短編2
  • 表示切替
  • 使い方

恋占い

風水、タロット、手相、水晶、等々。

占いにも様々あるけれど。

占いが全く当たらない体質の人間がいるという。

それがAさんだ。

最初に見てもらったのは大学の頃。

3人の男性に告白され、友達と同伴で「○○の母親」と呼ばれる有名な占師に見てもらった。

『この男はどうでもいい、こっちの男を絶対手放してはいけない』

助言の男は同じ大学に通い3人の中では一番ハンサムで、親が食品関係の社長という噂だった。

初めて二人で食事に出かけた晩に、男は高級ラブホテルに彼女を誘った。

助言を信じた彼女は意を決してついてくと、男は彼女を尻軽と罵り、半分レイプに近い仕打で彼女をもて遊んだ。

挙げ句、数ヶ月後に妊娠が発覚した。

妊娠を打ち明けると、男の態度が豹変。

真っ青な顔をして彼女の肩を掴み、『おろせ』と唱え続けた。

その日の真夜中、彼女のアパートに押し掛けて来たのは男の母親。

玄関口で罵声を浴びせられ、慰謝料と手切れ金と思わしき100万近く入った封筒を投げ捨てる様にして出ていった。

小さい頃から暖かい家庭で育てられた彼女は、その場で泣き崩れたという。

中絶を決意したのもその晩の事だった。

妊娠中絶の心身に残るダメージは計り知れないものがあった。

よくある話しと言えばそうだが…

街をふらふらしているとキャバクラのアルバイト募集の看板に目が止まり、彼女の中で何かが弾けた。

その年は留年。

悪い男と付き合うようになり、ズルズルと覚醒剤にまで手を染めたという。

大学を中退して、親からの仕送は無くなり半勘当状態になった。

ドラッグに溺れ金が無くなると、彼女は風俗嬢にまで身を落とした。

「もう終わりだと思っていた」

「いつでも死んでいいと思っていた」

彼女はまだ22の時だったそうだ。

彼女は暗い夜道を歩いていると、手相占いの薄明るい灯篭看板が目に入った。

見てもらったそうだ。

すると

生命線がもう切れていると言われたそうだ。

彼女は笑った。

そしてその占師は自分の袖をめくり、手のひらを伸ばして彼女に見せこう言った。

占い師が何故、占い師なんて職業を選ぶのか君には分かるかね?

私もなんだよ。

それから10数年。

彼女は今、美人タロット占師として関西を中心に活躍している。

怖い話投稿:ホラーテラー ハミーポッポーさん  

Concrete
コメント怖い
00
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ