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わたしが小学二年生の頃の話です。
母子家庭のわたしと母は、一年前から学校近くの古びたビルを生活拠点としていました。
部屋の作りは簡単で、玄関を入ったらすぐキッチン、右手にトイレと三畳の和室。
玄関からキッチンを過ぎて真っ直ぐいくと六畳の和室、さらにその右手に同じく六畳の和室がありました。
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一番奥の和室にはダブルベッドがあり、わたしはいつも、そこで母と寝ていました。
ある晩、珍しく目が覚めたわたしがベッドを見回すと、そこに母の姿はありませんでした。「トイレかな?」とも思いましたが、どこも電気はついていません。
唯一部屋を照らしているのは、ベッドから観れるように向けられたテレビの明かりだけでした。
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多少不安は感じたものの、あまり深く考えず、わたしはテレビを見始めました。
画面にはコケシが向こうを向いた状態で映っています。
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そして、ゆっくり、コケシの首がこちらを向きます。
わたしは金縛りにかかり、画面から目を背けることさえできず、ただ画面を見つめていました。
そして...
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music:3
コケシの首がぽろっと、落下、
部屋中をゴロゴロ転げ回る音だけがなぜか聞こえるのです
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わたしは怖くなって布団に潜り込み、辺りが静かになるのを待ちました。
そして、ぬいぐるみを抱きしめて、母を探してキッチンへ向かいます。
玄関に、見覚えのない黒くて大きな靴がありました。
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その靴に違和感を覚えたものの、
早く母を見つけたい一心で、
わたしは三畳の和室の引戸に手をかけました。
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そこには、敷布団を敷いて寝ている母の姿がありました。
母はあたしに気づくと
「どうしたの?」
と言って上体を起こします。
後々その部屋を、
わたしの部屋にするつもり
だったらしく、
その晩は、トイレの匂いが漏れてないか、
確かめるためにそこに寝ていたそうです。
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話はまだ終わっていません。
あの晩、母を見つけたわたしは
部屋の前に立ちすくみました。
幼いわたしの目には
はっきり写っていたのです。
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眠る母の傍らで、
その姿を正座して覗き込む
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shake
黒い男性の影を。
作者月月
体験談です。