短編2
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歪んだ愛情

実家で暮らしていたとき、近所に知的障害者のおっさん(と言っても30代前半)が住んでいた。

俺が高校生の頃に家族で越してきたのだが、外を徘徊しながらよく分からないことをわめき散らすわ、ちょっとしたことからすぐに暴力沙汰を引き起こすわでちょくちょく警察のお世話にもなっていたようだ。

周囲も障害を持っているということからか少し甘めに見ていたようだが…。

そしてそのおっさんの両親は障害をもった息子を溺愛していた。

俺が高2のときある日。

その日は学校が早く終わったので俺、大学生の姉、たまたま仕事が休みだった父の3人で昼食を食べていた。

すると家の前が騒がしい。

3人で見に行くと、斜め向かいに住む若い家族(Yさん)が例のおっさん(A)とその両親と揉めていた。

野次馬に来ていた知り合いに話を聞いたところ、AがYさんの息子(幼稚園児)を何もしていないのにいきなり突き飛ばして怪我をさせたとのこと。

自分の息子が怪我をさせられたということでYさんはお怒りだったが、Aは悪びれた様子もなくヘラヘラしている。

そしてAの両親が一番問題だった。

Yさんや近所の人が何か言う度に「あなた達は障害者を差別するのか」「自分たちは息子が障害をもっている事実に耐えて頑張ってきた」などとズレたことを言い張る。

Yさんが「私たちは今までにAさんに様々な迷惑を掛けられても目をつぶってきた。しかしここまで続くとそうはいかない。本当に自分の息子の為を思うなら施設に入所させるなどの手をとるべきた」と言うと「今の発言は障害者に対する差別だ!」と喚き、誰が止めても無駄だった。

しまいには「今回はそっちに非がある。幼稚園児を外で遊ばせるな」とまで言い出す始末。

Yさん夫妻は息子が遊んでいる間ずっとそれを見守っていた。そこにAが突然現れ、止める間もなくY息子に怪我をさせたのだ。

通りがかりのおばさんも一部始終を見ていた。

警察が来てからA一家はパトカーでどこかに行ってしまった。後にYさん夫妻もそちらに向かったようだった。

本当に恐ろしいことは次の日の深夜に起こった。

Aの父がYさん宅に放火をしようとしたのだ。

幸いパトロール中の警官に現行犯で捕まり、最悪の事態は免れたようだが。

後にAは施設に入り、その両親も知らない間にどこかへ行ってしまった。

怖くなくて申し訳ないが、このことを通じて歪んだ愛情というものは時に人を狂わせることを学んだ。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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