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短編2
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悲しい特技

ある所に淋しがりやの男の子がいました。

男の子にはお父さんが居ません。

物心がつく少し前に何処かに行ってしまいました。

お母さんは男の子の為にいっぱい働いていてお家にはあまり居ませんでした。

男の子は寂しくて淋しくていつも一人で泣いていました。

でもお母さんの前ではいつも笑ってました。

ホントは泣いて淋しいと言いたかったけど男の子は自分がそんな事を言うと、お母さんが困ってしまうと思って決して泣きませんでした。

男の子は夜遅くに帰ってくるお母さんを泣きながら待ちます。

枕に顔を埋めて。

男の子には両方の目から出る涙を止める自信がありませんでした。

でも片方だけならと男の子は頑張ります。

男の子を起こさないようにそーっとドアを開けるお母さんを片目だけ涙を拭いて顔を半分だけ枕から上げてお帰りなさいと言うのが男の子には精一杯でした。

もう片方の目からは2つ分の涙と寂しさが枕に染み込んでいきます。

帰ってきたお母さんに甘えたいのを我慢して寝るねと言い寝たふりをします。

男の子は知っています。

お母さんがいっぱい疲れてるのを。

そのうち男の子は片方の目からしか涙が出なくなりました。

お母さんの為に身に付けた特技です。

ある時、男の子はいじめられました。

原因はお父さんが居ない、お母さんが夜の仕事をしてると男の子を叩いて悪口を言いました。

男の子は悔しくて悔しくて片目から涙が流れました。

汚れた服と叩かれた所を見たらお母さんが心配すると思いお家に帰りたくなくてブランコに座って泣いていました。

片方だけ。

暗くなってきた時に隣のブランコに誰かが座りました。

隣には見たことはないけど知ってるようなおじさんがいました。

おじさんは言いました。

なんで片方だけ泣いてるんだ?

男の子は言いました。

お母さんの為に両方は無理だけど片方だけなら頑張れるから。

おじさんは笑いました。

子供がそんな事を気にするなと言いました。

男の子はお母さんが困るのは嫌だから頑張ると言いました。

おじさんは男の子の頭を撫でながら言いました。

お前のお母さんなら大丈夫。それにな、子供は親を困らせるもんだ。

男の子は何故か涙が出ました。

両方の目から。

気が付くとおじさんは居なくなっていました。

ブランコから降りた時、男の子には元気でなとおじさんの声が聞こえた気がしました。

男の子はその日お母さんの前でいっぱい泣きました。今までの分も。

男の子の特技はなくなっていました。

怖い話投稿:ホラーテラー 鍵仁さん  

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