中編3
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アブダクション

「マジだって!見たんだよ!こう、光って左右に揺れてさ。

すごいスピードで瞬間移動してスッって消えたんだよ!」

「だーかーらー、それはプラズマ現象っていうんだよー。」

「いや、あれは違うね。自然現象的な光じゃないよ。瞬間移動して消えたんだぜ?」

「あー、はいはい、UFO,UFO,わーかったから。」

「なんだよー、信じろよー。」

私は背中で聞きながら、そんな高速で動く飛行体があるわけないだろう、

心の中で思った。

だって、それは私たちがやってるんだからな。飛行体でないと太鼓判を押してやる。

まぁ人間のロマンチストなこと。本当に宇宙からの飛来物だとかいう妄想を

信じている人たちは居るんだから。

キキーッ、ガッシャーン!突然音と共に、私が居るファミレスに車が突っ込んできた。

何が起こったかわからなかったが、中からお年寄りが出てきて理解した。

おそらくブレーキとアクセルを踏み間違えたのだろう。

やれやれついてないな。私は警官が二人入ってくるのとすれ違いに店を出ようとした。

騒ぎで皆立っていて、私はふと視線を感じてそちらを見た。

若い男性だ。その男は私の顔を確認すると、信じられないものを見たという顔で

青ざめて震えだした。

あの男、どこかで見たような・・・・・。あっ!

この間の、被験者。

男は脱兎のごとく逃げた。

あの男、消去されていないんだ。とっさにそう気付き私はポケットから携帯を出す。

「もしもし、記憶消去に失敗してる様子の被験者を発見しました。」

被験者にはGPSが埋め込んであるので、居場所は常に把握できるはず。

アブダクションと呼ばれるものがほとんど眉唾物のように思われているが

それは全て事実であり、ただし、異星人などによるものではなく、これは人によるものだ。

人道的に人体実験など許されるはずが無く、私たちの組織は誘拐を繰り返し

極秘のうちに人体に傷がつかないよう、DNAにいろんな操作を加え

被験者の変化を監視しているのだ。

人間の秘めた能力についての研究をしている。

DNAを操作する際に、強い光を当てると、局部的に記憶が消えるようにも操作している。

ごくまれに光を当てても記憶が残っている場合があるが、その場合は嘘の情報を

入れてやれば良い。例えばアブダクションは異星人の仕業という情報だったり、

架空のUFOの中での実験だったり。

信憑性を持たせるためにプロジェクターで時々空にUFOを投影したりしているのも事実。

彼の記憶も、完璧に消えたはずだった。何故。

考えられるのは、先程の事故のショックで思い出してしまった可能性。

これは非常にまずいことになってきた。

すべてが人間による非道な実験だということが、世に知れてはいけない。

このプロジェクトは決して知られてはいけないのだ。

程なくして、教授から被験者が見つかったという知らせが届いた。

私はすぐに研究所にかけつけた。

被験者はベッドに拘束されていた。

教授は彼を見下ろして言った。

「どうやら君は、操作しても記憶が消えないタイプのようだ。

非常に珍しい。きっと私たちの見たことの無い珍しいDNAの人間だな。

記憶が消えないからには仕方ない。君には一生ここで被験者となってもらうよ。

失踪なんていうのも珍しくないしね。」

男は頭を横に振りながら青ざめた。

私は、男の近親者に男は海の近くであの国の工作員に拉致されたのではないか

というまことしやかな情報を流しておいた。

真実など、どうとでも操作できるのだ。

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この国では。

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