短編2
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テンシの男 Ⅵ 声の主

新幹線の大事故で出会った、もう一人のテンシの男。

彼の名は工藤 蓮。

死んだ魂を天へと運ぶ役割を補うテンシ。彼が口にした「救えない命もある」その言葉が未だにムカついている。「救えない命…死ぬ運命…」

救済という能力は運命を変えられない…のか。

まだ血だらけの子供の温もりが腕に残っている。

魂を天へと運ぶこと…私は生を与え生きる希望を与える。

どっちが正しいのだろうか?

そんなことを考えながら雪の中を歩いていると年老いた声が真っ白な景色から聞こえてくる。

「君が飯島君かい?」

姿が見えない声に返事をする。

「はい。」喜ぶような声で返事が帰ってきた。

「良かった、こうして会うのは不本意だが君に伝えたいことがあるんだよ」

真っ白な景色から現れたのは身だしなみがしっかりとした杖を持った老人だった。

「こんな雪の中で話すのはやめて、あの店に入ろう。」

私と老人は喫茶店に入り、話を始める「飯島君…君はテンシという役割があり、五年前に亡くなった彼女の力によって蘇った。」

私は驚いた、

「あり得ない!私は彼女が死んだのをこの目で見たんですよ!?」

老人は落ち着いた様子で話を始める

「彼女は君と同じ「テンシ」だった。と言えば信じれるかな?」

彼女がバイクと一緒に崖に落ちたのを見た…あれは嘘の記憶?

「彼女は愛する君を死の運命から救い、死ぬ直前の記憶をいじった」

私は黙ったまま話を聞き続けた。

「彼女は心の底から君を愛し、失う運命を恐れていた。」

老人は私の手を握り「心配するな、彼女は君の背中の翼と共にある。」

握られた手のひらは光だし十字架に似た模様が浮かび上がった。

「これは?」

老人は立ち上がり去り際に

「雪降る、運命…逃れられぬ命を救いたもれ…君よ、急げ。」それだけを呟いて消えた。

それは私にとって最後の救済。

そして彼女との再会。

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