短編2
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ゴミ屋敷

妻を殺した。

浮気がばれ、口論の末に逆上して殺してしまったのだ。

我を忘れ、気がついたときには、目の前に妻の絞殺死体が転がっていた。

困った。この死体をどう処理しようか。

しばらく考えた末、名案を思いついた。

我が家の向かいには近所でも有名なゴミ屋敷がある。

これを利用しよう。

ゴミ屋敷には頑固なくそじじいが住んでいて、ずいぶん昔から町中のゴミステーションからゴミを持ち帰っては自宅にため込んでいた。

今では周囲を取り囲む塀を内側から押し倒さんばかりに、家の外にまで何重ものゴミの層を築いている。

「この中に隠してしまえばわからないだろう」

ゴミ屋敷は常に異臭を放っているし、ゴミをついばむカラスも山ほどやってくる。

ゴミの山に人間の死体を隠すのは簡単だし、臭いが出ても、今さら誰も怪しまない。死体もそのうちカラスが綺麗に処分してくれるだろう。

警察には適当に捜索願いでも出しておけばいい。

俺はさっそくこの日の深夜に実行した。

夜中の2時頃、人目を気にしながら妻の死体をゴミ屋敷まで運んだ。

ゴミの上に死体を無造作に投げたあと、死体を隠すための穴を作ろうとゴミをどけはじめた。

!!!!!!

なんということだ。すでに先客がいた。しかも、2人も。

ほとんど腐っていて、ところどころにカラスについばまれたようなあともある。

「俺と似たような事情を抱えた夫婦の末路か」

恐怖心を抑え、必死に

冷静をたもちながら、作業に取りかかる。

思いもよらぬアクシデントもあってか、作業はなかなか進まず、気付けば夜明けが近い。

俺は急いで作業を終わらせようと、死んだ妻のためにしつらえた穴に、死体を放り込んだ。

その瞬間、まさかの事態が。

足下のゴミの中から腕が飛び出し、俺の足を掴んだ。

そのままバランスを崩し、妻のいる穴の中へ倒む。

すると周囲のゴミの中から無数の腕が飛び出し、俺の身体の自由を奪う。

先客は2人どころではなかったらしい。

そして、死んでいたはずの妻も両手で俺の口をふさぎ、悲鳴すらあげさせない。

やがて朝日が昇り、カラスたちが活動を始めた。

俺は屍に自由を奪われ、生きながらにして身体をついばまれる恐怖と苦痛を、まさしく「死ぬほど」味あわされた。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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