中編3
  • 表示切替
  • 使い方

呼び出し

少し前の話だが、ふと気がつくと、出かける前に出した覚えの無い食器や、閉めたはずの引き出しやら襖やらが空いてたりする。

空き巣か?と思い色々調べたが何か盗られた様子も無い。

強いて言えば寝室に設置してる神棚に置いてあったはずの小さな手鏡みたいなやつが無くなっている気がしたが、こうやって神棚を覗くのも久しぶりだったので、そこまで気にも留めなかった。

そんなことがあってしばらくしたある日、家でくつろいでいたら一本の電話が鳴った。

自宅の電話はナンバーディスプレイが付いているので電話を取る前に発信先を見てみると非通知だった。

いつものように受話器を取りもしもし?と、問い掛けるがノイズが酷い上に向こうの声がものすごく小さいのか、何かをしゃべっているのはなんとなくわかるのだが、具体的な内容は聞き取れなかった。

少しの間、黙って聞いていたが、一向に変化が無いので俺はそのまま電話を切る事にした。

その日からそういった電話がしばらく続くようになり、俺もいたずら程度に考え軽くあしらっていた。

だが少しすると、その電話が日に何度もかかって来るようになり、さすがに頭にきたので自宅の電話を非通知拒否に設定した。

それからは非通知の電話がかかって来ることも無く、すっかりその事を忘れかけていたある日、携帯電話のほうに非通知電話の着信が数件入ってきた。

そこで、俺はやっと友人達にはめられていたんだと思い、親しい友人に片っ端から電話した。

だが、返って来る答えはみんながみんな口を揃えて、そんな事はやっていないとの事。

流石に少し気味が悪くなったが、自宅と携帯両方の番号を知ってかけて来るなんて知り合いでなければ出来ない芸当なので誰かが嘘を言ってビビった俺を見て楽しんでると思うと無性に腹が立って犯人を突き止めてやると言う結論にいたった。

そんな決意とは裏腹に誰がやっているのかわからないまま一ヶ月ほどしたある日の夜中、急に左目に激痛が走り布団から飛び起きた。

それとほぼ同時に例の非通知着信が入り電話をとってみると、いつものノイズが嘘のように静かな電話の向こう側で、どこか聞き覚えのある懐かしい声で、譫言(うわごと)のように「早く来てくれ」とだけ繰り返し繰り返し訴えてきた。

この時不思議と恐怖は無く、ふいに小学生の時に亡くなったおばあちゃんの顔を思い出した。

その次の日は仕事を休み久しぶりにおばあちゃんの墓参りに行くことにした。

今考えてもすごい突発的な行動だし何故いきなり墓参りに行ったのかは分からないがその時は自然と行かなくちゃダメだと思い朝から静岡のおばあちゃんが眠っている霊園に足を運んだんだ。

それで一通りお墓を掃除して線香を焚き手を合わせ墓石の前にしゃがみ込んだ時に少し墓石がズレているのに気が付いた。

近くに寄って見てみると、ズレた墓石の隙間からなにやら植物の茎みたいなものが飛び出ていたので墓石の中を覗いてみた。

そこで驚愕したのが、骨壷の周りは中で繁殖したであろう雑草で覆い尽くされており、その雑草の上に先日消えたはずの小さな手鏡がちょこんとのっかっていた。

あわてて雑草をむしり取っていると、その雑草は骨壷の中にまで侵入していて中に入っている一つの頭蓋骨であろう骨の左目の位置する場所にがっちりと巻き付いていた。

そこで昨日の電話は、やっぱりおばあちゃんからだったんだと確信し、心の中で

「長い間顔出さなくてごめん、これからは、たまには顔出しに来るからね」と謝った。

その時、どこからともなく暖かい優しい風が吹いて来て、なんだかおばあちゃんが笑いながら頷いてくれたような気がした。

その後は左目の痛みも非通知電話も部屋の怪奇現象も起きることなく平穏な生活を送っている。

くだらない話に付き合ってくれてありがとう。

怖い話投稿:ホラーテラー おばあちゃん子さん  

Concrete
コメント怖い
0
1
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ