髪が伸びる金髪の人形の後日談です。
ひな祭りに出してた人形は、雛人形に限らずいろんなのがありました。
あきらかに、女人形じゃないものまでありました。
その中に、イメージとして金太郎のような人形が…。古いもので、マサカリは担いでいませんが、組紐を歌舞伎の見栄をきったように持ったポーズでした。
その人形は目つきも悪く、家族も気味悪く感じていたのか、金髪の人形と他の何体かと一緒に処分しようということになりました。
今だと、神社やお寺に持って行くのでしょうが、父が「流し雛だ」と…。
高校に入学する少し前に、家の近くの一級河川に「流し」に行くことになりました。
昔の事といっても、昼間だと人目もあるので、夜10時過ぎに父と姉と三人で車に乗って、鉄橋まで行きました。
踏み切りの手前で車を止め、どうするのかと思ったら、
父「はっち(本名でしたが)行ってこい」
私「ええ〜」びっくり!
父「鉄橋の歩道の上から落としたらいい」
いいって…何?
川岸から流すんじゃないの?皆で拝んだりしながら…
何で私なの?一応、最年少なのに…
父「大分、向こうまで行け。水のあるところで落とさないと、流れないから」
だって?
歩道には等間隔にライトがついていますが、左はむき出しの線路、右は真っ暗な川…は、まだまだ向こうで、河川敷に茂っている葦の乾いた音がカサカサ鳴っています。
勇気を振り絞って、歩道を進みました。
10メートルぐらい進んだところで、「ここ?」と聞くと、父は手招きの逆で、もっと向こうに行け!と。
仕方なく、もう10メートルぐらい進みました。
父と姉はすでに車に乗っています。
鉄橋には私しかいません。下からは葦のカサカサいう音に混じって、チャパチャパと波打つ音が聞こえてきました。
私は、「もう限界!」と、そこでビニールの袋ごと落としました。
手を離した瞬間、猛ダッシュで引き返しました。
その時、下で、ガチャン!
えっ!水音じゃないの?と思いましたが、そのまま車に乗り込みました。
父が「ちゃんと落としたか?」と聞いてきましたが、「うん」と返事をした後は黙っていました。
すいません、その後は、人形にうなされたり、追いかけられたりはしませんでした。
が、その後、入学した高校には毎日、その鉄橋を通らなければならず、私が落とした袋に入った人形は、しばらく葦の根本にありました。
おしまい…です。ありがとうございました。
怖い話投稿:ホラーテラー はっちさん
作者怖話