昔、祖母に聞いた話です。
私の住んでいる所の近くには森があり、
その奥の、一番奥。
暗く影った誰も訪れないような所に、古くて不気味な廃屋敷があるのです…
それは一昔前…暑い暑い、夏の日のこと。
その屋敷には、とても裕福で仲のいい家族が居ました。
優しい母に父、しっかりした息子、可愛い娘、それにたくさんの使用人たち。
静かな森の奥にある屋敷からは、笑い声がいつも聞こえてきていました。
…でもそんな平和は、直ぐに崩れてしまう事を…誰も知りませんでした。
いつもと変わらぬ1日。
娘はゆっくりと目を開きました。
優しい母に父、兄が優しく髪を撫でます。
何も変わらぬ1日のはずでした。
突然玄関を突き破る音がしました。
使用人の悲鳴や、何者かの怒声が耳をつんざきます。
…恐らく数人ほどの、決して多くはない人数のはずなのに。
使用人たちはたちまち屍になり屋敷に山を作りました。
灯油を撒き散らしながら、相手は近づきます。
そしてついに家族が居る部屋に入ってきました。
娘は悲鳴をあげます。
父母と兄は必死に相手に抵抗します。
しかしお金持ちでほとんど外に出ない彼等の体力などでは、ただの足止めにしかなりません…
父は刃物で刺され、母は鈍器で殴られ、妹を庇った兄は銃で撃たれてしまい…
娘の目の前に広がる血の池、地獄絵図…
家族の屍が中心に3つ転がっています。
娘は自分を追い詰めます。
ついに極限まで娘の恐れや怒りは腫れ上がり、娘の理性はプツリと切れました。
相手から刃物を奪い、娘は一心不乱に刃物で相手をめった刺しします。
極限を超えた娘には、有り得ない程の力がありました。
油断していた相手はなすすべもなく刺されてしまいー…
目の前には相手と家族の屍がありました。
相手のうちの一人は、最後の力を振り絞って撒き散らした灯油に日を付けました。
娘は発狂状態で逃げることもできず、そのまま火に包まれてしまいました。
警察が通報をうけてやってくると、
真っ黒に焦げた屋敷のなかから、家族の遺体と相手の遺体が見つかりました。
ーそれ以来、誰一人その屋敷に近寄るものも、ましてや住むものも出ては来ませんでした。
しかしそれから数ヶ月後…
その屋敷の付近で、奇怪な現象が起こるようになったのでしたー…
後編に続きます。
怖い話投稿:ホラーテラー 奏夜さん
作者怖話