私が小学校低学年の頃に体験した話。
当時私の母は7階建ての病院の6階で勤めていて、学校が終わってから病院へ行き、母の勤務が終わるまで病院内で適当にヒマつぶしをして待っているという日課がありました。
その日もいつも通り学校が終わってから病院へ。
忙しいだけあり誰も遊んでくれる人もいないので、私は1人階段を上ったり下りたりして遊び始めました。
病院内はものすごく広いので、1人で遠くへ行くなと言われていた私は、ただ6階と7階の間の階段をひたすら上り、7階についたら6階へ下り…
何回か続けた所で、だんだん疲れてきた私は(そろそろ戻ろう。)と思い、いつもの6階へ帰ろうと階段を下り始めました。
しかし、下りても下りても一向に6階へつかない。階段の踊場で階数を見ると7の文字。
ほとんどの人がエレベーターを使うので、階段に人なんていない。
誰もいないしだんだん怖くなってきた私は、半泣きになりながらも階段を必死に下りる。
踊場でまたも確認するが、まだ7の文字。
(なんで?何で6階に行けないの?)と、踊場で私は泣いてしまいました。
すると、「お嬢ちゃん、どうしたの?泣いているのかい?こっちにイイもんがあるよ。おいで。」
と、優しい声がしました。見て見ると、すぐ目の前に白い着物姿の髪の長い女性が立っていました。人の気配もしなかったのに、すぐ目の前に人がいてビックリした私は、さっきまで泣いてたくせに驚きからピタッと涙も止まり、おいでおいでと手招きをしている女性が、子供ながらに(コイツ人間じゃない!)とただならぬ恐怖を感じました。
その女性は、例えるならまさにリングの貞子みたいな見た目で、色は青白く、長い髪はパサパサで「コッチで遊ぼう、イイもんやるよ。」と、しつこく話かけてきました。
((知らない人には着いて行っちゃダメ))子供の頃は誰でも言い聞かされた言葉。
怖いから逃げ出したいのに、恐怖からか体が動かない。何かされた訳じゃないし、何が怖いのか分からないけど、とにかくその女が怖くて仕方なかった。
女は動けない私の手を掴んで、コッチとやらに連れて行こうとする。
女の手は凄く冷たくて、骨っぽい位細くて血色が悪い。
掴まれた時に骨が当たって痛いという感触より、冷たさの方が強かった。
(あぁ、もうダメだ。連れて行かれる。)
女に手をひかれながら階段を上り始めたとき。
「○○〜!○○〜?!」
私の名前を呼ぶ母の声が聞こえました。
ハッ!と我に返った私は、女の手を振りほどき、一目散に階段を下り始めました。
(お願いだから、お母さんの所に帰して下さい!)
必死に心の中で唱えました。
でもやっぱり踊場の階数は7。「待ちなさいよ〜」と女も着いてくる。振り返ってみたら、女は宙に浮いていて、スーッと移動していた。それを見て更に恐怖に包まれた私は、とにかく、「助けてください!お願いします!お願いします!」と女に言いながから必死に逃げていました。
すると一瞬、空間?空気?がモワ〜ンと凄く暖かくて懐かしい感じになりました。
その空間を通り抜ける時に、スローモーションみたいに自分の動きがゆっくり重たくなって、(何だコレ?)と思いながらも階数を下り続けたら、6階ナースステーションで母がそわそわしているのが見えました。
「お母さーん!!」と呼ぶと、驚いた顔ですぐに私の方へきました。
「あんたずっと何してたの!?どこにもいないから心配したんだよ!!」
窓の外は真っ暗。たぶん18時過ぎだったかな。
勤務が終わっても一向に私の姿がないので、ずっと探していたらしい。
私の中では、階段での出来事はトータル30分、長くて1時間なつもりでいたが、他からしたら、4〜5時間は経過していたらしい。
母に階段での出来事を話したが、そんなことより無事でよかった。としか言われなかった。
あの女性は何だったか、コッチとやらはドコだったのか、空白の時間も何だったのか分からないままですが、一種の神隠しだったのかもしれない。
怖い話投稿:ホラーテラー ひなさん
作者怖話