中編3
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お出掛けの前に。

従姉妹が体験した話。

当時、若い女性向けの雑誌で読者モデルをしていた従姉妹。顔立ちも綺麗であり、小さい頃からバレエを習っているということもあってか、立ち居振る舞いも淑やかだった。そのためか、そこそこの人気を誇っていたという。

そんな従姉妹にも悩みがあった。高校時代に付き合っていた元彼の存在だ。彼の浮気癖に嫌気が差して別れたのだが、最近になってしつこくよりを戻してほしいと言い寄ってくるのだ。

次第に彼の行動はエスカレートしていった。日に日に着信が多くなり、メールも続いた。

「思い込みの激しい人だったのよ。一度こうだと決めたら、周りが見えなくなるタイプでね……」

その日も仕事を終えて事務所を出ると、途端に着信が来た。見れば、やはり彼からである。疲れていたこともあり、イライラしていた従姉妹は不機嫌な調子で電話に出た。

「もしもし?」

「嗚呼、ユリ?俺だけど。ねー、今から会えない?駅前にいるんだけどさぁ、会おうよ。なあ」

「……ごめん。仕事で疲れたし明日も早いの。悪いけど、もう帰るね」

「いいじゃん、ちょっとくらい。そんなに時間は取らせないからさー。ちょっとだけ。ちょっとホテル行くだけだからさ、付き合ってよ」

「何言ってんの。あのね、もう私達は別れたでしょ。関係ないのよ。だからもう電話もメールもしてこないで」

「やり直そうよー。俺、やっぱりユリいないとダメなんだよー。な、頼むよ。話だけでも聞いてくれよ。な?な?」

「あーもう!うるさい!」

しばらくの押し問答の末、従姉妹は電話を切った。その日は彼から電話は掛かってこなかった。

それから数週間後。その日は久しぶりの休日で、友人らと女子会に行く予定だった。洒落たカフェでランチをしようということになり、車で行くことにした。

車庫に入り、車に乗り込む。そしてエンジンを掛けた瞬間、携帯に着信があった。知らない番号からだった。

スタッフからの急な連絡かもしれない。従姉妹は「もしもし」と電話に出た。相手は数秒黙った後、「久しぶり」と言った。彼だった。

「もう掛けてこないでって言ったはずよ」

「あのさー、今日、出掛けるの止めにしてくんない?」

「はあ?何で私が出掛けること知ってるの」

「愛してるからだよ。お前のことなら何でも知ってるよ。なあ、今日は出掛けたりしないでくれないか」

腕時計をチラリと見る。そろそろ出発しないと間に合わなくなりそうだ。苛立ちのあまり、ハンドルをトントンと指先で叩く。

「マジで付きまとうの止めてよね。それにあんたがどう言おうと、私は今から出掛けるから」

「出掛けないでよー。出掛けたら不幸になるよー。それでもいいのかよ」

「不幸って何よ。どうなるんだか言ってみなさいよ!!」

彼はピタリと黙った。従姉妹はふんと鼻を鳴らすと、電話を切り、車をバックさせて車庫から出ようとした。

ーーーガガガガガガガガッ!!

何かを乗り上げたらしく、凄まじい音がした

「、何よこれ!」

従姉妹は慌てて車を降りると、何事が起きたのかと車体を覗き込んだ。そして息を呑んだ。

そこには胴体をグチャリと踏み潰され、顔面から流血した彼がこちらを見ていた。

「ダカラ、イッタデショ」

従姉妹は苦々しげに煙草の煙を吐いた。

「……あいつ、私の車の下から電話してたのよ」

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怖いですね。
彼氏頑丈ですね。

こぇーーーーー!∑(゚Д゚)

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aoiさん☞まめのすけ。

そうなのですか!!

看護士さんといえば白衣の天使というイメージですが、喫煙者の方が多いのですね。日勤でも大変そうですし、夜勤などもありますから、ストレスも溜まりますよね。その捌け口として煙草を吸われるのかもしれないですね。

川辺で……つまり白衣姿ということでしょうか。それもまた凄い画ですね。確かに川辺は開放感があって気分も落ち着くのでしょうけれど。

>この人は煙草を吸わないだろう・・・
看護師さんも吸っている人は多いみたいですよ。
今、川辺にあるそこそこ大きい病院の近くで働いているのですが
休憩時間と思われる看護師さんが川辺に来てタバコを吸っている
若い看護師さんをよくみます。何故でしょう。
ストレスでしょうかね?

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Noinさん☞まめのすけ。

実に顔文字がキュートですね。やはり怖いと仰って頂けると冥利に尽きます。ありがとうございます。

人間の執着心とは恐ろしいですよね。というか、人間は本当に恐ろしい。理性を失った大人も然りですが、純粋なため、突発的な行動を取る子どもも時として恐怖の対象となったり。

生きている人間のリアルな一面……仮面の下に隠された素顔がいつも笑顔とは限らないですからね。

ガラさん☞まめのすけ。

毎回のコメント、本当にありがとうございます。ガラさんのお名前を見ると安心します。

コメント返しが順不同になってしまい、申し訳ありません。どなたにコメントを返したのか自分でも分からなくなりつつあります(笑)。

幽霊が主張する話も肌が粟立ちますが、時として幽霊を凌ぐのが生きている人間の執着心ですね。ストーカーという、理性を大幅に失った人間の凶行には息を呑むものがあります。

リュミエールさん☞まめのすけ。

本当ですね。特に女性は男性と違い、か弱く腕力もないのですから気をつけないと。男性が必ずしもナイトになってくれるわけではないですしね。

ただ。私はストーカーという立場からしたら、女性のほうが恐ろしいと思います。私も何度かストーカーの話を書きましたが、大体が女性ストーカーです。

男性のように腕力ではかなわないのですけれど。その分、執着心でカバーする。意中の男性を手玉に取りたいというのは女性ならではの願いではないでしょうか。

赤煉瓦さん☞まめのすけ。

以前、何かの番組で女性がストーカー被害に遭い、家に侵入されたという被害を観ました。愛するが故の行動なのでしょうが……被害者は堪ったものではないですね。

幽霊より人間のほうが恐ろしい。ケースバイケースですけれど、私は常々そう思います。幽霊だって突き詰めれば人間ですしね。

最後の締め括りに、これでもかとスパイスを利かせました。短編や中編はいいですね。力まないで書くことが出来るので、個人的に好きです。

uniまにゃ~さん☞まめのすけ。

犬にしこりが出来たと思い、病院に連れて行っら「乳首ですね」と言われました、まめのすけ。です。

うわ、恥ずかしい!!顔から火が出る恥ずかしさでした。後先考えずに行動してしまう癖を直さねば。

人間の人間による人間のためのホラーを描きたいなーと思い、衝動的に書き上げました。ストーカーものですね。

シチュエーション的にいえば、ストーカーものが一番好きです。

ロビンMさん☞まめのすけ。

ロビンMさんの画像、素敵ですね。翁の面でしょうか。

私は今、無性に狐の面が欲しくて仕方ないのですよ。盆踊りの時期になったら、頭に付けたいんですよね。

短編や中編では、特にラストに力を注いでおります。長編と違い、短い文章の中でガツンとスパイスを利かせられたら……と思います。

一口目はそんなんでもないのに、後から「うわ、辛ッ!!」となるカレーのように。

憂さん☞まめのすけ。

ポチッとな、ありがとうございます。シリーズもの以外にも、色んなジャンルの話にチャレンジしていこうと思っております。

怖話のサイトに登録して早一年となりました。様々な葛藤があり、悩んだり苦しんだり……しかし、こうして一年間活動してこられたのは、読者の皆様がいて下さったからだと思います。

本当にありがとうございます。常に土下座をしていたい衝動に駆られております。

本当にこんな男がいるから女性は気を付けないといけないんですよね。                      今回のお話は純粋に人間の悪意に触れているお話でしたね。この場合事故なんですかね?それとも殺人?(´・ω・`)  

まめのすけ。様
「ウザい」にも程があるのに、度が過ぎる行動の結果・・・
流血しながらの一言にザワッときましたよ!
ストーカーって愚かな行動に躊躇無く移れるんですね。
従姉妹の方の態度にスカッとしました。
こんな男のせいで愛車の修理する羽目になったら最悪ですなぁ

冷静な従姉妹に拍手ですね
そんな男に鉄槌が下って良かった(*^。^*)

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思わず怖すぎて、読み終えてテンポよくポチってました。

朧月さん☞まめのすけ。

あの……、いやちょっと待って下さい。

朧月さんてあの朧月さんですよね?アワード賞も受賞された有名な方……。そんな方から直々にコメントを頂き、嬉しい反面、凄く緊張もあります(笑)。

様々なジャンルに挑戦していきたいです。ホラー界をもっともっと盛り上げていきたい野望に燃えております。ホラーはどうしても好き嫌いがハッキリしてしまいますけれど……ホラーが苦手だという方にも、少しでも怖話の楽しさを知って貰いたいですね。

私の周囲では、ホラー好きは誰もいません。ホラー要素の話をすると、「黙れ!」と怒られます。

欲求不満さん☞まめのすけ。

嫌な男ですね……。私も自分で書いていて、「ウザイ人だな」と感じておりました。

基本的にしつこい方はちょっと……苦手です。この間、サーバーを売りつけられそうになった時もそうでした。

茶髪の兄様がしつこいこと(笑)。「水飲んで下さい、ウマいっすから!」と言われ、喉が渇いているわけでもないのにコップを渡され……しかも、顔が近い。真横にありましたよ。

水をちびちび飲みながら、「助けて助けて助けて助けて助けて助けて……」と念じていました。