短編2
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密着女

去年の秋に、友人に誘われキャンプに参加した。

メンバーは男三人と女三人。

いや、女は四人だ。

私以外には、その四人目の女は見えていないが…。

彼女は私を誘ってきた友人の後輩にピッタリと密着している。

とはいえ、友人の後輩は良い奴で、すぐに私とは意気投合した。

反面、生きている女三人は友人の後輩をあからさまに避ける。

当然だ。くっついている女が、近寄るなオーラを生きている女三人に向けて発射しているのだから…。

そのキャンプは、結局微妙な雰囲気のまま終了したのだが、次の日に異変が起きた。

俺『もしもし?』

『あ!サカシタさん。俺です!!アキラです』

早速、彼からの電話が掛かってきた。

あんな女と御憑き合いしてる割りには、妙に明るい声だったから少しだけ驚いたのだが…。

俺『おー!どした?』

アキラ『実は俺、サヤちゃんと付き合うことになったんっすよ』

俺『ほぅ…。あの一番可愛かった子か?良かったじゃん………』

まぁ、アキラはあの女さえ居なくなれば、イケメンだしモテるだろう。

サヤという子を想う気持ちが強くて密着女を引き離したのかもしれない。

私は勝手にそう納得していた。

そんなこんなで、他愛もない男同士の世間話を続けていると、やがて、私の部屋の玄関の呼び鈴が鳴った。

アキラ『あっ!誰か来たみたいですね。じゃ、また掛けますね!』

俺『おぉ。またな!』

受話器を置き、玄関のドアを開けると、私の彼女が笑顔で立っていた。

彼女を招き入れた後、ドアを閉めようとするが、半分くらいまでしか閉まらない。

何かつっかえているのだろうか…。

もう一度、ドアを開くと、あの密着女が立っていた。

凄まじい恐怖が私を襲うが、ただ茫然と立ち尽くすしかなかった。

密着女は、少しずつ私に近づいてきた。

そして、玄関を入り遂に私の目の前に立った。

こいつに魅入られたら、やっと苦労して付き合い始めた彼女と別れることになる。

それに俺はアキラほどイケメンではない。こんな奴にとり憑かれたら人生終わりだ…。

私は、恐怖を押し殺し、目一杯怒りの表情を作って密着女を睨み付けた。

だが、密着女は、そんな私を無視するように通り過ぎ、私の彼女にへばり憑いた…。

俺『……え?そっち?』

少しだけ寂しかった。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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