中編4
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鬼の子

昔からの言い伝えで、鬼の子が生まれると一家破滅するので

生まれると間引きするように小さな村では、昭和になるまで間引きの風習が存在した。

私の生まれた町も例外では無かった。

おばあさんは良く、鬼の子の話をしてくれた。

私が生まれた時の昭和30年代はベビーブームでにぎわっていた。

1年3000人近くの人口が増加した。

そんな中で、鬼の子も生まれてきた。

市議会議員の子供がその鬼の子であるという噂がたった。

50を過ぎてからの子供で、それはかわいがって育った。しかし、鬼の子と称される

子供だけあって他の子供より体格が倍以上今で言う健康優良児というに

ふさわしかった。頭も良く学年でも1,2番の成績だった。

しかし、その体格に反して性格は暗く、何時も一人の行動が多かった。

そんな中、私も友達が少なく、どうしてか類は友を呼ぶというか、不思議と仲がよくなって

行った。私の倍以上の体格で無口で、いつも公園に行くと草の間から出てくる

コウロギやバッタを捕まえては、ひねり潰したり、足をすべて切ったり残酷な事が好きで

いつも、周りの同級生からもつまはじきになっていた。

私はその子の家に良く遊びに行った。頭が良いので、学校でわからないことを聞いたり、宿題を写させてもらったりしていた。

親が建設屋の社長もしており、お金に糸目をつけないような育てかたで猫かわいがりして、何でも望む物は買って与えていた。

そんな環境の中でも頭の良さもずば抜けており、将来を期待されていた。

しかし、裏に回ると表のおとなしさと頭の良さをヒルガエス、残酷な行動が目立ち

いつも、学校の先生に目をつけられていた。

ある日、ウサギ小屋の当番で各教室に2羽づつウサギが割り当てられ

8クラス16羽のうち半分の8羽が首や胴体を切られて無残に殺されていた。

これが、大きな問題になり警察にまで話しが及んだ。校長先生は全校集会やPTAの会合でこの問題を取り上げていた。しかし犯人は見つからなかった。

ある日の夕方、帰宅地中で例の健康優良児(kとしておこう)は、公園の雑木林に

入るところを私は目撃した。

何をやるのかと思い、ソーと跡を着けると何やらモゾモゾと草むらを探り、

何かを見つけたらしくてそれをつかむと急いで大きな木の陰に隠れた。

私も隣の木の陰からその様子を見ていた。

Kは右手に巻きつくように、長く太い青大将をつかんでいた。

私は蛇が怖くて逃げ出す方なのに、あのKはすごいと感心した矢先。

無表情のまま、蛇の頭を思い切り大きな木の幹にたたきつけた。

笑いながら首をむしり取り、遠くに捨てた。それで終わりかと思っていると

青大将の胴体を木の幹にこすり付けて、すりつぶす行為を何回も繰り返し

切断すると、ニヤニヤ笑いながら思い切り公園の隅に放り投げた。

それを見た私は、ものすごい怖さを感じてその場に座り込んでしまった。

30分ぐらい放心状態が続いた後、我に返りまっしぐらに家に帰り

おばあさんに報告した。

おばあさんは「鬼の子がしそうな事だ。」とわかりきってるようにつぶやいた。

「お前もわかった以上近寄っては行けない。きっともっと酷いことをする。」と言うと

おばあさんは灸を据える様に私をにらみつけた。

公園であの残虐性を見た時から近寄らなくなった私にわざと

あのKが言い寄ることが多くなった。

私はおばあさんの怖い顔とKのあの裏の顔を見てしまった事を思い出すと避けて通るようになって行った。

ある日。

Kが私の家に訪ねてきたときだ。

おばあさんはKをはじめて見るのに、Kに向かい

「お前は内の敷居をくぐってはいけない。帰っておくれ」と言うと

Kはムスーと怒り顔になるとおばあさんを上目使いでケンセイするように睨み付けた。

すると玄関先の片隅に2箇所いつも備えていた盛り塩がはじけるような音を出し崩れた。

おばあさんは帰るKの姿を見送りながら「すさまじい霊力だ。盛り塩が焦げている」と

塩を盛った皿を眺めて、顔を引きつらせた。

おばあさんは家の中で見ていた私を呼び寄せると

「進、命が大切じゃお前はこの家の跡取りで、一人息子じゃ。あの鬼の子と仲良くするのは

お辞め。そうしないとお前も何時か死ぬことになる。」そういうと

奥の座敷に引き上げていった。

それから、中学に上がりKの事は忘れていた。市では地区により中学を二つに分けた。

Kは南中学に進学して、私は北中学に進学した。

それにより、Kとは逢うことが2度と無くなった。しかしあるとき

Kが南中の番長になり私立高校の生徒と喧嘩して、私立高校の生徒を半殺しにしてしまい

少年院に送られたとPTAの会合で母が聞いてきた事を私とおばあさんの居る前で

話してくれた。

おばあさんは「きっとあの鬼の子は長生きできない。かわいそうに」とつぶやいた。

それから1年。

すべての人が鬼の子Kを忘れ去っていたころ、またニュースが流れた。

Kが少年院の中であばれ、独房に監禁したところ、翌日、首を吊って死んでいた。

とのニュースでした。

学校にはその知らせたニュースとは別に噂が流れた。

Kが首を吊って死んだ頭には2箇所角のようなコブが在ったと。

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やはり、お婆様すごいですね。
どうやって、周囲は《鬼の子》と見分けたのでしょう…中には間違いもあったかもしれませんが…
昔の風習などのお話しも大好きです。

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