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中編3
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序章

個人的には霊感無しなので、またしても人に聞いた話だが…嘘か誠か。

会社事務員のOさんが友人2人と山へ旅行に行ったときの出来事。

時期は去年のGW明けてから5月末までの間のどこからしい。(詳しい日にちは聞かなかった)

久々に学生時代の友達と会いテンションも上がっていた。目的地の山はN県の結構有名な山だが、スキー場やペンション、温泉が有るような普通の観光地…からは程遠いさびれた温泉郷。よくいえば秘湯だが、回りに殆ど建物もなくて少し寂しい感じの所。

とはいえ景色も空気も良いし、ひとしきり観光して皆満足気だった。

夕方というには少し早かったが宿にチェックインし、とりあえず皆でお風呂へ入ることに。

湯船に入ってしばらくは3人で喋っていたが、Oさんは長風呂は苦手だったので先に上がることにした。

「宿の前の小路で涼んでるから」と伝え、1人先に夕涼みを始めた。

その日は日中は風もなく暑かったが、夕方からは曇りになっていたので、結構涼しく感じられたそうだ。

しばらく待っていると友人も涼みにきたので、また飽きもせずくだらない話をしていた。

くだらない会話とはいえ、久しぶりにあった友達となら何してても楽しい。

多少曇りでも夜景もキレイだし。眼下の温泉街の灯りが雲に反射して、薄暗くなった山の空をほのかに照らしていた。

その時友人Aが、

「なぁ、あの雲なんかおかしいで」

B「何が?それに雲てゆうても、夕方から曇りやし一面雲だらけやん」

Oさんも最初Aの言ってることが解らなかったらしい。

A「違う・・・何か、あの、真ん中の辺…」

O「真ん中?何もわからんけど・・・」

そう言いかけてOさんは違和感を覚えた。

何か妙だ。おかしい。

これは…

B「ホンマや・・・・あの雲、真ん中んとこだけ動きおかしいで」

Bも違和感に気づいた。

薄暗い一面の曇り空、その空の真ん中辺りの雲だけ周りと違う動きをしているのだ。全体的にはゆっくりと西へ流れるような雲の動きだったらしいが、中心部だけ渦を巻くようにゆっくりとうねっている。

それに気づいたとき、Oさんは得体の知れない不安を感じた。友人達も同じ様で、皆気持ち悪そうに見入っている。

A「何あれ・・・ホンマ気持ち悪い。あんな動きとかあり得んの?なぁ…中に戻ろ…」

B「あんなん初めて見たけど・・・何か嫌な感じやな。つーか、なんか渦の回転速くなってるし。あれ、何か顔に見える…」

O「ホンマや、さっきと違う・・・・アカンて、なんか、嫌や・・・見たくない…」

言葉とは裏腹に皆魅入られたようにその場から動かなかった。動けなかったのかもしれない。

Bの言う通り、それは刻一刻と形を変え、もはやハッキリとした人の顔に見えるまでになっていた。

暗い空に浮かんだ巨大な暗灰色の顔…

Oさん達ははその時、不安に駆られながらも絶望的で、諦めにも似た感覚に襲われた。もう無理だ・・・逃れられない…あんなものから逃げようがない・・・

そんな感情に捕らわれていた。だから皆逃げなかったのだ。

そしてただそれを見続けていた。

不意に顔を形作っている部分の雲が盛り上がり、こちらへ向かって堕ちてきた。そして3人の上空で止まると再び恐ろしい顔になった。

流石に限界だった3人は腰を抜かしながらも宿に向かって逃げ始めた。

その時、顔が口を開いた。

「バモ゙ォォ~ バァァ~ハァ~~ア゙ァ~」

(何と表現したらいいか解らない、あえて言うなら船の汽笛をもっと低くした重低音の笑い声?らしい)

ゲラゲラ笑いながら、悪意に満ちた顔で

3人に告げたそうだ。

「序章」と。

Oさんの意識はそこで途切れた。

何が序章なのか、何故Oさん達だったのかは解らない。

意識を取り戻したときはAの車の中だったらしい。

誰も何も言わず、帰ってきたそうだ。

後日Bからの話によると、Oさんが気を失った後もあの顔は何かを告げてきたらしい。Aはパニックで覚えてないらしいが、Bは覚えていた。OさんだけはBに教えてもらったらしいが、その内容までは教えてくれなかった。

ただOさんは全てにやる気を無くし、仕事も辞めた。Aは知らないがBもOさんと似たり寄ったりらしい。

怖い話投稿:ホラーテラー Qさん  

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