【この話はアワードを受賞したロビンM太郎com氏に贈ります。興味のない方はスルーしてください。
でないと、あなたもロビン町に迷い込むことに・・・・】
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その町は、ロビン町と呼ばれている。
いつ、誰がそう呼び始めたのか定かではない。
正式名称ではなく敢えてその名を口にするとき、不可思議な体験をするという都市伝説だけがまことしやかに囁かれていた。
曰はく、人面犬にストーキングされた挙句噛みつかれる、曰はく、口裂け女に求婚され、断ると鋏で切りつけられる、曰はく、花子さんにトイレで告白され、断るとトイレから出られなくなる、などなどいかがわしいものばかり・・・
今日もまた、二人連れの高校生がロビン町に足を踏み入れようとしていた。
「なあ、ロビン町の新しい中華料理屋行ってみねえ?あの三叉路の」
「あそこの角のとこか?新しいか?前からあったぞ」
「そうだっけか?じゃあ、新装開店かな」
そうこうする内に、話題の中華料理屋が見えて来た。
夕焼けの中に、三角形のシルエットが浮かび上がる。
『ザ!!暗黒ロビン飯店』
看板を目にした一人が頷いて言った。
「確かに、新装開店だな。店主変わったのかな?」
「かもな。入ってみようぜ」
二人は微妙にワクワクしながら店舗の暖簾をくぐった。
ガラス戸を引き、店内に入ると、店主らしき人物の声が掛かった。
「いらっしゃいませ!!ヒヒヒヒヒヒヒ!!!」
細い目を逆U字にしながら、にっかりとした笑顔を二人に向けた。
「・・・・・」
「・・・・・」
二人は思わず互いの顔を見て、そして店内を見渡した。
仕事帰りのOLらしき女性がテーブル席に座っていた。他には、着古したスーツを着たおじさんが二人、ラーメンを啜っている。
店主がちょっとアレだけど、まあ、せっかく来たし食ってくか、と二人で納得してテーブル席につく。
「俺、チャーハンセット」
「俺、中華そばに卵追加で」
「あいよ!!ヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!!!!」
「・・・・」
「・・・・」
二人は互いに顔を見合わせ、小声で話しはじめた。
「なあ、ちょっとおかしくないか、あの店主」
「ああ、やっぱ止めときゃよかったかな」
「でも、美味しそうな匂い・・・」
「ああ、そうだな」
二人は、サラリーマン風の男が食べているラーメンを横目に眺めた。
直後、一人が訝しげに言う。
「なあ、あれ、ラーメンなのか?」
「ん?ラーメンだろ」
答えた方も目を凝らす。
おかしい、麺が動いている。
箸で摘ままれた麺が、口に入るまいと抵抗しているかのようだ。
男が麺を強引に啜った瞬間-
「キイッ」
と悲鳴が聞こえた気がした。
「・・・」
「・・・」
何だ、あれ・・・
「へい!!妖精の唐揚げ、お待ち!!」
ぶっ!!!
一人が飲みかけた水を噴き出す。
もう一人も聞き間違いかとばかりに声がした方を見た。
「こんどは何だよ・・」
OL風の女が、目の前に置かれた唐揚げをバリバリと音を立てて美味しそうに頬張っている。
しかし、その唐揚げの形状は見慣れた形状のものとは程遠く・・・確かに、ティンカーベルを唐揚げにしたらああなるだろうなという形をしていた。
羽の部分がパリパリと音を立てて女の口に飲み込まれていった。
「美味そうだな」
一人がうっとりしたような口調で言った。
「おい、しっかりしろよ!!本当は何だろうな、・・・飛魚かな?」
一人が思案顔をする。
テレビのニュースが流れる。
『昨年はニャルラトホテプ種が乱獲に遭い、その触手を用いたニャルラト麺屋が大打撃を受けている模様です』
「へえ・・・」
「大変だな・・・」
二人とも、いつの間にかとろんとした目でニュースを聞き流している。
「チャーハンセット、ラーメンに卵トッピング、お待ちぃ、ヒヒヒヒヒヒ!!!」
二人の目の前に料理が置かれた。
チャーハンのご飯粒には六本の足が生え、所々輪切りにされた妖精の胴体や手足が突き出ていた。いい具合に焼けて香ばしい匂いを放っている。
セットの餃子には・・・何か人型のものが体育座りして並んでるのが皮から透けて見えた!!!妖精かな?グレムリンかな!?
ラーメンは・・・細い触手のようなものがスープの中で泳いでいる!!!卵は既に孵化寸前だが・・・はて、鳥でもない、魚でもない・・・何だ?グネグネしてるし目が幾つもあるし!!!
「可哀想に・・・こんな姿になっちまって!!」
「まだ生きてるけど、済まない、俺も食わなきゃ生きて行けないんだ!!」
二人は合掌して、潤んだ目で叫んだ。
「頂きます!!!」
二人はガツガツと器までたいらげる勢いでかきこんだ。
OL風の女は猫娘のような巨大なネコ目をぎらつかせ、耳元まで裂けた口を大きく開きギザギザの歯で妖精の唐揚げをムシャムシャゴクンしていた。
サラリーマン風の男はよく見ると頭が三つあり、腕が六本もあった。ラーメンを食った男は、カレーライスを追加で食べていた。カレーライスからは、『タスケテ―』と悲鳴が聞こえたが、誰も気にする様子は見せなかった。
高校生の一人も、必死で抵抗するニャルラト麺を咀嚼し、胃の中で最後の抵抗をしてもがきのたうち回る感覚を楽しんでいた。
もう一人は妖精の頭をチャーハンの中から見つけ、おお!!と感嘆の声をあげバリバリと頭骨を噛み砕く感覚に酔いしれた。
やがて、二人の至高の一時は終わりを告げた。
「ふう・・・」
「美味かった」
「またのお越しを!!!ヒヒヒヒ!!!!」
二人は代金を払い、店主のにっかり笑顔を背に店を後にした。
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ロビン町-
そこは摩訶不思議がごく自然に身近にある町
その名を口にしたとき、きっとあなたもそこに足を踏み入れる・・・
作者ゴルゴム13
ロビンM太郎comに捧ぐ〜
(注)この物語は、実在のロビンM氏とは関わりはありません。
ロビン様、おめでとうございます!!そしてごめんなさい!!
超絶調子乗りました!!!