今回が最後となります。
寝ていたAの父親が起き上がります。
力なく微笑むと一言一言噛みしめるように
「私はこの時を待っていた……あの日からずっと…罪の意識に耐えきれず…だが、Aには何の罪もない…真っ当な人生を歩ませたい……それだけが気がかりだった…しかしそれも杞憂だったようだ…こんな私の娘とは思えない程立派に育った…もう思い残す事はない……最後は君の手にかかって眠る事を望んでいた……」
私は戸惑いました。
幼かったあの日、幸せを奪った奴に復讐すると誓いました。
この日の為だけに辛い事にも耐え生きてきたはず。
あれだけ憎んだ相手が目の前にいるのに…
「ちくしょう!殺してやる!」
息を荒げナイフを振り上げると突然蛍光灯が消えました。
真っ暗な部屋の中に浮かび上がる優しげな顔。
父さんと美紀です。
「真司止めなさい。お前、もう分かっているんだろう?復讐なんて意味がないって事。憎しみ続ける事、復讐するという事で自分の存在意義を感じたかったんだろう?」
そうか私は父さんや美紀の復讐だと言いながら、本当は一人取り残されて孤独で辛い思いをした私自身の復讐がしたかったんだと気づきました。
「お兄ちゃん、そんな怖い顔しちゃ駄目だよ。幸せが逃げていっちゃうよ」
「美紀…」
AとSには見えているのか?聞こえているのか?
分かりませんが泣いているようでした。
そして最後に私は聞きました。
「俺に近づいたのは罪の意識からだったのか?」
「初めはそうだったかも知れない…でも私!……」
それだけ聞くと私はAの家を後にしました。
「待って!!」
玄関まで出るとAが駆け寄って来たので振り向きました。
「…っ!」
熱い…なんだこれ?
お腹を触るとヌルヌルとしています。
血だ…
私はその場に倒れ意識が混濁する中Aが言いました。
「ごめんね、さっきの話ね〜ちょっと違う所があるのよね。父がお金借りに行ったと言ったけど、本当は私もその場にいたの。外で待ってたらお父さん真っ青な顔で飛び出してきて。それで中を覗いてビックリしたわ!だってお父さんトドメ刺してないんだもの。だから〜私が……それにお父さん病気だけど死ぬほどじゃないわ。お父さんったら心配性で、あなたが復讐するなんて考えるからこんな目に……」
事切れる寸前、私は嘲笑いました。
Aの背後に父と美紀の顔が見えたから。
賛否両論あるかと思いますが、途中二通りのエンディングを考えていました。
どちらにするか迷いましたが、結局こちらに。
拙い文章ですが、最後まで読んで下さりありがとうございました。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話