長編8
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おばばのちから

音楽室の話の前に、おばばの話をしたいと思い、勝手ながらすみません。

この話だけで終わらせようとは思いますが、自己判断で続きになってしまうかも知れませんが、どうぞご理解の上よろしくお願いいたします。

大変長くなりますが、ご了承下さい。

皆さんはテレビのちからをご存じですか?

テレビのちからは主にスペシャルな時しかしておらず、生放送を使って失踪者、行方不明者、指名手配犯等を探して、視聴者に情報提供を呼びかけ、そしてテレビ側が呼んだ、世界で活躍している有名刑事や超能力者や霊能者にも捜査協力してもらうといった内容の、かなりスケールのでかい番組です。

私もこのテレビのちからが好きで、必ず見てました。

今回のおばば(今はもう他界しております)の話は、実際にテレビのちからと同じような事を、たった一度だけしたという事実を、いしづちゃんからではなくまた違う方から聞いた話です

一年前にバイトしていたとこの先輩(あだ名ピーさん。いつも下痢症で、よくピーピーやねんと言ってるので、みんなからそう呼ばれるようになった)も、おばばの事を知っており、実際に一度だけ会った事があるそうです。

先輩は親友の付き添いで、おばばの元へ訪ねたらしく。その時の内容が、まさにテレビのちからと同じ感じでした。

ピーさんの親友(以後Bさん)は結婚しており、(あピーさん女です(笑) )一人息子がいて、家族三人で幸せに暮らしていたそうです。

Bさんの息子(こう君)さんはその時小学2年生。

ピーさんもこう君を可愛がっていたらしく、かなり懐かれてピーちゃんピーちゃんと呼ばれていたそうです。

こう君2年生になった、夏の事。

Bさんは、近所のママ友達から今年の夏休み、一緒に家族でキャンプをしないかと誘われたそうです。

Bさんは快く誘いにのり、その夜に旦那さんと息子にキャンプの事を言うと、2人は大喜びしたそうです。

そしていよいよ夏休みに入り、ママ友達の家族とBさん家族でY川へ向けて出発。

夏休みなので、どこのキャンプ場も家族連れや、若者やカップルで多く、Bさん達が目指してるキャンプ場は、かなり山の方で車で3時間ぐらいかかる穴場スポットだそうです。

目的地に着いたときは、午前10時過ぎ。とりあえず12時まで、みんなで川遊びをしたそうです。

そしてお昼は、川で釣った魚とおにぎりを食べたりして、午後からまた泳いだりしていっぱい自然を満喫していたそうです。

夜はバーベキュー。子供達が楽しみにしてる花火。肝試し等して、あっという間に1日が終わったそうです。

キャンプは一泊二日だったので、2日目は帰りの事を考えてお昼過ぎには出る事にしたそうです。

親達は、後片付けや後始末等をしており、子供達はというと朝から川で遊んだりしてたそうです。

ちゃんと親達の目の届く範囲で、泳いだりしてたのでBさんは安心して、荷造り等もしていました。

そしてお昼ご飯を食べさせる為、ママ友達の方が子供達を呼びに行ったそうです。

が、友達が血相を変えてBさん達のとこに走ってきました。

「ど、どないしたんですか奥さん?そんなに慌てて」

「た、たた、…ハァハァ…大変なの!!」

「!?」

すぐに親達は、子供達の身に何かあったと悟り、すぐさま川へ走った。

そこには友達の子供達が、こう君の名前を叫びながら、必死で探しまわっていたそうです。

当然Bさん夫婦は、息子がいない事に気付きました。

「こ、こうはどこ!!!!?」

Bさんはすぐさま、子供の中で一番上の子に尋ねました

「こう君なぁ、急に消えてん!!」

「あんな、泳いでたらおらんくなった!!」

「あたし見たとき、いなかった!!」

子供達も、親達の元に集まりみんな泣きながらいっせいにしゃべり出した。

「お前ら落ち着かんか!!」

子供達のお父さんが怒鳴ると、たちまち子供達は大人しくなった。

友達の旦那さん、結構恐いらしい(笑)

一番上のお兄ちゃんに、もう一度尋ねた。

「こうはどこにいるの?」

「こう君は、あそこの深い所で浮き輪も無しで泳いでた。」

と言って、川の深い場所を指さした。

友達のお父さんとBさんの旦那さんで、深いところを潜ってみたが、こう君の姿はなかった。

Bさん達は、子供達に着替えてくるように指示し、友達と一緒にあちこち探した。

「ダメだ!!いろいろ深いところ潜ってみたが、どこにもおらん!!」

Bさんの旦那さん達が、川から上がってきた。

「そんな!!こうはどこ行ってしもたんやろ!?」

「奥さん、落ち着いて……多分こう君は、流されて下流に……」

友達の旦那さんは言いづらそうに言った。

「こうはまだ死んでない!!絶対生きてる!!」

と言うと、Bさんは泣き崩れてしまった

「奥さんしっかりして!!奥さんがしゃんとせな、こう君は戻って来れんやろ!!」

「とりあえず、警察に連絡しましょ。捜索願い出せば、必ずこう君は見つかりますから」

友達はおろおろしながら、Bさんを励ました。

Bさんの旦那さんも頷き「一度下まで降りよう。ここは電波がないから、連絡しようがない。」

「そうやな。先に子供達だけでもなんとかせな。」

すぐにBさん達は、荷物を積めて車に乗り込んだ。ただBさんだけが、完全にショックを受けその場から、離れようとはせず旦那さんと友達の旦那さんでなんとか、車に乗せた。

子供達もこの緊迫した空気に、みんな泣き出してしまっていた

特に一番上のお兄ちゃんは、責任感からか、声を押し殺してずっと泣いていたそうです。

だいぶ下まで来ると、携帯に電波が入るようになり、すぐさま旦那さんが警察に連絡。

Bさん夫婦は、警察と落ち合うためその場に残り。

友達家族は、一度子供達を親戚に預けに行った。

30分ぐらいして、警察が到着。

2人を乗せて、キャンプ場へ行き、そこでいろいろな事を詳しく聞かれ。こう君のいた状況等を聞かれ、それからやっと警察官が捜査班を呼んだそうです。

友達夫婦も戻ってきたが、警察官に「後は我々の仕事なので、家に帰って下さい」と言われたそうです

警察官は、キャンプ場付近から下流まで手を尽くして探し、周辺のこう君の聞き込み等を入れ、約3ヶ月も探してくれたそうです。

3ヶ月の間に、こう君がつけていた水中ゴーグルが中流付近で発見。

しかしそれ以上の、有力情報もなく手掛かりもないまま、3ヶ月で捜索は打ち切りとなってしまったそうです

警察によばれたBさん夫婦は、署へ行ったそうです。

「わざわざ出ていただいて、えらいすみません。……我々もあらゆる手を尽くしましたが、新しい情報等がないかぎり、捜査は打ち切りになるんですわ。……おそらくこう君は、亡くなってしまってると思われます」

「でも、どこかでこうは生きてると思うんです!!なんとか、捜査を再開していただけないでしょうか?お願いです。どうか!!」

「奥さん、お気持ちは充分分かります。もし生きてたとしたら、誰かに助けを求めてたはずです」

「しかしこれだけ日にちがたつと、死亡と考えなければなりません。葬儀を早くする事をおすすめします」

Bさん夫婦はあまりのショックに、その場で大泣きしてしまったそうです。

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親友の訃報を聞いたピーさんは、すぐさまBさんの家に訪れました。

Bさんは完全に生気をなくしており、旦那さんもどこか元気がなかったそうです。

ピーさんは、なんとか励まそうといろいろな手土産を差し上げたそうです。

でも2人は笑顔が作れないぐらい、精神がやられていました。

ピーさんは聞こうか迷ったが、勇気を出して2人に尋ねた。

「……葬儀、何でしないの?」

「こうの体が見つからないかぎり、死んだと認めたくない。それに、遺体のない葬儀なんて……あげたくないわ。」

「実は、僕達Y川へ行ってこうをさがしてるんだ。……どこかで、元気に生きてんかと思って、あそこらへんの住宅全部あたってる最中なんや。望みを捨てれへん」

2人の強い思いに圧倒されたピーさんわ、「自分も手伝ってもええかな?うちもこう君の事、本当の息子と思って、可愛がってきたから」

2人は、ピーさんの申し出を快く受け入れてくれた。

そしてしばらくの間、3人で涙を流しながら、こう君との思い出を語り合ったそうです。

捜索打ち切りから、半年が過ぎても、やはりこう君を見つける事ができなかった。

Bさんもピーさんも諦めかけていたそんな時に、地元に有名な霊能者がいるという話を聞き、最後の望みで3人はその霊能者の元へ向かったそうです。

その霊能者というのが、おばばです。

あの頃のおばばは、地元メディアや雑誌編集部の人やらに心霊関係でスポットや写真等を見てほしいだの言われてたらしく。

うんざりしていたそうです(笑)

ピーさん達が来た当初、おばばにすごく嫌な目で見られたそうです。

でも、すぐに何かを感じとったおばばは、ピーさん達を招き入れてくれました。

Bさん夫婦から事情を聞いたおばばは、以前こう君が大切にしていたおもちゃを受け取ると、すぐさま霊視し始めました。

開始か15分経過した頃に、Bさんがいてもたってもいられず「こうは……息子は無事なんでしょうか?」

「残念やけど、死んどるよ」

それを聞いたBさんは、ああぁぁぁ!!と泣き出してしまったそうです。

「息子は、どこにいるかわかりますか?」

と旦那さんが尋ねた。

「随分下の方まで、流されてきてしもうとる。」

「でも、警察が下流の方も捜索して下さいましたが」

「さらに下じゃ。○○市の高校の前に、息子さんはおるよ」

「そ、そんな所まで流されて……」

「息子さんはあんたらの元へ、早く帰りたがっとるよ。明日、さっき言った場所らへんを探してもらうとええ」

「あの……息子は成仏できるでしょうか」

「すでに、溺れた時点で自分の死を理解してたようやで。賢こい子やったんやなぁ。」

それを聞いたBさん夫婦は、涙を流しながら小さく頷いてたそうです。

三人はおばばにお礼を言い、警察署へ行き、Y側下流の○○市の高校前付近での捜索をお願いしたそうです。

警察の方から胡散臭い目で見られたらしいが、おばばの名前を言うとすぐさまOKが出されたそうです。

翌日、捜査班が言われた場所の辺りを潜ってみると、すぐに遺体を発見。

だが遺体の損傷が激しく、念の為鑑識でDNAを調べた結果、行方不明だったこう君のものと断定。

Bさん夫婦は、こう君の体を拝める事ができなかったそうです。

亡くなった時期が時期だっため、半年も水中に浸かってたのもあり、酷い状態だったしく警察の配慮で、見れなかったそうです。

亡くなってから、半年が過ぎてようやくこう君のお葬式があげられ、Bさん夫婦の顔にも笑顔が戻ったそうです。

葬儀の時、夫婦はおばばを呼び、ピーさんと一緒に参列したそうです。

おばばはずっと、にこにこしていたとピーさんは言っていました。

あれから、Bさん達は元気に暮らしているそうで、あの事件から二年後に女の子が生まれ、今小学四年生だそうです。

こう君の分まで、家族三人で頑張りながら、幸せに暮らしているとの事です。

これでこの話は終わりです。

長い話でしたが、お付き合い頂きありがとうございました。

怖い話投稿:ホラーテラー わかめさん  

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