暗い道にある公衆トイレ。
このトイレを見つけたサラリーマンが、急いで中に入っていく。
「あぶねぇーあぶねぇ」
そう独り言を言いながら便器の前に立つサラリーマン。
彼がいるこのトイレは電気が切れかかっていて、チカチカと点滅を繰り返し、トイレ内は明るくなったり暗くなったりしている。
用をたしている時に彼は、自分の目の前の壁に落書きを見つけた。
助けて ハート
そう書いてある。
女の子の落書きのようだ。
「どうして助けてほしいのかなぁ〜。おじさんが助けてあげるよぉ〜」などと変な口調で独り言を言うサラリーマン。
そして彼は用をたすと、軽い気持ちで落書きに返事を書いた。
落書きの下に「いいよ ハート」と一言。
翌日の仕事帰り、またそのサラリーマンは昨日のトイレに立ち寄った。
同じ便器で用をたすサラリーマン。
と、昨日の落書きに再び目を向けると、「助けて ハート」の文字から矢印が長く伸びている。
矢印を目で追っていくと、「いつ?」という落書きにたどり着いた。
サラリーマンは、面白くなって今度は、「いつでも」と返事を書いた。
翌日、同じトイレに立ち寄ると「いつ?」という落書きから、また長い矢印が伸びている。
再び目で追っていくと、電話番号にたどり着いた。
「誰の番号だ?この子のか!」
そういって彼は、軽い気持ちで壁に書かれている番号に電話をかけた。
プルルルル プルルルル
「ん?」
なにかがおかしい。
トイレの中から携帯のベルの音がする。
彼は音のする方向に目を向けた。
視線の先には古びた女子トイレがあった。
その扉がゆっくりと開き始める。
中の暗闇が少しずつ見えてくる。
扉は少し開いて止まった。
わけがわからず恐怖に震えるサラリーマン。
そのとき。
チカチカと点滅を繰り返す明かりの中。
扉の隙間から血まみれの女の子の顔が見えた…
怖い話投稿:ホラーテラー 黒猫さん
作者怖話