中編7
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怨霊

怖いけど おもろーだったから コピペします   

これは今から13年前に起きた出来事です。

今ではあれが何だったのか、分かりません。

幽霊であれば良いと願っています。

当時私は上京してきたばかりで右も左も分からない状態でした。

祖父からもらったぼろぼろの東京マップを手に、見知らぬ都会を彷徨いました。

上京の理由は出稼ぎです。

地方で職にあぶれていた私は遠い親戚を頼って来たのでした。

「職は知らんが住む場所なら安く提供してやろう」

叔父にあたる其の人は電話でしか話したことも無く、まったくもって不安でした。

普通なら不慣れな土地です。

迎えに来てくれてもよさそうなものだと思いませんか?

しかし今になって思えば、あの時の不安な気持ちは虫の知らせだったのかもしれません。

目的のアパートに着いた時は日が暮れかかっていました。

そこにはおばさんが立っていました。

「ようこそおいでました。お疲れでしょう。案内します」

私は案内されるがまま、その薄暗いアパートへと入って行きました。

入り組んだ場所に建っているだけでなく、建物自体がさらに奥まったところへ伸びている為か私はなにか、いいしれぬ圧迫感を感じました。

実際、日は暮れかかってましたが、まるで暗い洞窟に入っていくような錯覚すら感じました。

小さなおばさんの背に止まっている蜂が妙に恐ろしく、私は荷物を握り締め

「いやー、東京は始めてなので、人がおおくって」

と声を大きめに言いました。

するとおばさんは振り向いて

「静かに!!」

と怒鳴りました。

私はその時そのおばさんが、女装したおじさんだと分かりました。

咄嗟の怒鳴り声が男の声だったのです。

私は意気消沈し、その時は都会の恐ろしさを感じました。

今となってはそこが異常なところであったと自覚しています。

部屋は割と広く血なま臭いのを除けば、文句の言いようが無かった。

しかし東京の家賃は、いくら親戚価格で提供してくれているといっても9万と高かった。

六畳が一間と床板のめくれた台所。

水は絶えず濁っていた。

だが私専用のトイレは有り難かった。

しかし、トイレの穴の奥が一番血なま臭かった。

おばさん・・・

いやおじさんの厚化粧はぎらぎらと輝き、むっとする化粧の匂いがいつまでも吐き気を催しました。

そして化粧を落としてきたおじさんが今度は何事もなかったかのように再び訪れて来て挨拶をしました。

「遠いところご苦労様。所用で迎えにこれなくて申し訳ない。女性が応対しただろう?どうだった?」

「え?」

「綺麗だったか?」

そう言うと小太りのおじさんは私の目を除きこみました。

アイラインと言うのでしょうか?

目のあたりがまだ化粧が落ちずに残っていました。

「なんとも・・・」

あいまいに口だけで返事するとおじさんはあからさまに機嫌が悪くなりました。

部屋に漂う鉄っぽい血のような香りと、私の脂汗とおじさんの化粧の匂いが風も無い六畳に充満していました。

その夜、備え付けのほこり臭く、ゴワゴワした布団に入っていると部屋の中に、複数の動く物があります。

気配というか、音というか・・・

匂いと言うか・・・

とにかく何かが私の布団の周りにいるのです。

しかし、私は強引に目を瞑って眠りました。

相当疲れてもいたようです。

次の日、いくつかの場所をあたってバイトを探しました。

しかし、なかなかに見つからず喫茶店でコーヒーを頼み、街の喧騒に怯えながら小さくなって寂しい思いでした。

・・・ふと、私は自分のコーヒーカップを持つ手首に目がとまりました。

『・・・歯型?』

良く見ないと気付かない、しかしはっきりと歯型がついていました。

私は

『寝ぼけて噛んだのだろう』

と思い込みました。

私のものよりはるかに小さな歯型がついた手で飲むコーヒーは不味かった。

正直、帰りたかった。

しかし帰る場所はアパートでした。

おじさんに会うのではないか?と怯えながら部屋に足早に戻り鍵をかけました。

血なまぐささは幾分、収まりましたが、化粧の匂いが新しく残り香として部屋に漂っていました。

その夜。

私がたくさんのよだれのついた布団をかぶり眠っていると、またも、いくつかの気配を感じます。

『猫か?』

そう思いますが私は熱帯夜のような(実際にはまだ夏ではなかったです)蒸し暑さの中で汗を垂らしながらも布団の中で震えていました。

しかし私は逆に耐えきれず暗闇の中、布団からいきなり手を出し、その黒い塊のほうへ『ブン!』と布団を持って払いました。

気のせいだと確かめたかったのです。

しかし、私の手の甲はある冷たい物にぶつかり、それは勢い良く壁にぶつかり畳に転がったようでした。

私は手に感じた感触に背筋が凍りました。

昔、若い頃、喧嘩をして殴った頬の感触と同じだったからです。

黒い塊がころころと転がって止まりました。

その時ふいにそれが人間の頭部であると理解出来ました。

その刹那

「ここどこ!!」

突然それが低いドスのきいた声で叫びました。

私は気を失ったようです。

目覚めると、たくさんの頭部は消えてました。

私は汗びっしょりだったので体を拭くためにシャツを脱ぎました。

そして驚愕しました。

全身、歯型だらけだったのです。

・・・自分で寝呆けてやったのではありません。

その証拠に私の頬に血が出そうなほどの歯型がついていました。

しかも、その歯型は大きいのから小さな小さな物まで様々でした。

私は悲鳴をあげて出て行こうとしましたが、髭を剃るのは忘れませんでした。

おばさんおじさんは現れませんが、私はどんどん追い込まれていきました。

実際、このころの私は今思っても行動がおかしいです。

その最たる理由は相変わらずその部屋で寝てたことでしょうか。

私の体重は10キロ以上減り、傍目から気味悪がられるほど青白くなっていました。

そのせいか仕事も全く見つからず、疲れ果てて帰るという毎日でした。

歯型は1日消えることなく全身に及び、面接官の一人から

「その歯型は?」

と質問されましたがさしてうまい言い訳も見つからずそのまま

「噛まれてるようですね」

と言ったところ苦笑されました。

彼女にやられたとでも思ったのでしょうね。

しかし私の限界は近くなっていました。

幻が見えるようになり、歯型を隠すため全身に包帯を巻いたりもしました。

そのくせ表を出歩き、見知らぬ人に

「おはようございます!」

などと大声で言ったりしてました。

気が狂う直前だったようです。

その夜はおじさんからの差し入れと書いてあり栄養ドリンク剤が部屋に置いてありました。

私は疲れていたので遠慮なくゴクゴク飲みました。

そして私はいつもより深い眠りにおちたようです。

そのおかげか夜中に目が覚めた時すっきり頭がさえてました。

そして私の体にとりついている10数個の黒い塊が私を噛んでいる事が、異常だとはっきり気付いたのです。

怖がってる場合じゃないと。

まぁそうですね。

そう思ってる私は冷静なつもりでしたが、ピークに達っしていたのでしょう。

ムクっと置きあがると暗い部屋の中で黒い塊がズズズっと畳を転がるように進み台所に消えていったのを感じました。

私は

「待てぇ!!」

と今まで上げたことの無いような声を上げると台所に行きました。

そしてそれらの影がなぜかトイレに逃げたような気がしてトイレに駆け込みました。

トイレは和式でしたが中は真っ暗です。

電気をつけようとしましたがつかず、私は荷物箱をひっくり返し懐中電灯を手にしました。

そして笑いながらトイレの中にライトを向けました。

闇に照らし出される汚物・・・

目を凝らすとウジが蠢いてるのが分かります。

そして其の中に・・・

うつろに見上げる沢山の頭部が私を見上げていました。

私の糞尿にまみれて・・・

「ぎゃぁああああ」

私は悲鳴を上げ、なぜか帽子を手にとると下着姿のままドアを蹴破るように飛び出しました。

「ぎゃ!!」

ドアの向こうに誰かがいたようでした。

振り向くと女装したおじさんがマスターキーと、包丁を持って倒れていました。

「いきなり開けるな!!」

そう怒鳴られ私は無償に腹が立ち近くの石をどんどん投げつけました。

おじさんは悲鳴をあげうずくまりました。

私はいつしか投げている石が人の頭であることに気付きました。

それらがおじさんにどんどん噛みついています。

私は怖くなり、アパートを飛び出しました。

あれ依頼、叔父とは連絡をとっていませんし、連絡も来ません。

あの頭部が幽霊であってほしいと思っています。

そうじゃないと私はあのアパートにいる間、ずっと毎日、糞尿を・・・

あれから13年が経ち、今では遠い記憶になりましたが私の首元に残る一つの歯型はしばらく消えませんでした。

私が殴った頭部だったのでしょう。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名( ̄^ ̄)さん  

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