いてやると、やがて正気に戻った。
よく状況が分からないという風に周りを見回し、手に持った骨に気づくと悲鳴をあげてそれを放り出していた。
ケラケラケラケラケラケラ…
またどこからかあの笑い声が聞こえてきたので、私達は青ざめてその場から逃げ出した。
もう恐ろしいと思った私達は、入口という入口をすべて塞いで、二度と立ち入れないよう封印した。
…中学に上がって間もなく、あの廃工場は完全に取り壊された。
あの子供や骨が何だったのかは一切不明だが…
いろいろ馬鹿なことをやった子供時代の中でも、特に印象に残っている思い出の一つになった。
怖い話投稿:ホラーテラー geniusさん
作者怖話