短編2
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スチームロコ

十年程前、金と時間のわずかな余裕が人生史上珍しく出来たことがあって、スチームロコに乗りまくりましょうな

時期があった。

自分はカメラ担当、友人1はビデオ、友人2は音だけ録りたいとかで、一緒にいるのが恥ずかしいような、ワケわからんな機材装備で毎回やって来た。

鉄オタで知らない者同士、たまたま居合わせた所で和やかに会話することはままあるが、自分はそういうの苦手だから、必ず友達と同行するってのもあるし、何より唯乗るのや眺めるのは幾らでも桶だが

ガチでコアなヲタではないから、細かな知識がなくて話しかけられても、たいして答えの用意がないわけだ。

だから、友人2がそういう場の応対担当な役割だった。

後日お約束の日にまた集まってビデオ録画見ようというわけで、日常生活に戻った。

それから慌ただしくて、旅のことは思いだしもしなかった。

一月半くらい経った頃だったかな。

友人2が連絡してきた。ちょっと家寄ってと言うから夜渋々そいつん家へよったんだ。

そして、イヤだって言うのに、無理やり録音した音源聴かせられた。エスエルの音が、色々な場面で入っている。

会話も入っちゃてるね、残念とおれは言った。友人は、よく聞けよ、と怒る。仕方なくしっかり聴いた。

駅のホームらしき場面の繋ぎ会わせ編集になっている。まじ好きだよなあ、こういうの。と友人2のことを

思っていると、色々話しかけてくる知らないおじさんの声と、珍しく何も会話を返さない友人2の様子が伝わってくる。

すると、

聞いてねぇのか

という物凄い怖い声が録音されていた。

酷いね、これと言って、友人を振り返ると、真っ青な顔。

友人は次はビデオのほうを再生した。

駅のホームに立つおれと友人2の姿。友人1は、なんだかわびしい映像ですがwなどと喋っている。途中下車して散策し、駅に戻ったとこの様子だ。さっきのオッサンの声、そこで録れたんだけど。と、友人2が言う。

自分たち三人だけだったはず。かなり落ち込んだ友人は、ちゃんとお祓いにいったらしい。

Concrete
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