その凄惨なな格闘が終わり、全ての残骸を暖炉に投げ込んだ後、すぐさま旦那に妻へと電話をさせたらしい。
妻はすぐに出た。
「妻は死んでいた!とかやはりそういうのは心配するだろ、形が形だけに。
元気だったけどな。まぁキョトンとしてたな。
流石に今起きた事は言わなかったけどな。後で旦那が話したかどうかは知らないが…
でも、流石に全て終わった後に恐怖が襲って来たね。手足とか震えて来てな。彼女はずっと泣いてたな。
で、1番怖かったのは、彼女が暫くして変な事言い始めたんだよな。
何でアレに○○さんですか?と問いかけたのか、と。
変な事聞くなぁ、と思ったね。顔ははどう見てもあの奥さんなんだから」
「で、どういう事だったのかな?」
俺が聞くと、叔父は気味が悪そうにこう言った。
「よく、自分の形をしたモノの頭にナイフなんて突き立てられたね、って彼女はこう言ったんだよ。」
「つまり、彼女にはあの化け物が、俺の姿に見えてたんだよな」
叔父が想像する所は、次の様な事らしい。
古代ドルイドの秘儀で、オークの木に邪悪な生命が宿った。
それに、あの妻の怨念も乗り移り、生贄が止まった事に見兼ねて、自ら実体化して現れた、と。
そして、見る対象者によっては、あの化け物が様々な姿形に見えるのではないか、と。
「翌日、日が真上に昇るまでまって、あの木を見に行ったよ。
木の表面が、2cm程陥没してて、1m60cmくらいの人型になってたな。
そして、頭部らしき箇所に俺のナイフが突き立ってたな」
やがて、夕方になり旦那の知り合いの業者がやってきて、クヌギを木を切り始めたと言う。
「最初にチェーンソーが入るときと、木が倒れる時。完全に聴こえたんだよ。
女の絶叫がね。
俺と彼女と旦那だけ聴こえた様子だったな。
で、切り株と根っこまで根こそぎトラックに積んでたんだが、小動物の骨が出るわ出るわ。
業者も帰りたがってたな。
さっきの人型と良い、そりゃ気味悪いよな。
まぁ、人骨が出なかっただけマシかぁ?」
後日、隣の夫婦がそれなりの品物を持って謝罪に訪れたと言う。
「受け取ってすぐ捨てたけどなぁ。やっぱり、色々勘ぐってしまうよな」
そして、すぐ夫婦は引っ越し、叔父たちもその後すぐにマンションを引き払ったらしい。
暫くして、叔父は彼女とは一時別れてしまったそうだ。
「そんな事もあったねぇ」
紅茶を飲みながら、叔母が懐かしそうに言った。
「そうだな…あぁ、そう言えば…」
叔父が庭の木を見つめて呟いた。
「ウチにもオーク、ナラのカシワの木があったな。縁起物だから、新築の時植えたんだがな。
まぁ、アレだな。モノは使い様と言うか…人間の心次第と言う事かな。
それがプラスかマイナスかで。有り様が変わってくるからな」
そして、叔父の話は終わった。今度来るときは、カシワの葉で包んだ柏餅をご馳走してもらう事を約束し、 その日は叔父夫婦の家を後にした。
怖い話投稿:ホラーテラー とかげさん
作者怖話