それならば箱は霊体が持って移動しています。
鍵を手に入れたら、その場で開けられる可能性があります。慌ててベッドから起きようとしますが体に力が入りません。
「無理して起きたらダメなんだよ」
「しかし、困りましたね…このままでは」と考え込みます。友希乃は何か臭ったように鼻でクンクンと嗅ぎとると「ちょっと出掛けてくる!!」と僧侶が呼び止める前に外に勢いよく出て行きました。どれほど気を失っていたのか、先程の騒音とは真逆の静けさの中、数人がかりで何かを探すように私の体をくまなく触り、ジャケットやズボンのポケットまで何度も手が入ります。そして凍りつくような冷たく荒い息と唾液のようなものが顔にかかりながら、私は目を覚ましました。
目の前には大人三人分の顔を一つにしたような巨大な顔があり、周りには無数の手が包丁やナイフ、鋭利なガラスの破片などを持ちながら、私の頭の先からつま先全身に向けてスレスレに這わせます。
体中の毛穴という毛穴全てが全開し、恐怖で硬直していると、仰向けになっている私の視界に見えるようにサバイバルナイフを持った一本の腕が天井に“カギヨコセ”という文字を彫りました。
恐怖への緊張感が高まり、今にも吐きそうなのを必死で我慢して声が上擦りながら「な……な…んの……カギ?」と言うと、頭の中にみなきが拾った鍵の映像が見えます。
私が気を失っている間に部屋の中全てを探したのでしょう。全ての引き出しが開けっ放してありました。
ここにないということは昨夜みなきが随分気に入ってたようなので首にかけたままの可能性があります。
私は「と…とり……ひき……し…ま…せ…ん…か?」と言うと、天井からサバイバルナイフを私に向けて素速く腕が振り下ろされました。
「もうだめだ!!」と感じた私は目を思いきり閉じました。しかし私の体に刺さった感触がありません。
恐る恐る目を開けると右目がぼやけたようすで見えます。
左目を閉じてみると右目から見えたのはサバイバルナイフの先端が私の右眼球に突き刺さる1mm程手前で止まっていました。
するとゆっくりとナイフを上げて止まります。
私は既に声が出せなくなっていました。体が痙攣したように震えながら頭で(写真…写真!!)と言葉を無我夢中でイメージしていると写真を目の前に持ってきます。
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怖い話投稿:ホラーテラー シルキーデイさん
作者怖話