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短編2
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忌み蛍

現在「紅い蝶」の舞台「水上村」の調査中ですが、本日は雨ということもあり足止めを食らっている状態です。

これから、とりあえず以前に資料提供してもらった図書館と、山道の手前まで行ってみるつもりでいます。が、興味深い話を女将さんに聞かせて貰ったので、投稿させて頂きます。

………まだ、この辺りが「水上村」と呼ばれていたころ現在の温泉街は未開拓の土地でした。

毎年、初夏を迎える頃になると夏の訪れを知らせるように蛍が飛び始めるのだそうです。

…そんな中、重病で苦しんでいる小さな女の子がいました。

彼女は毎年夏が来るのを何よりも楽しみにしていて、毎日夜になると部屋の窓から眠くなるまで蛍をじっと眺めていたそうです。

「私は、死んだらあの蛍になって自由に空を飛ぶの。そして、お父さんとお母さんに毎晩会いに来るわ。」と、言ったそうです。

「それは素敵な話だね。でも、お前がどの蛍なのか解るようにしておくれよ。」と父親が言うと、

「うん!すぐ解るよう目印つけとく。」と答えたのだそうです。

「さっ、そんなことより体を冷やさずきちんと静養したら治る病気なんだから、早く元気になっておくれ。」

「はい、お休みなさい。」

……彼女の病気は結核でした。今なら、完治出来る病気ですが、当時は不治の病と言われていました。

……そして、彼女にとって七回目の夏がやってきました。

この年は例年よりも雨が多く蛍の餌も豊富だったらしく、毎夜神秘的な光景がみられたそうです。

…日に日に痩せていく彼女を見ているしかない親は、また来年も蛍の見える季節がこの子に訪れるように祈るだけしか出来ません。

そして、ついにその夜が訪れます。

女の子の両親は揃って不思議な夢を見ます。

空の上の方から娘が呼び掛けている声が聞こえるのです。

「おとーさーん!おかーさーん!」

「遊びに来たよ。」と突然目の前に、娘が現れた所で目が覚めます。

「まさか…」

二人は、部屋に急ぎます。案の定娘の体は冷たくなっていました。

おいおいと泣き崩れる親たちに微かに聞こえてくる、「お父さん、お母さん。」と、言う声。

ふと両親が顔をあげると、一匹の蛍が部屋を飛んでいます。

今まで見たこともない、ほのかな赤い光を発しながら…

「そうか目印。それならお前だとわかるね。」父親はにっこり笑いながら蛍に向かって囁きました。

そして蛍は数回部屋を飛び回ると窓の隙間から飛び去って行ったそうです。

「…ありがとう…」

蛍が飛び去るとき、両親は蛍がそう言ったように聞こえたそうです。

………そんな誕生秘話があったんだそうです。

有りがちなとも不謹慎にも思ってしまいましたが、素敵なお話でした。

怖い話投稿:ホラーテラー ぐんまちゃんさん  

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