中編3
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滴る音⁽コピペ⁾

music:4

目覚めると、打ちっ放しのコンクリートの壁に囲まれていた。

後頭部が痛む。湿気を帯びた冷気の漂う空間に身震いをする。

“ここは何処なんだ?”

全く状況が掴めない。確か自分は駅に向かっていた筈だが?

それにしても今の自分の状態はどうした事か…椅子に縛られると云うか固定されている。

医療用の安静の為の抑制ベルトに似た物に、腕、腹部、足が締められているのだ。しかも首まで、金属だろうか? 冷たい感触の薄い輪が括り付けられ、自由を奪われていた。

身動きが出来ないから確かめようがないが、これは拘束具なのか? 後ろに螺子でもあれば処刑器具じゃないか。

何と云ったか、ガ、ガロッ…? いや、いい。名前が判った所で何の解決にもならない 。頭の中は疑問符ばかりだ。目覚めてから既に何時間も経っている筈だった。

最初は訳の解らない恐怖に支配され何者かが現れて、それこそ拷問でもされるかと怯えていたが、人の来る気配がない。

目に見えるのは湿った壁ばかりで窓がなく、うっすらと頭上から明かりを感じるだけだった。動きがとれないのは辛い。

何時間? いや何日過ぎたんだろう? 誰でもいい。来てくれ! 誰かいる筈だ。俺をこんな目に合わせている奴が! 動きたい! 歩きたい! おかしくなりそうだ!

俺は堪らず喚き散らし、自分を監禁した顔も知らぬ相手に、毒づき罵倒した。

しかし無駄に体力を消耗し喉の渇きを覚えただけだった。

…あいつは、待ち合わせ時間を過ぎて一人で汽車に乗ったんだろう。愚鈍な奴だから迎えに来たり、連絡が取れないからって捜したりなんてしない。仕方ない、そういう女を最終的に選んだんだから。

ふと君の哀しむ顔が浮かぶ。素っ気なく冷たい仕打ちをした時に見せる君の顔は…?! …何やら頭に冷たい雫の様なものが落ちてくる。雨漏り? でもそんな様子はない。雨音もしない。

だがそれは間隔をあけて断続的に頭上に落ちてきた。口に入れられたらなと、渇き切った動けない身体を恨めしく思った。

そしてまた時間だけが過ぎていく。妙じゃないか? この上から落ちてくる水滴は何なんだ? 何故止まらないんだろうか?

と思った瞬間、充分に俺の髪を濡らした水滴は、頬を伝い毛先から流れて、シャツやズボンに滴り落ちてぽつぽつと染みを広げた。

それを目にした刹那、俺はあらん限りの声で叫んだ。そして無駄だと知りつつ、立ち上がろうとして暴れまくった。

この場から逃れようと試みたが、金属板の端で首を切り自分を痛め付けるだけの結果となった。

もう勘弁してくれ、限界だ。俺は必死で背中をのけ反らせ床を蹴ろうとした。

執念か、椅子が木製だったからか頑として動かぬ筈が、俺は仰向けに倒れ込んだ。そうしてやっとの思いでアレの正体を見た。

上部は吹き抜けになっていて天井が高い。途中のフロアから女が身を乗り出していた。

女は目を見開いたまま手を差し出す様に伸ばしている。俺が倒れ込んでしまったので今は頭ではなく、腹の真ん中に花を咲かせていた。

“君だったのか? ずっとそこにいたんだ…俺は一人じゃなかったのか。おいて行こうとしてたのを気づいてたんだ? それより大変だったな? 女はすごい。負けたよ。わかった。もう行かないよ…って言っても聞こえてないよな”

俺も疲れたよ。

俺の目に赤く、赤く…

そして滴る…君の音。

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