去年のお盆休みに体験したこと。
実家で暇を持て余してた俺は朝早くからバイクに乗ってバス釣りに出かけた。
実家周辺は田舎で溜め池が多いから釣り場には困らない。
その日は山の中にある小さな野池に向かった。
その野池は長い獣道の奥にあるので知ってる人が少なく、かなりの実績があるポイントで昔からいいサイズがよく揚がった。
バイクを山道の端に停めて、獣道をしばらく進むと木々に囲まれた湖面が見えた。
まだ辺りは薄暗く、ダークグリーンの水面は少し不気味だったが、朝マズメ(朝早くは魚の活動が活発になる)の時間帯を逃す訳にはいかないので早速釣りを開始した。
煙草をくわえながらキャストを繰り返していると、違和感があることに気付いた。
誰かが俺のことを見てる…?
他に釣り人が来たのかと思って周囲を見回すが、俺以外には誰もいない。
おかしいなと思いつつルアーがあるであろう場所に目を戻すと、数メートル先の水面に何かが映っているのが見えた。
無表情にこちらを見つめる女の顔だった。
その周辺にも幾つかの顔があり、水面下から俺のことを見つめている。
風がなくて波が立っていなかったので一瞬だったが、よく見えてしまった。
老若男女、色々な顔があった。
次の瞬間タックルを放り出して獣道を無我夢中で走り(木の根っこにつまづいて一回派手に転んだ)、バイクに乗って逃げ出した。
家族は俺のびびりようにびっくりしていたが、話を聞くと親父が「お盆だから帰ってきてたんだな…。まぁ気にすることはないだろう」と言っていた
タックルは日が完全に昇ってから義兄と一緒に取りに行った。
その時には案外立木や水草の塊を顔と見間違えただけかもしれないと思い、偏光グラスを掛けて水面を覗いてみたが、その場所にそんなものは無かった。
下手な文章で怖さは半減しているかもしれないが、本人からしたら本気で失禁しそうなぐらい強烈な出来事だった。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話