長編9
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キャンプ

キャンプに行った。

家族とも友達ともキャンプはした事がなかったので

初キャンプがかなり楽しみだった。

テントやランプ、寝袋、食べ物など必要最低限の物を車に詰め込み、

竜二、圭太、斗馬、俺の4人でY市にあるキャンプ場へ向かった。

片道1時間半ほど。

デカいテントや4人分の寝袋、鍋などに場所を取られ、車の後ろはかなり狭く居心地は最悪だった。

腰や首の痛さがピークを迎えた頃ナビが終了した。

山に囲まれた駐車場に車を停め、荷物をおろした。

紅葉が見頃のため人が多かったがその日は日曜日。

これから帰る人や日帰りの人がほとんどで、キャンプ場自体は空いていた。

竜「時期的にどうかと思ったけど人少なくていいな」

俺「テント張り放題だな」

斗「テントは1つですよ」

冷静に答えんなよ。

他の客と近いっていうのも微妙だったので、人の少ない奥の、川と山の間にテントを張った。

時間はまだ昼。

こんだけ紅葉が綺麗なんだから見とこうかってことでハイキングコースを歩くことになった。

コースは沢山あったが人がいるとちょっと邪魔なので人の少ない遠くの山にあるコースにした。

獣道だった。

いや、獣道の見習いくらいだった。

雑草と落ち葉でほぼ見えない。

圭「人少ないから草育っちゃったんかな」

竜「看板なかったら迷いそうだな」

季節が季節だから仕方ないけど落ち葉が多すぎて歩きにくかった。

紅葉は本当に綺麗で素晴らしかったんだけども

メンバーがメンバーなので…ね。

男4人で「わぁっ綺麗」「素敵!」「写真撮ろうよ~」とかならないのでね。

15分ほどでキノコ探しが始まった。

こっちの方が楽しい。

見える範囲内でバラバラになりキノコを探した。

食べるつもりなんてないから

珍しいキノコを見つけた奴が優勝だ。

バラバラに探してるんだけど

斗馬はかなりの確率で俺の近くにいた。

いつも思うが寂しがり屋なんだろうか。

なつかれて悪い気はしないのでいつも通りそのままにしておく。

珍しいやつを…と探すもんだから

どれも気持ち悪い100%毒キノコですって感じのキノコ達が集まった。

スーパーで並んでたら誰も買わないよこんなの。

竜二がやたらと沢山採ってきたので優勝は竜二だ。

俺「お前キノコ採りの才能あんじゃね?」

圭「H●KUTOに就職しろよ」

竜「こんなキノコ採ってたら即クビだよ。てかあっちでじいさんが一緒に探してくれたんだよ。」

圭「ずりー。優勝はじいさんな。」

竜二の優勝は取り消された。

キノコ採りで全く進めなかったのでこれから先は寄り道禁止という約束でコースに戻った。

圭太と竜二が先を歩いている。

斗「おじいさん、いました?」

俺「竜二の言ってたじいさん?いたんじゃね?」

斗「見ました?」

俺「見てはいないけど」

いたって言ってんだからいたんだろ。

もし幽霊とかなら斗馬気付くだろうし。

コースも半分を過ぎた頃、数メートル前を歩いていた圭太が小走りでこっちに来た。

圭「竜二キモいんだけど」

俺「お前もキモいよ?」

圭「そういうキモさじゃなくてさ…」

俺「なに?」

圭「空気と話し出した」

少しペースをあげて竜二に近付く。

竜二は1人で楽しそうに喋りながら歩いている。

「あ、いいですね」とか「冬もですか?」とか。

誰もいない空間に向かって話していた。

圭「な?な?キモくね?」

俺「変なキノコ食ったんじゃね?」

圭「斗馬何か見えねーの?」

斗「…何も」

圭「うわーキノコ!キノコだ!絶対食ったよあいつ!!」

俺もそんな気がしてきた。

圭太は再び竜二の元へ行った。

圭「竜二!!俺わかる?」

竜「圭太でしょ。人が話してる時に話すなよ。」

圭「今誰も話してない!」

竜「おじいさん話してただろ。すいませんコイツうるさくて。」

圭「お前何食ったの?何色のキノコだった?」

竜「だからうるさいって」

俺は携帯でキノコを調べようと思った。

幻覚の見えるキノコ、あるかと思って。

斗「圏外ですよ」

圏外でした。山の中だもんね。

キノコ調べは後にすることにした。

俺「キノコ生で食うやついるんだな」

俺「あんな見た目のキノコ食う気しないよな普通」

俺「まぁ、暴れたりしないし会話も出来るからまだいいか」

俺「キャンプ場にキノコ図鑑みたいなのないかな」

俺「…返事してよ」

斗馬に全てスルーされてしまった。

俺まで独り言言ってるみたいじゃん。やめてよ。

斗馬は俺を無視して竜二を見ていた。

何かちょっと…顔色悪い?

俺「具合悪い?お前もキノコ食った?」

また無視された。

俺「返事くらいしろよ」

イラッとしたから斗馬の頭を軽く叩いた。

やっと斗馬がこっちを向いた。

斗「あ…あ゙ー…」

携帯をいじりだした。失礼だなこいつ。

もういいやと思って喋るのをやめた。

すぐに肩をトントンてされた。

[何か言いました?]

携帯画面で筆談始めたよこいつ。

俺「かなり言ったよ」

[うるさくて聞こえないんで筆談にして下さい]

圭太の声は確かにうるさいけど聞こえないほどじゃない。

でも聞こえないっていうんだから聞こえないんだろう。

俺も筆談を始めた。

俺[なしたの?]

斗[耳鳴りうるさくて]

俺[キノコ食ったの?]

斗[食べませんよ]

キノコは食べてないようだ。よかった。

俺[テントまで歩ける?休む?]

斗[頭痛いだけだし大丈夫です]

歩けてるし山の中にいても仕方ないから休まず歩いた。

前では圭太がまだ頑張っている。

竜二がいきなり横の道(道ないけど)にそれた。

圭「どこ行くの!?コースこっち!!」

竜「こっちに珍しいキノコあんだってさ」

圭「寄り道しないって決めたじゃん」

竜「まだ明るいし大丈夫だよ」

圭「駄目だって!」

竜「おじいさん道詳しいから迷わないよ」

圭「じーさんいねぇよ…」

こんな山の中で迷子も困るし、早めに山を下りたかったので俺も竜二を止めに行った。

俺「斗馬具合悪そうだし下りよ?また明日来れば良いじゃん。」

竜「先下りてていいよ」

俺「迷うって!」

竜「道ならおじいさん知ってるから大丈夫だって言ってんだろ」

圭「だからいねーよボケ!!」

誰もいない右側に向かって

「本当すいません」とか言ってる。

まじ気持ち悪い。

竜二はガッチリしてるがこっちも一応男だし人数では勝ってるので力ずくでテントまで連れて行くことにした。

圭「斗馬も手伝えよ!置いてくぞ!!」

耳鳴りで聞こえてないみたいだから手招きした。

気付いたようでこっちに向かってきた。

さっきより顔色が悪い。

左腕を圭太が引っ張り、背中を俺が押す。

斗馬が竜二の右側に回った。

ドスッ

斗『――――…っ!!!』

竜二が斗馬の胸辺りを殴った。

圭「おまえ何してんの!?急に殴んなよ!!」

斗馬はうずくまって少し吐いてしまった。

俺「大丈夫か?」

竜「…斗馬何してんの?具合悪いの?」

圭・俺「はぁ?」

いもしないじいさん話でイライラしてた圭太がついに怒ってしまった。

圭「お前が殴ったからだろ!!」

竜「は?俺なんもしてねーじゃん!」

圭「キノコ食いすぎだカス!!」

竜「キノコって何だよ!日本語喋れバカ!!」

圭太が殴りかかりそうだったから止めに入った。

殴り合いの喧嘩しても多分圭太負ける。

斗馬を立たせて4人で山を下りた。

俺「大丈夫か?」

斗「はい。耳鳴りも止まりました。」

元気無いけど大丈夫そうだ。

テントに戻り、お湯を沸かしながら話した。

竜「じいさんなんかいねぇよ」

圭「そうだよいねぇよ」

竜「じゃあいいだろ。なに言ってんの?」

圭「お前がなに言ってんの?」

竜二はじいさんなんか知らないと言い出した。

あんだけじいさんじいさん言ってたくせに。

竜「覚えてないけどゴメンな?まだ痛い?」

斗「おじいさん、いました」

今度はお前かよ…。

斗「竜さんに殴られた時、目の前にいました。」

圭「いなかったってば」

俺「今は?」

斗「顔上げた時にはいなくなってました」

気まずい雰囲気のままレトルトカレーとインスタントラーメンを食べた。

夜は肝試ししようって言ってたんだけど中止にした。

起きてても喧嘩になるので

さっさと寝てしまおうと寝袋を並べた。

「竜さんの隣嫌です」と言うので

圭太・斗馬・俺・竜二と並んで寝た。

圭太と竜二も離したかったんだ。喧嘩するから。

疲れていたのか、すぐに眠れた。

朝だ。

携帯のアラームがうるさい。

隣を見ると竜二がいない。

反対側を見ると斗馬は寝袋を完全に閉じて寝ている。

圭太は寝袋から半分はみ出て寝ている。

テントの隅…圭太の頭の方に竜二が体育座りしていた。

俺「…なにやってんの?」

竜「じいさん来た」

またかよ。

斗馬と圭太を起こした。

圭太はあっさり出てきた。

元々半分出てたけど。

斗馬は寝袋の中で動いてるけど出てこない。

俺「朝だぞー」

斗「桃さんですか?」

俺「うん」

斗「おじいさん、います?」

俺「いつもいないよ…」

斗「今の、竜さんに聞いたんです」

そうかい。

竜「いない。どっか行った。」

やっと斗馬が寝袋から出てきた。

よく見たら竜二と斗馬の目の下に大きなクマさんが。

俺「寝不足?」

斗「あの状態で寝れる方がおかしいですよ」

俺と圭太はぐっすりだった。

竜二と斗馬がじいさんじいさんうるさい中、圭太と2人で朝飯を作った。

作ったって言ってもカップラーメンだけどさ。

ずぞぞぞっと麺をすすりながら話を聞く事になった。

夜中、テントの周りを歩く足音がしたそうだ。

斗馬は寒気と小さな耳鳴りがして、外の奴が人じゃないと思い寝袋にすっぽり入りファスナーを閉めた。

竜二は他のキャンプ客が遊んでるんだろうと思い、また寝ようとした。

びびびって音が聞こえたと言ってたが多分斗馬が閉めたファスナーの音だ。

斗馬が言うには足音がして5分もしないうちにテントに入ってきた。

竜二は30分以上してから入ってきたって言うから正確にはわからん。

―以下、竜二の話まとめ―

他人のテントに入るのは無しだろうと文句を言おうとしたら金縛りになり動けなくなった。

テントの中をうろうろして一人ずつ見下ろすように見てたような気がした。

目は閉じてたから見てはいないけどそんな気がした。

竜二の頭の近くに来たと思ったら急に体が重たくなり、瞬きが出来るようになった。

薄目をあけるとじいさんが上に座っていた。

「キノコがね、旬なんだよ」

「珍しいのもあるしね」

「良い木には良いキノコが生えるんだよ」

「今なら栗もあるねぇ」

と、キノコや山の幸について語り出した。

育て方とか食べ方とか…。

一通り話終えるとじいさんは竜二の寝袋のファスナーを開け始めた。

そこで急に体が動くようになり、じいさんから離れようと寝袋から出て反対側…圭太の方に逃げた。

テントから出て1人になるのは怖かったから出ないまま。

じいさんがこっちに来るんじゃないかとびくびくしていたが、

じいさんは寝袋の上からは動かず

顔だけ竜二の方へ向けてまた喋り出した。

外が明るくなってきたらじいさんは消えたが、寝袋に戻るのが怖くてそのままテントの隅で座っていたらしい。

起こしてくれれば良かったのに。

起こされても昼同様、俺には見えなかったかもしれないけど。

その間斗馬にもじいさんの声やファスナーを開ける音、竜二が移動する音は聞こえてたらしい。

見下ろされてる感覚もあったが、動かずじっとしてたんだと。

竜「…金縛りになってたんじゃないなら助けてくれても良かったのに」

斗「どうやって助けるんですか。前みたいにターゲット俺に変えられるの嫌ですよ。」

竜「あぁ…そうね」

(前→[彼女]の時のこと)

山の中に行く気になんてなれず、

俺達はテントを片付け帰った。

竜二の家に行き道具をしまい、

ついでに風呂に入った。

斗「あ」

俺「なした?1人で風呂は怖いか?」

斗「怖くないですよ!!」

俺「ごめんて。怒んなよ…。」

斗馬は竜二の叔父さんにもらったお守りを風呂以外の時はずっと首から下げていたらしい。

服の中に隠してたから気付かなかった。

竜「うわきったねぇ~。もう少し大事にしろよ。」

斗「してますよ!汚れはともかく曲がってんのは竜さんが殴ったからじゃないですか?」

竜「…俺本当に殴ったの?」

真っ白だったお守りは汚くなっていた。

灰色の所や黄ばんでる所に擦れて穴が開きそうな所まである。

そして、曲がっていた。

もらってからまだ2ヶ月も経ってない。もっと大事にしろよ。

汚れはどうしようもないので

とりあえず真っ直ぐに直そうとした。

斗「…もどらない」

竜「ナヨナヨしてっからだ。筋肉つけろ。」

斗「ありますよ!!」

斗馬に女の子みたいだの可愛いだの男らしくないだの言うと物凄く怒る。

竜二が斗馬からお守りを取って真っ直ぐに直そうとした。

竜「…お守りって硬いんだな」

直らなかった。

また今度新しいの貰えるように言っておくからって事で斗馬は不満そうだったが諦めて風呂に入った。

結構気に入ってたからな。

今回も圭太と俺はかなりアウェーで、ぶっちゃけ俺達2人は何も怖くなかった。

キノコ食べて頭おかしくなったと思った時は別の意味で怖かったけど。

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