くるくるくるくる
くるくるくるくる
この妙な音を聞いて、Aが目を覚ましたのは深夜2時頃の事だった。
くるくるくるくる
音が自分の寝ているベッドの下からしている事に気が付いたAは、ベッドの下を覗き込んだ。
その瞬間!Aは驚きのあまり、物凄い悲鳴をあげた。
なんとベッドの下で人間の生首が、目にも留まらぬ速さで高速回転していたのだ。
高速回転している為、生首の首から血が飛んできて、Aの顔にかかった。
A「汚いお!」
語尾の「お」…
Aはネットで書き込みをする時、文章の語尾に必ず「お」を付けるのだが、ついに今、現実の世界でも「お」を付けてしまった。
A「ミスった!」
Aがそんなどうでもいい事にショックを受けている間でも生首は高速回転し続ける。
と!その時!
生首が回転しながら突然Aに迫ってきた。
A「ぎゃーーーお」
また「お」を付けてしまったが、もうAは気にしなかった。というか気にしている場合ではなかった。
生首が迫る!
このままだと生首と自分の頭とがぶつかる事になると思ったAは、頭をサっと上げた。
生首はAの頭とぶつかる事なく、部屋の奥へと転がっていった。
部屋の奥にはテレビがあり、生首はそのテレビを置いている台の角にぶつかり、ピクリとも動かなくななった。
あまりのダサさに笑いが込み上げてきたが、ここで笑っては恨まれて呪われるかも知れないと思ったAは、必死で笑いを我慢した。
しかし人間には限界があるもの。
A「プ…ブフ!…………プブ!!」
もうこれ以上込み上げる笑いを我慢するのは無理だった。
A「プ…ブハハハ…無理無理こんなの我慢できない」
ついにやってしまった。笑ってしまった。
一度笑ってしまえば、もう止まらない。
笑い続けるA。
すると…
生首「笑ったな…」
なんと生首が喋った。
Aは驚いたと同時に恐怖を感じた。
A「笑ってないお!」
あまりの恐怖の為、また語尾に「お」を付けている事に気が付かないA。
生首「許さない…」
A「え…」
生首がAに向かってジャンプした!!
そしてAの顔の目の前まできた。
A「来るなおーーー!!」
生首がAの頭とぶつかった。
その瞬間、Aの頭が飛び、代わりに生首がAの頭になった。
Aの頭はベッドの下に転がった。
しかし次の瞬間!
Aの頭が高速回転し始めた。
Aもまたトルネードヘッドになってしまったのである…
前作「トルネードヘッド」の続きです。
高速回転する生首と、自分の頭とが入れ代わってしまったA。
体はA、頭は生首…つまり体は一つだが二つの人格を持つ生物になったのだ。
入れ代わった時、Aの頭はベッドの下に転がり込んだ。
そしてAの頭は高速回転し始めた。
Aもまたトルネードヘッドになってしまったのである。
くるくるくるくる
くるくるくるくる
あまりの回転の速さに、ベッドの下…ベッドと床の間でちょっとした竜巻が発生していた。
と!その時だった!
Aが起こした竜巻によって、Aがベッドの下に隠していた卑猥な本が吸い寄せられ、巻き込まれた。
そしてそれがAの顔にぶつかった。
A「痛いお!なんだお!キレるお!!」
首だけになっても語尾に「お」をつけるA。
ネットを利用していた時の癖だ。
本にマジギレするが自業自得。
そんな所に隠しておいたのが悪い。
Aが高速回転しながらマジギレしている時、ベッドの上では新生物が誕生していた。
人間とそれ以外の何物かの融合体「キメラ」が誕生したのだ。
キメラは夜中にも関わらず物凄い鳴き声をあげた。
キメラ「キャオマママーーーーーお!!!!」
その瞬間、周りの家々から明かりが点き始めた。
近所迷惑である。
やはり語尾に「お」をつけるAの癖は残っている。
そしてキメラはゆっくりと立ち上がり、辺りを見渡した。
とその時。
妹「お兄ちゃんどうしたの?凄い悲鳴が聞こえたけど」
階段を上がって来る妹の声がAの耳に入った。
その時!
キメラがAの部屋のドアに向かい歩き始めた。
Aはキメラが妹を襲おうとしていると確信した。
A「行くなおプレデター!………間違えたキメラ!!」
そう、キメラがあまりにも醜い為、Aは一瞬プレデターに見えてしまったのである。
するとAの声を聞いたプレデター……いやキメラがAに近付いて来た。
A「来るなおー!」
プレデターはベッドの下に手を伸ばし、高速回転しているAの頭を掴んだ。
A「キモいお!」
キメラの醜い顔を見てAが言った。
その瞬間!
キメラがAの頭を天井に向かって投げ、落ちてきたところを足で蹴飛ばした……そう、サッカーボールを蹴るように。
Aの頭は壁に激突し、動かなくなった。
キメラは満足そうに両手を挙げて喜んだ。
まるでサッカーでゴールを決めた瞬間のように。
動かないA。
キメラはドアに手をかけた。
今まさにドアを開けようとしたその時!
A「妹に手を出すなお…」
キメラがAの方に振り返る。
キメラの視線の先には、窓の前でくるくると回転しているAの姿があった。
回転速度は少し落ちているようだ。
A「おい!キメラ!こっちだお」
キメラを誘うA。
馬鹿なキメラはAに突進してきた。
キメラがAの目の前まで来たその時!
Aはそれをサっとかわした。
Aが突進をかわしたので、キメラは窓を突き破り、体半分が外に出た。
さらにAが後ろから高速回転しながら体当たりした。
キメラ「キャオオンンモォォーー!!」
物凄い鳴き声をあげながらキメラは二階から…頭から転落した。
すぐにAも二階から飛び降た。
そしてキメラの上に着地。
キメラの頭は死んでいた。
すぐにキメラの頭に体当たりするA。
するとキメラの頭は飛んでいった。
Aは素早く本来の自分の体に自らの頭をくっつけ、本当の体を取り戻した。
Aの体に損傷がなかったのは、キメラの頭が先に地面に落ちた為、Aの体への衝撃が少なかったからである。
キメラの頭を遠くへ投げ捨てたAは、静かに家のベルを鳴らした。
妹「こんな遅くにどなたですか?」
妹がそう言うのも無理はない。
時刻は深夜2時を過ぎているのだ。
A「お兄ちゃんだよ」
妹「お兄ちゃん!?こんな時間に何してるの?」
A「まあ開けてくれよ」
妹の前では絶対に語尾に「お」はつけないA。
恥ずかしいからだ。
Aがそう言うと玄関の扉が開いた。
妹「おかえり」
A「ただいま。お母さん達は寝てる?」
妹「うん。寝てる。それよりどうしたの?」と小声で妹が聞いた。
A「いやさっき窓から落ちてしまってな。大変だったんだよ。窓開けようとしたら足が滑ってな。笑えるだろ」
妹「笑えないよ。絶対嘘だし」
A「本当だよ」
そういってAは手の傷を見せた。
妹「うわ。本当だ。痛そう」
実はAがわざとつけた傷なのだが。
妹にいろいろ聞かれた時に嘘をつくため。
その他、服にも砂をつけたりしていた。
妹は信じたようだ。
妹「他に痛いところはない?」
A「大丈夫だよ。ありがとう」
妹「二階のお兄ちゃんの部屋開けようとしたらベルが鳴って、確認したらお兄ちゃんだったなんてびっくりしたよ」笑いながら妹が言った。
Aは部屋の中が見られていない事にほっとした。
部屋の中はきっとあの惨劇で荒れほうだいだから。
妹とAはキッチンへ。
妹がコーヒーを出してくれた。
二人でコーヒーを飲みながら今日の事でいろいろ話しをした。
しかしそのうち会話の内容は違う内容になり、昔の話や笑い話に変わっていった。
妹「そんな時もあったね」
A「あったあった」
今日の事を妹に秘密にしたのは、あんな事を妹に話したらきっとショックを受けるだろうと思ったから。
Aは妹に優しいお兄ちゃんである。
怖い話投稿:ホラーテラー 黒猫さん
作者怖話