朝起きて最初に思った事は、行きたくない…。
行きたくない病が完全に発病していました。
でも今日で最後だからと自分に言い聞かせながら準備をして店に向かいました。
昨日と同じように早く店に着いて一番乗りだと思いながら休憩室に入るとあの娘が居ました。
最悪だ。
昨日はギリギリに来たのになんで今日は早いんだよ。今日はツイてないなぁと思いました。
仕方なくその娘から一番遠い席に座り携帯を開いて早く他の人達が来るのを願いました。
いつもより時間がやけに長く感じる。
まだ二分しか立ってない。ゆっくり流れる時間にイライラしていると、あの娘が携帯を片手に近付いてきました。
やっぱりと自分のツキのなさを呪いました。
その娘は携帯を振りながら、こんばんは。
と、いやに上機嫌。
俺はなんで、こんばんは?こいつにとって今は何時だよと思いました。
俺が黙っていると何故か自己紹介が始まりました。
あたしの名前知りたい?
いいえ、知りたくない。
本名○○だけど、レンズって呼んで。
あっ今さなんでレンズって思ったでしょ?
思ってない。
メガネかけてる人ってさ、あだ名メガネになる事が多いよね。
じゃあさコンタクトレンズしてる人のあだ名はコンタクトレンズじゃない?
でもコンタクトレンズじゃ長いからレンズ。
いや、メガネは見たら解るけどコンタクトは解らないしと思ってると、今の説明をぶち壊す台詞が。
ああ、あたしコンタクトじゃないから。
視力いいんだよね。
もうこの人の言ってる事が俺には通じない。
(以後この娘の事はレンズとします。)
それになんで最終日に自己紹介?
普通は初日だろ。
あんた名前は?
本名を知られるのは嫌だったので適当に言いました。
はい嘘〜。
どうしてか私が名前を聞くと皆、嘘付くんだよね。
はい、皆さんの気持ち解ります。
じゃあだ名付けてあげる。メガネね。
因みに俺はメガネをかけてません。
もう面倒だったので、それでいいやと思いました。
メガネって携帯見るの好きだよね?
どこ見るのが好き?
メガネってあだ名に違和感を感じつつゲームやったり携帯小説を見るのが好きだと言いました。
は?そんな事聞いてないよ。携帯の何処の部分を見るのが好きか聞いてるの。
え?部分?
そう、あたしはやっぱり4のボタンかな。
嫌いだけど嫌いなだけに見ちゃう。
塗り潰してるけど、気になって見ちゃう。
ここから先は独演会でした。
4は嫌いだけど相性は悪くない…
4が大嫌いだからこそ4の魅力が解る…
死に近い…
四つ辻だと死に近付きたくなる…
呼ばれてるのかな…
もうなんか洗脳されてるみたいでした。
なんとなく前に言ってたのと違うなと思いながら聞いていると、やっと他の人が来てくれてレンズさんの話しが終わりました。
やっと仕事が始まる時間になったけど昨日の同じ班の二人が来ません。
バックレた?
気持ちは解るけどズルいと思いました。
レンズさんはやっぱりと言い笑ってる。
他にも昨日の怪我した人と別に三人も来て居ません。
最終日にして人数が半分になり二人づつの班に分けられました。
もちろんレンズさんと。
レンズさんは昨日とは別人のようにテキパキと作業をこなしていく。
昨日はなんだったんだ?と思うほど。
相変わらず言ってる事は良く解らなかったけど少しだけ楽しいなと思いました。
作業も7割くらい終わった頃にレンズさんがピタッと止まり呟きました。
あーあ…
時間切れかぁ…
メガネ…まぁいいや…
そう言って早足で段ボールが積んである所まで行った時、何かに引っ張られるように前のめりに倒れました。
倒れる瞬間にレンズさんの体が二重にブレたように感じました。
レンズさんが倒れた場所は昨日、怪我人が出た所。
助けに行こうと思った時にはレンズさんは立ち上がって盛り塩を蹴飛ばしこっちに戻ってきました。
俺は心配になり大丈夫と聞きましたが無反応。
あれ?なんかさっきまでと違うなと思いました。
戻ってからのレンズさんは動きません。
さっきまでテキパキ働いてたのに突っ立って爪を噛んでるだけ。
まるで昨日のレンズさんに戻ったみたいに。
動かないレンズさんを見てやっぱり注意されながら一人で二人分の作業をこなし仕事が終わりました。
休憩室に戻り係の人がお疲れ様でしたと言ってる時にはレンズさんはもう居ませんでした。
帰り道、倒れる前にレンズさんが言っていた事を思い出して何故か寂しい気持ちになりました。
あーあ…
時間切れかぁ…
メガネ…まぁいいや…
あの時の事を思い出し寂しい気持ちになるから4は少し苦手かな。
怖い話投稿:ホラーテラー 鍵仁さん
作者怖話