●霊関係ではありません
●男性には特に「痛い」話です
●ホラー=心霊話をお求めの方はスルーで
ご了承のうえ どうぞ。
大学生当時、アルバイトに精を出す日々に経験した小話。
10年ほど前の高校卒業直後、イトコの紹介のレンタルビデオ店で働き始めた時のこと。
この店が、立地が最強だった。
風俗店街のど真ん中に店をかまえ 前後左右、視界に入る店は80%風俗店という状態。
その中で、道路を挟んだ向かいにある店は週に1〜2回は来店してくれる顧客さんで、うちの店とも仲が良く、相手が来られない時にレンタル予約していたビデオが入ってきた時などは「配達レンタル」をしてあげる事がままあった。
「配達」は手の空いているバイトが休憩がてら行くのだが、私も数回「配達」を行ううちに顔を覚えられ、店に行くと店内を見学させてくれたり従業員の休憩時間に誘ってご馳走してくれたりと、いろいろ可愛がってくれた。
従業員の中でも特に可愛がってくれたのは、そこで働くJさん(♀)。
Jさんは「出」の無い時は休憩室でお菓子をごちそうしてくれながら「危険な男の見分け方」「正しい避妊法」など、親には聞けない知識を教えてくれる面白い姉のような存在だった。
そんな姉を唯一「怖い」と感じた瞬間。
「◯◯(私)ちゃん。 護身術にもあるけど、男が傷ついて一番恐がるのって やっぱりアソコなんだよ」
「ああ、すごい痛いって言いますもんね わかんないけど(笑)」
「単純に痛いってのもあるけど、ハンパなく心が折れるよ〜(笑) 傷でも付こうモンなら、心臓に傷つけられたみたいに、どうしたらいいのかわかんなくなるヤツがほとんどだよ」
「・・・お客さんにケガさせちゃうような事あるんですか?」
「仕事じゃないよ ・・・昔のツレにスゴイのやっちゃったことあるんだ♪」
「噛み付いたとかですか?」
「こっそり 針、刺してやった」
「・・・・・・・・・・・は?」
彼女の用いたその方法は【あの体内】に簡単なしくみで 軽度のもので綿棒、果ては針やカッターの刃を仕込むといった方法。
詳しい方法は伏せるが、見た目からはまずバレず、何も知らずに「交渉」すると相手のシンボルにそれらが正面から突き刺さる仕組みになっている。
それだけの殺傷能力がありながら、女性側は無傷で済む。
仕事柄、無理矢理コトを迫る男性が周りに多くなる自分達を守る術として同業の方から教わった方法を実践したらしい。
話に出た「ツレ」さんは、彼女の稼ぎに頼りきりなうえに嘘ばかりつく男性だったらしく、抗議した彼女をフって実家へ帰ろうとしたことへの<最後っ屁>としてやってやったらしい。
お互い共に過ごした部屋を解約し、引越しが完了したある日に「最後の逢瀬」と彼をホテルへ連れ出し、いざ決行。
結果は思っていたより軽度だったらしい。
が、その痛みはすさまじかったらしく、未知の出血と痛みにパニックになって転げ回る彼をホテルに置き去りにし、その後のことは知らないらしい。
事もなげに話す彼女の顔は実に楽しげだった。
「訴えられたりしませんでした?」
「なかったよ。 引越し先は話してないし、たぶん今でも「なにを」されたか気付いてないでしょ」
「・・・ああ。 そうかもですね・・・・」
凶器も犯行の瞬間も、全ては【彼女の中】。
体内に攻撃能力があるなんてパニック映画の人型エイリアン限定だろう。
通常の価値観を持つ人間ならば、まず身に起きた事態と目の前の加害者を正しく結び付けては理解できないはず。
「それにね」
「まだ あるんですか?」
「ホテルでやるのが重要だよ。 できればそこそこ繁盛してるレベルのね」
「なんか いいことあるんですか?」
「ホテルって、やっぱり男女のイザコザが多いんだよ。 でもホテルはあんまり騒がれたくないからね。 シーツに血がついてたくらいなら、ほとんど見向きもしないでいてくれる」
「・・・・いいんですかね それ。 ケガした本人は騒ぎますでしょ?」
「いやいや」
「?」
「恥ずかしい場所にケガした時に、他人に助けって求められる?」
「・・・・・・・・・。 ・・・・・・・・・うまくできてますね」
気付かれることなく相手のシンボルを負傷させる事はもちろん、あえて意識がある「交渉時」の天国状態から「激痛とパニック」の地獄状態へと一気に叩き落とす残酷さ。
それを我慢せざるを得ない状況。
痛みを想像できない自分でさえ前傾姿勢に身が縮こまった。
そして
「単純に痛いってのもあるけど、ハンパなく心が折れるよ〜(笑) 傷でも付こうモンなら、心臓に傷つけられたみたいに、どうしたらいいのかわかんなくなるヤツが
<<ほとんど>>
だよ」
経験値を示す語句の不自然さに一瞬気付いたけれど
「あと 誰になにしたんですか?」
当時の若い私には口に出来なかった。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話