中編2
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ズリズリさん・2

雨が降り始めたのは、昼食を食べ終えた頃だった。

「あ、雨。」

ピザポの一言で気付かされ、窓の外を覗くと、細い雨粒の線が空中を走っていた。

「どうしよ。俺、傘持って来てない。」

呟く声はピザポの物だ。「此れくらいなら、行けるか・・・?」と思案顔。

折り畳み傘は、普段から2本持ち歩いている。

もし帰りまで雨降りが続いていれば、一本貸してやろうと思った。

雨の具合を見る為に、もう一度窓の外を見る。

さっきと同じテンポで、降り続いている。

強い雨では無いが、本降りだろう。こっそり取り出した携帯電話には《午後5時辺りまで続く見込み》と書かれていた。

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・・・・・・・・・。

放課後。下駄箱の前。

2本ある内の一本の傘を、僕はピザポに差し出した。ピザポは受け取ると直ぐに、へにゃりと眉を潜めた。

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僕が傘を2本持ち歩いているのは、理由がある。

一本は母から貰った物。もう一本は自分で購入した物なのだ。

自分で購入した方は、黒地で、縁に浅葱色のラインが入っている物で、良くも悪くもスタンダードな傘だ。強いて言うならば、少しだけ大きめで、荷物が濡れないようになっている。

問題はもう片方・・・母から貰った傘なのだが・・・・・・。

「・・・・・・あの、コンちゃん。」

「嫌なら使わなくて結構。」

蛍光イエローの地に、此れまた蛍光グリーンのカエルがでかでかとプリントされているという、何とも凄まじい代物なのだ。

小学生辺りならまだ許されるかも知れないが、高校生が使うのはかなり厳しい何かがある。

因みに持ち手はカエルの人形になっている。

少なくとも僕は絶対に使いたくない。

「・・・いや、うん。」

空と手元の傘を代り番こに見ていたピザポが、覚悟を決めたらしい。眉を引き締め、力強く頷いた。

「使わせてもらいます。」

然し、右手にカエルの傘を持っていたので、其の姿に迫力は皆無だった。

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・・・・・・・・・。

雨の所為だろう。世界全体がくすんで見える。

そして、くすんだ世界の中で、蛍光色でキャラクター物の傘は非常によく目立った。

「此の色と模様、どうにかならないかな・・・。」

ピザポはそう言って苦笑した。

僕は肩を竦める。

「無理だろうな。カエル好きも派手好きも止められそうにない。」

「コンちゃんのお母さん、カエル好きなの?」

「ああ。好きだよ。」

質問に答えると、ピザポはとても気不味そうに目を逸らす。聞こえるか聞こえないかギリギリの声での、呟きが聞こえた。

「・・・・・・ズリズリさんみたい。」

「ズリズリさん?」

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mamiさんへ
コメントありがとうございます。

苦肉の策です・・・。
一応弁明をしておきますが、マザコンという訳ではありませんよ。捨てるのが忍びないだけです。

僕も休みの日は度々そうなります。
春は天候がコロコロ変わるから、大変ですよね。

案外ポピュラーな妖怪(?)ですよ。mamiさんも既に御存じかも知れません。
宜しければ、お付き合いください。

普段から二本も持ち歩いているとは…紺野さんの性格出ていますね。
因みに、私は少々の雨なら持たずに行って、毎度後悔するタイプです。
いよいよ、ズリズリさんですね!楽しみにしています。

ちゃあちゃんさんへ
コメントありがとうございます。

今、やっと帰れました!

ズリズリさんとは、某有名都市伝説のことです。

女性の方が持つのなら、まだ、ギリギリセーフ・・・・・・でしょうか?
カエルの模様自体は悪くないのですが、如何せん色彩感覚が・・・・・・。

次回も、宜しければ、お付き合いください。

ズリズリさんて何でしょかね?
カエルちゃん、可愛いじゃないですか(^∇^)その傘私も欲しいです!