私は、今回初めて投稿したのですが、思いのほかコメントを頂けたり、地元の方が見て下さったりで凄く嬉しいです。
下手な文章ですが、出来るだけ臨場感いっぱいに、あの日の出来事を書きたいと思いますので、もうしばらくお付き合い下さい。
それでは心霊スポットツアー③を始めます。
後ろの4人は
「うわぁっ!」っと悲鳴をあげ、H子は
「M男!ちょっとふざけないでよ!」と半切れ気味です。
どの位経ったでしょう?
恐らく20分位だったと思います。
ようやくM男は蛇行運転をやめ、川沿いの小さな公園の傍らに車を停めました。
「はぁはぁ。」と荒い息遣いの後、M男はペットボトルのお茶を勢い良く飲み、こう呟きました。
「振り切った・・・。」
続いて助手席のT子も
「もう大丈夫。」と小さく呟きました。
わけがわからず後ろの4人は一斉に詰め寄りました。
「どうゆう事だよ!?」
M男はしばらく間を置いて、静かに語りだします。
「実はさっき墓地で肝試しした時の事なんだけど・・・。俺は霊感の強いT子とペアだったから何があっても心配ないと思って、結構はしゃぎ回ってたんだ。そしたら墓地の中腹くらいのとこで躓いっちゃって。で、何に躓いたのかって足元を見ると、小さいお地蔵さんみたいなのが転がってたんだ。多分・・・あれは水子供養の為のお地蔵さんだと思う。いけないと思って直ぐに元に戻して、そのお地蔵さんの横にタバコを置いて皆のとこに戻ったんだ。」
「うんうん。」
T子はM男の話を聞いて
相槌をいれます。
他の皆はただ静かにM男の話を聞いています。
「昔、ばあちゃんに水子の霊は男には憑かないと聞いた事があったから、多分大丈夫だろうとタカをくくってたけど、全員が肝試しを終えて車に乗った時に、助手席側に小さい赤ん坊を見ちゃったんだ・・・。で、T子に話すと私に憑いたんだろうって。何とかしなきゃって様子を見ながら車を走らせてたら田圃道に差し掛かった辺りで消えたんだ。そん時はすげぇ安心したよ。でもなんかまだ後ろが気になってサイドミラーで確認したら今度は、H子側にさっきとは明らかに違う頭の無い赤ちゃんがいたんだ。それで怖くなって、気が動転して、振り切らなきゃって、必死で・・・必死で。」
そう言ったM男の顔は真剣そのもので、嘘や冗談には到底思えませんでした。
M男は続けて言います。
「でも何で2体もついてきたんだろう?」と腑に落ちない様子でした。
T子が「水子供養の地蔵は1体に対して1つ建てられるはずだから・・・おかしいのよねぇ。」と首を傾げます。
しかし私は何故かそのT子の様子が引っかかりました。
みんなのやり取りを遮る様にH子は泣き出した。
そりゃ誰だって水子が憑いたと言われればいい気はしませんよね?無理もない事です。
私は、「で、その2体目の赤ちゃんはもういないんだろ?振り切ったんだよな?」と強めの口調でM男に確認しました。
M男「ああ、俺にはもう見えてないし、感じもしない。」
それでもH子は不安そうです。
その表情を汲んだT子は
「H子、もう大丈夫だよ。あたしにも見えてないから。」
それを聞いてH子は少し安心したようでした。
M男はさらに気を利かせてカーラジオを流した。
車内に軽いヒップホップが流れる。
私は正直、ヒップホップが好きではありませんでしたが、その時ばかりは「常夏とサンシャインベイベー」的な音楽に心が癒されました。
「この後どうするの?」
Y子が私に耳打ちしてきます。
私「もう帰りたい?」
Y子「このメンバーでは最後の夏休みだからもう少し皆といたい。」
なんて愛くるしい子だっと胸がキュンキュンしました。
私は皆に向かって、「どうするよ?最後の目的地の△△ホテル行くか?」と聞きました。
若気の至りか、阿呆ばかりなのか、Y子と同じ気持ちなのか、満場一致で△△ホテル行き決定です。
つい数十分前に怖い目にあったのに皆が賛成した事に私が一番驚いていました。
ここから問題のホテルまでは来るまで10分程度。
あっと言う間にホテルに着きました。
H子がホテルに着くなり「ペアだと怖いから今度は6人全員で入ろうよ。」
その意見に反対する者がいるはずもなく、ホテル内には6人全員で入る事になりました。
「さぁて、行きますか!」
M男が元気に言い放って、車から降りようとドアを開けた時です。
「ちょっとストップ。俺皆に話す事がある。」
A男が突然切り出します。
「どうしたんだ?」M男は不思議そうな顔。
A男は続けます。
「実は2体目の赤ん坊は俺のせいだと思う。」
全員「????」
先陣を切ったのは私でした。
「A男、どうゆう事だよ?」
私に聞かれてA男は、
「言いにくいんだけどさ・・・墓場でH子とペアになって歩いてたんだ。で、あまりにH子が怖がるから、悪戯心でもっと怖がらそうと思って。わざとはぐれたふりして、先回りしたんだ。そいで墓の後ろに隠れて待ち伏せしてたんだ。」
H子は不安そうにA男の話に耳を傾ける。
A男「案の定、H子は怖がって俺を探したよ。で、俺が隠れてる墓の前に来たから、わぁっ!って驚かしたんだ。その拍子にM男が言ってた小さいお地蔵さんみたいなのを蹴飛ばしちゃって。もちろん元に戻したよ。バチが当たったら怖いからな。H子ゴメンな。」
H子は呆れた様な顔をしていましたが、ひとつ大きな溜息をついた後、
「いいよ、ゆるしてあげる。」と微笑んだ。
この時、私はH子のA男に対する気持ちを確信しました。
Y子も私と同じ事を思ったらしく、私の顔を見て小さく頷きました。
M男は、
「犯人はお前だったのかよ~。だから2体憑いてたのか~」と変に納得していました。
T子は、「やっぱりね。私はそうじゃないかと思ってたの。だってじゃないと説明がつかないもん。この馬鹿!」と言ってA男の頭を小突きました。
私は先程、T子に感じた引っかかる感じはこの事だと思いました。
そう、T子はA男がやらかした事を見抜いていたんです。
T子の霊感は本物だと改めて思いました。
A男がもう一度、皆に謝って仕切り直し。
全員一斉に車から降りました。
時間は5時をまわっていたと思います。
しかし、夏の夜はまだ明けていませんでした。
生ぬるい風が頬に当たったのを覚えています。
6人は立入禁止のロープをまたぎ、ホテル入口を探しました。
この先に更なる恐怖が待っている事も知らずに・・。
心霊スポットツアー④に続く
怖い話投稿:ホラーテラー 現役探偵さん
作者怖話