オレには十数年来の親友がいる。Sという。
このS、今でも、というか出会った時から人とは少しズッていた。
正確に言えば、イタイ子だ。
顔は誰もが認める男前。性格は掴み所が全くない。飛んでるから彼女もオレの知る限りではいたコトがない。だが・喧嘩は桁違いに強く、存在が反則的なヤツだ。
そんなSにオレは常識的には考えられない何かが着いてる、とオレは思う。
まあ、聞いてよ。
それは、寒波が入って今年一番の寒さといわれたある日…………
Sが出張から帰ってきた。オレは出張から帰ったSを迎えに行き(Sは従業員)顔を見るのも半年ぶりくらいなので、オレの家で遅くまで話をしてた。
そろそろ夜も遅くなりSは出張の疲れもあり、帰ると言う。
さっきも言ったはずだが外は寒波で雪がチラチラ。
雪がチラチラするから朝でもいいんぢゃね?と言うと、いつものように
『大丈夫だよ~、明日の昼にはまた来からさぁ~、車貸しといてよ~。』
ま・出張帰りやし、一日だけならと思い、車に乗って帰らせた。
んで、そろそろ寝ようと思い、布団を被ると電話。Sだ。
『もしもし~、今帰ってたらさぁ~、道路が凍ってて車滑って人の家に突っ込んぢゃった~(笑)。どうしようか~(笑)』
???
またやりやがった!
いつもそうだ。悪気全くなしでサラッととんでもないコトをやりやがる!それがS。
しかも何故かテンションMAX。笑ってやがる。
だが、車よりSのコトが心配だ。
場所は?怪我は?突っ込んだ家の状況は?
オレはだいたいのコトを聞くと彼女のAに頼んで迎えに来てもらい、現場まで行った。
現場は山ん中の下り坂。麓に民家が何件かあり、その一番手前の家に突っ込んでた。
一目で見て分かる。廃車だ。
だが、おかしい………。オレとAは顔を見合わせて思った。
誰もいない…………。Sも家の人も…………ついでに近所の野次馬も…………?
異変に気づいたオレ達は車を道の脇に止めて歩いてSを探すことにした。
てか車の状況を見て、Sもかなりの重傷を負ってるに違いない。
とりあえず、心配。
でも、いつも通りヘラヘラ笑ってた。
ホント・空気読めてないというか・子供というか?前にメアド変えたってメールもらった時、名前間違ってたし。自分の名前くらいね?
んなコト思いながらSを探していた
その時―――――!?
Sよやはりオマエは空気が読めないのか?
オレとAは、家に突っ込んぢゃった車をよそにSを探した。
辺り一面真っ暗で、しかも寒い。雪もチラチラ。Sよ、やってくれるぢゃん!
など思いながら探索を続けた。家のうらのほうに周ってみようと言うコトになり、近づいていくと、声がする。
あのマの抜けた声わSだ。何やら謝っている様子―――。
S『すいませんでした。もうしません。』
いや、子どもが謝るんぢゃないんだからさ。ま・一緒に行って謝ってやるかと思い、足を前に出そうとしたらオレの腕をAが強く掴む。しかも小刻みに震えてる?
A『Sちゃん、誰と話してんの?誰もいないよ?』
しまった――――
この女、超霊感強いの忘れてた。しかも、パチンコ狂い。着メロまでケンシロウ。寝言で『将星墜ちるべし!』にわびっくり。この女の武勇伝わまた機会があれば。
オレ『何か見える?』
A『よく見えないけど…………黒い霧みたいなの?』
オレも見てみたが何も見えない。霊感0。
Sがひたすら頭下げてるが、確かに相手はいない。
ヤバい。Sは日頃からヤバいが今わもっとヤバい!
体が動かない。なんと気の小さい男よ。Aも動かない。
この状況が五分は続いたか?そうしてるうちにSが謝ってるのが終わった。
S『それでは失礼します。すいませんでした。』
とか話終わらしちゃって、こっちに歩いてくる。
S『あっ、来てくれたんだぁ~(笑)悪いね~(笑)心配掛けたね~(笑)』
とか言って何もなかったように。しかも悪気0。てか、それよりもさっきの行動のコトが気になり、問い正す。
Sの回想。
いや~(笑)雪降ってて、道が凍るぢゃん!ソコ車で走るとどうなんのかな~(笑)とか思ってね~(笑)
で飛ばしたら当然滑って民家に直行便なっちゃって。そしたら中から家の人でてきてさ。エラく古い言葉遣いで何喋ってんのか分かんなぃからとりあえず謝っとけ~。みたいな感じで謝ってたら、究極のニ択をつきつけられて~。眠りを妨げた変わりに、罰として魂を連れて行かれるかorソコに隠れてる二人(オレとA)の魂を連れて行くかってコトになったらしい。
ただ、このニ択もSが何回も聞き直して、内容を理解したらしい。
Sは頭と目と耳が悪い三冠王。
当然、家の人?かなりイライラしてたらしい。
Sよ、私わ言い切ろう。オマエのような男は存在がプレミアだ。相手が誰でも関係ない。
S『もう死ぬかと思ったよ~(笑)』
…………、この怖いもん知らずのSにも先程の出来事にはさすがに怖かったんだとオレは思い、
オレ『そりゃ、あんな事言われたら無理ないんじゃね?』
と言うと、
S『違うよ~(笑)さっきの落武者みたいなのじゃなくてさ~、事故った時の事だよ~(笑)さっきの人は訳分かんなぃ事ばっか言って話なんないんだよ~(笑)』
???
落武者?ソレって幽霊じゃねぇーか!
さらに話を聞くと
S『二つに一つ選べって言われてもねー、オレ(S)まだ死にたくないし、オレが死んだら誰が給料くれるんだよ~(笑)、だから二つとも無理って言ったんだ~(笑)』
このアホが!なんだそりゃ?給料?そんだけの理由なんのか?もうちょいましなかばいかたはねぇ~のかよ?
確かにSらしい発想ではあるが…………
S『高坂昌信って本人は言ったんだ~(笑)、武田四天王とかなんとかさぁ?でも、オレは上杉謙信のほうが好きだし~、そんなマイナーな武将分かんなぃよ~(笑)、戦国無双でてたっけ?』
ああ…………そうそう。Sは生まれ変わったら呂布か上杉謙信になりたいって日頃から言ってる…………。
理由は強いから。
このバカが!オマエの好き嫌い誰も聞いてないんだよ!
てか高坂昌信っていや超有名武将だし!
まあ・いいや………、このバカのペースで話聞いてたら朝になってしまう。
オレ『…………それで?結果はどうなったん?』
S『上杉家の心意気、とくと見せてやったよ。利いた風な口を聞くな~みたいな、ね。』
何ソレ?SといいAといい、オマエら日常でもパチンコネタかよ?
好きなのは分かるけどさ。3人でパチンコ行ってボタン壊してたよね…………。
そのせいでオレまでソコの店出入り禁止なんだよ!
S『でもね~(笑)、最後には話分かってくれてさ~、イイ人だったよ。』
相変わらずSの言ってる事は十数年親友やってるオレでも分からなく、話を聞きながら車突っ込んでたトコに戻ってみると、家自体は空き家だったり、エアバックが飛び出て、大破した無惨な車をよそに、Sは怪我一つなかったり、全く信じられない話で終わってしまった。
そう、コイツは15メートルくらい足場から落ちて、怒られんのがイヤで、すぐに立ち上がり仕事を続けた剛の者だ。
次回予告
絶対絶命のSの行動が明らかに?詳しい詳細は次回完結にて。
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作者怖話