うちの学校に来た新しい理科のN先生は、とてもうっかりやだった。
生徒の名前と顔が一致せず、出席を取る時は間違えてばかり。元素記号を間違えて黒板に書くなんてしょっちゅうで、中でも酷かったのは、備品を繰り返し壊してしまうことだった。
ビーカーをはじめ、試験管やフラスコなど…本人に悪気はないのだろうけど、つい「うっかり」と手が滑ってしまうらしかった。
そんなことが度重なったので、一部の生徒から罵られるようになっていた。また、職員の間からも煙たがられていたという。教頭先生からは「これ以上ミスが続くなら、学校を辞めてほしい」とまで言われてしまった。
ある日の放課後。教頭先生が校内を見回りしていると、理科室のほうから「ガシャーン!」とけたたましい音がした。
「また備品を壊したのか」
舌打ちした教頭先生は、理科室へ走った。
「あーあ、また割っちゃった」
中からN先生の声がした。しかし、扉を開けて中に入ると誰もいない。
よくよく見渡すと、窓が開け放たれており、カーテンが風に靡いていた。
「…まさか!」
慌てて窓際に駆け寄り下を見る。
階下では、N先生が冷たくなっていた。
作者まめのすけ。