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中編4
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草むらからの視線

ウチの父の体験談です。

ウチの父は霊感が強いというか、小さい頃から不思議な体験をしたり、幽霊を見たりしたことがあるそうで。。。

我が家でそういった体質なのは父だけで、わたしと母と兄はまったく霊感というものはありません。

ちなみに、父だけ血液型がA型で他は全員O型です。あまり関係ないかもしれませんが。

我が家は兼業農家で、稲作をしています。

近隣の農家数件とともに近くの沼から水を引いて農業用水として使っているので、

その沼の管理は当番制になっており、沼周辺の草刈りや水量調節などを順番にやっているそうです。

低地の田んぼに水を引くための沼なので当然ながら山の中にあり、

雑木林に囲まれて昼間でも薄暗いような場所にあるそうで・・・

(わたしは行ったことがないのですが)

今から数年前の夏の日、ウチが沼の管理当番になっていたときのこと。

沼に通じる雑木林の道を父が草刈り機でブンブン草を刈りながら歩いていると、

不意に後ろから背中を「トンっ!」と叩かれたそうです。

「エッ!?」

と思いながらも、母が昼時を知らせに来たのかと思い振り返りましたが、誰もいない。

気のせいかなと思い、また作業に戻ろうとしてふと、思ったそうです。

(草刈り機を使ってる人間の背後に普通、近付くだろうか?)

と。

都会にお住まいの方は草刈り機見たこと無いと思いますので、軽く説明しますね。

小型のモーターから細長い棒が伸びており、その先に回転する円形の刃

(手裏剣をもっとギザギザにしてSサイズのピザくらいの大きさにしたようなもの)

が付いていて、左右に振りながら草を刈っていく機械で、チェーンソーのような大きな音がします。

使用中の草刈り機の刃にうっかり触れようもんなら手でも足でもスパッとイッちゃうので、

普通の人なら近寄りませんし、モーター音が大きいので声も聞こえないため、

使用者の目の前に回って、自分の存在を知らせたうえで近づくはず。

普 通 の 人 間 な ら

そう思ってハッとした瞬間、父は気付きました。

雑木林の奥、草むらの中からじっと自分を見つめる視線。

生きている人間でも、獣でもない、明らかに異質な「何か」の目がふたつ、じーっと父を見ていたそうです。

瞬間、全身の毛がゾゾゾッ!!と逆立ち、感じたこともない恐怖感が全身を駆け抜けたそうで。

「ぎゃあああああああーーーーーーーー!!!」

と、情けない大声をあげ、草刈り機を投げ出して父は家に逃げ帰ってそうです。

家に帰り、母に雑木林で「ふたつの目」がこっちを見ていた!と話たそうですが、

母はそういう話を一切信じない人なので分かってもらえず・・・。

それどころか草刈り機を投げ出して帰ってきたことを叱られたそうです。(かわいそうに・・・TへT)

結局、一人であの場所に戻るのが恐かった父は、母を連れて草刈り機を取りに行ったそうです(汗)

母に「あそこ、あそこさいる!」と言っても、当然母は「見えねでぇ!」と、相手にしてくれず・・・

以来、そこで草刈りをするたび、常に恐い思いをしているとのこと。

ちなみに通り過ぎるだけならそうでもないらしいけど、

草刈りなどしながらしばらくそこにとどまっていると必ず「見られる」らしい。

当番が回って来たときは母を連れていったり、飼い犬を連れていったりと、

一人にならないよう気をつけているそうだけど、母は仕事があるためなかなか付き合えないし、

飼い犬も放して遊ばせているとすぐどっかに行って結局は一人になるのであまり意味がなく・・・

あるとき、ふと「お供え」をすればいいのでは?と思ったそうで、普段台所に立たない父が自らおにぎりを握りって、

その「視線」を感じる草むらに放り投げてから

『草刈りをしますので出ませんように!』

と手を合わせたところ、その日は「視線」を感じなかったそうです。

(でも一時的なもので、しばらくするとまた「視線」を感じるようになったらしい)

死んだおばあちゃんの幽霊をみたり、臨死体験をしたり、不思議な経験の多い父ですが、

その草むらから感じる「視線」が今までの不思議体験の中で一番恐ろしいと言っています。

「あれは、妖怪とか魔物とかそういうものの目だ。」

と。

実際、目そのものが見えるわけではなく、目の「存在」と「視線」を感じるそうです。

形が見えないのにそれだけ恐ろしいってよっぽどですよね。

あ、見えないから余計恐いんでしょうか。

母曰く「なにも居ないし何も感じない。そんなもののためにおにぎりを握るお父さんが信じられない!」とのこと。

今度実家に帰ったら、父に連れて行ってもらおうと思います。

ここまで読んでくださいましてありがとうございました。

怖い話投稿:ホラーテラー まめ太郎さん  

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