短編2
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シロ

幽霊になるのは何も人間だけじゃない。

動物だって幽霊になって、

成仏もする。

ある動物病院で、患畜として預かった犬が亡くなった。

数日前から風邪を引いて伏せっており、

18歳と言う年齢もあってか、

あまり苦しまず眠るように息を引き取った。

人間で言うと約90歳。

大往生であった。

早朝なので家族が到着する間、

最期を看取った医師は、

テキパキと受け渡しの準備をしていた。

すると微かに、

ハッ、ハッ、と、犬の呼吸音が聞こえる。

すわ生きていたかと振り返り、

台の上の患畜を一応検査するが、

いかに自分がまだ新米でも、

生死の区別くらいは流石につく。

変だなと再び机に向かい、

書類を書いていると、

またハッ、ハッ、と聞こえてくる。

今度は振り返らず、

目の端で台の方を見る。

犬の足と腹が見えた。

台のそばに中腰で座っている。

台の上を見上げているようだが、

端目なので、顔はギリギリ見えない。

だが呼吸音は確かにそこから聞こえていた。

僅かに見える首輪は古そうな金属製で、

見覚えがあった。

さっき自分が、

最期を看取った犬の首輪だ―――。

突然、チャイムが鳴った。

家族が到着したのだ。

犬の幻影は消えた。

若い獣医師はこのことを、

早速恩師に報告した。

「まあ幽霊だろうね。私も沢山見たさ。」

「先生もですか?」

「今でも見るよ。それに犬だけじゃない。猫も鼠も、他にもな。」

「でも私が見たのは、白い犬でした。

患畜は黒いラブラドールです。」

「そりゃ犬だって大往生すれば、

死装束ぐらい着たいだろう。」

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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