長編8
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……からの電話(稲川淳二)

A君とB君とC君、仲の良い大学生なんですが、

「学生生活最後の夏だからどこかでぱっと盛り上がろうか!」という話になった。

けどアテがないものですから、どうしようかあ..と悩んでいた。

そんな時に、このA君のお家では伊豆の方に別荘を持っているという話になった。

A君が

「よかったら俺のところで集まらないか?」

と言った。

それで結果的に三人で伊豆のA君の別荘へ行く事になった。

男ばかりじゃ寂しいんだけど、現地で可愛い子を調達しようなんて話になって、みんなで伊豆の別荘に行った。

予定では三泊四日だった。

それでみんなで出かけた。

海に行ったからといって可愛い子がそんな簡単に見つかるわけじゃないし、三人で過ごしていると時間はあっという間に過ぎていく。

そうこうしているうちに、とうとう明日は帰るという日になってしまった。

たまたまA君はお父さんお母さんが後から別荘にやってくるというので、そのまま帰らずに泊まり、B君C君は先に帰るという話だった。

「じゃあ最後の日だからみんなでパーっと騒ごうよ!」と言ってみんなで飲んでいた。

なんてことない話をしながらみんなで楽しんでいた。

だんだんだんだん時間が経っていった。

B君とC君は帰るだけでどうせやることはない。

そうしているうちにいい時間になった。

「おぉ、結構遅くなっちゃったなぁ。でもまぁいいか。もうちょっと喋ってようか」

で、また話をしていたわけだ。

その時に

トゥルルルル...

トゥルルルルルルルル..

トゥルルルルルルルル..

電話が鳴った。

瞬間にA君が立ち上がった。

「あ、俺だ。実はさ、黙っていたんだけど、昼間海で可愛い子が居たから、ここの電話教えちゃったんだよ。

これから来るかもしれないから、多分その電話だと思うよ」

「あー、きったねぇなぁ自分ばっかり!」

なんて言っていると、A君が笑いながら立上ち上がって、電話まで行って受話器をとった。

「はいもしもし。・・・はい?もしもし?・・・え?もしもし?」

「あなたキュルキュルキュル..でしょ?」

「あなたキュルキュルキュル..でしょ?」

「なんですか?ちょっと電話おかしいんだけど!もしもし?誰?」

「あなたキュルキュルキュル..でしょ?」

「あなたキュルキュルキュル..でしょ?」

「なんだろこれ?もしもし!冗談だったらやめてよ!やめなよ冗談は!もしもし?もしもーし!?」

ガチャンッと電話を切った。

「ふざけてやがんなぁ..」

「どうしたんだよ?」

B君とC君が言った。

A君が、

「いやさ、今の電話、なんだか全然よくわかんないんだよ。なんだかテープの早戻しみたいに、キュルキュルキュルキュルでしょ?って言ってるように聞こえるんだよな。」

「気持ち悪い電話だなぁ」

「嫌な電話だよなまったく」

なんて話をしていた。

散々飲んでゴロンと横になり、いい気持ちでスヤスヤ寝ちゃった。

次の日になってB君とC君は

「じゃあどうも、お世話になりました」

と言って帰っていった。

A君は両親が来るから残った。

東京へ帰ってきて二三日すると、C君からB君に電話があった。

「おい知ってるか?Aが亡くなったぞ。A死んだんだよ!」

「え!?何が?何それ?」

「死んだんだよ、海で。」

「海で???だってAの奴、泳ぎうまいぞ?あいつ溺れるようなところ行かないだろ!」

「でも死んだんだよ。新聞にも出てるよ..」

それで慌ててご両親の居る別荘へ向かった。

そこにはA君の静かな寝顔のような死体が横たわっていて、ついこの間まで一緒に遊んだとは思えないような状況がそこにはあった。

楽しいはずの夏が、なんだか寂しいものとなって辛い夏となった。

それで両親に挨拶し、二人はまた東京へ帰ってきた。

もうちょっと話をしたいような気がするんだけど、気持ちが盛り上がらず、二人は別れてしまった。

季節は流れ、二人とも学校を卒業し、それぞれの会社へ入り生活が始まった。

夏が来たが、なんとなくお互い会う気もしない。

会えないことはないがなんだかやっぱりA君が亡くなってからなんとなく気まずいというか、会う気にならなかった。

それでだんだんだんだんと疎遠になっていく。

会社に入って同僚も居るわけですから、そっちのほうが付き合いは親しくなっていく。

二年ほど経った頃、突然B君のところへC君から連絡が入った。

B君「もしもし?おーしばらくだなぁ!元気でやってる?たまには顔みたいなぁ。どうしたんだよ?」

C君「実はさ、俺聞いちゃったんだよ」

B君「え?」

C君「いや、聞いちゃったんだよ。多分そうじゃないかって思うんだよ」

B君「ん?なんのことだよ、何があったんだよ?」

C君「二年前の夏覚えてるか?」

思い出したくもない嫌な思い出ですよね。

B君「・・・あぁ」

C君「A死んだよな」

B君「あぁ知っているよもちろん」

C君「あの時さ、別荘へ電話があったのお前覚えているか?」

B君「あったあった。夜だろ?」

C君「言ってたよな、Aの奴がさ。テープを早戻しするような声が聞こえたって言わなかったか?」

B君「あぁ、言ったかもしれないな」

C君「・・・俺のとこ来たんだよ、その電話。来たんだよ。電話出ると、あなたキュルキュルキュル..でしょ?」

って言ってるんだよ。

C君

よくわかんないんだけど、

「あなたキュルキュルキュル..でしょ?」って言ってるんだよ。

初めは何かと思ったんだけど、

「あなたキュルキュルキュル..でしょ?」って言ってるんだよ!

それで俺が「どなたですか?」って聞いても、あっちはずっと一緒なんだよ!

「あなたキュルキュルキュル..でしょ?」なんだよ!

それで俺、しばらく聞いてたんだけど、わけ分かんなくて俺、電話切っちゃったんだよ・・・。

Aの奴も電話切っちゃったよな?

なんかさ、それいけないような気がするんだけど。もしかしたらさ、俺死ぬのかな?」

B君「そんなことないよ。そんなの偶然だよ!」

C君「でもあの電話変な電話だったってA言ってたぜ!

変な電話なんだよ!気持ち悪い電話でなぁ。俺気持ち悪いんだよ!

お前も気をつけろよな?」

B君「何言ってんだよお前?会おうか?」

C君「うんそうだな。会いたいなぁ」

B君「じゃあ渋谷でもって会おうや」

C君「でもお前も気をつけろよな。電話が来たら気をつけろよ」

B君「大丈夫だよ。分かったからとりあえず会って話をしようぜ。

な、渋谷で。楽しみだよしばらくぶりだからさ。俺今から出るからさ、渋谷で会おう」

C君「じゃあ俺も出るから」

B君「うん楽しみだよ」

C君「俺もだよ。じゃあな」

渋谷の決められた場所でもって、B君が待っていた。

かれこれ時間になっている。でもC君はいっこうに現れない。

おかしいなあ..あいつまだこないなあ..そんな遠くじゃないんだけどな..

30分、1時間まってもC君の姿はみえない。

しょうがないから公衆電話からC君のところに電話いれてみた。でも誰も出ない。

やっぱり家は出てるんだよなあ..

2時間近くも待って、あまり気持ちは落ち着いていないんですけど、

これ以上待つのも無駄だと思ったもんですからB君家に帰ってきた。

と、そこへ連絡が入った。

それは、C君が死んだっていう連絡だったんですよ。

え?だって俺さっき..Cと待ち合わせしたんだよ..渋谷の駅で...

電話を受けたのは、どうやらB君の母親らしい。

誰から受けたのはわからないけど、そういう連絡が入ったそうです。

なんでも、C君は渋谷に来る途中で亡くなったらしいんです。

え?じゃあ俺に会いに来る途中であいつ交通事故にあったのか..

じゃあその電話って本当なのかな?って思った。

A君が逝った。C君も逝った。

じゃあ次は俺なのかな?って思っていた。

それからっていうもの電話に出るのが嫌だった。

ずっと電話に出なかった。

何があってもB君は電話に出なかった。

社会人で電話が必要な時でも、むこうから来た電話を一旦留守電で受けといてから聞いた。

自分から電話する以外は電話は切っておいた。

それからまた月日が流れて、B君に彼女が出来た。

楽しい毎日がやってきたんですね。

段々と友達の事が遠い昔の話になってきちゃったんですね。

そんな時に、B君彼女に電話をかけた。

彼女と他愛もない話をして、さんざん笑って電話を切った。

彼女との電話を切ってすぐに、電話が鳴った。

トゥルルルルル..トゥルルルルル..トゥルルルルル..

あ、彼女のやつが何か言い忘れたんだなあと思って、電話をとった。

「あなた..」

違う女の声がする。

「キュルキュルキュル..でしょ?あなたキュルキュルキュル..でしょ?」

B君「もしもし?」

「あなたキュルキュルキュル..でしょ?」

B君「もしもーし!どなたですか?」

「あなたキュルキュルキュル..でしょ?」

同じ事を言う。あ!これは..あの電話だ!

俺のところにもついにきたんだ......

「あなたキュルキュルキュル..でしょ?」

「あなたキュルキュルキュル..でしょ?」

「あなたキュルキュルキュル..でしょ?」

電話はやまない。

B君「もしもし!もしもし!誰なんですか?もしもし?」

「あなたキュルキュルキュル..でしょ?」

「あなたキュルキュルキュル..でしょ?」

「あなたキュルキュルキュル..でしょ?」

「あなたキュルキュルキュル..でしょ?」

「あなたキュルキュルキュル..でしょ?」

「あなたキュルキュルキュル..でしょ?」

電話を切るわけにはいかない。黙って聞いていた。

びっしょり汗をかいている。電話はやまない。

早戻しのテープのように..

「あなたキュルキュルキュル..でしょ?」

「あなたキュルキュルキュル..でしょ?」

「あなたキュルキュルキュル..でしょ?」

「あなたキュルキュルキュル..でしょ?」

「あなたキュルキュルキュル..でしょ?」

「あなたキュルキュルキュル..でしょ?」

段々と時間がたって、夜が白々と開けはじめてきた。

「あなたキュルキュルキュル..でしょ?」

「あなた..キュルキュルキュル..でしょ?」

「あな..た..キュルキュ..ルキュル..でしょ?」

段々とスピードが緩んできた。

「あ..な..たキュ..ルキュ..ルキュル..でしょ?」

「あ..な..た..キュル..キュル..キュ..ル..でしょ?」

意識は朦朧としながらも、受話器にしっかりと耳をつけた。

そのうちに言葉が少しずつわかってきた。

「あなた..死にたいんでしょ?」

「あなた死にたいんでしょ?」

って聞こえた。

それでB君が、「俺は死にたくない!」「俺は死にたくない!」

って言うと、ガチャッと電話が切れた。

相手の言っていることはわかったけど、果たして俺は無事なんだろうか..

月日が流れて、それも遠い昔の話しです。

B君は元気で生活しています。

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