16年04月怖話アワード受賞作品
長編7
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カゾクノカタチ…

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「あら、マサキ。まだ居たの?今日はのんびりなのね?」

俺「あぁ、母さんおはよう。今日は昼からの出勤なんだ。だから、朝は久しぶりにのんびりとね。」

母「そうなのね。それはそうと、またカナコがコワレチャッタノ。へらへらと笑ってるばかりで、何を聞いても返事をしないの。電池が切れかかってるのかしら?」

…母さん、カナコは人間だよ… 人間は電池で動いてる訳じゃないんだから…

俺「そうなんだ。わかった、父さんに相談してみるよ。」

母「頼むわね。父さんは名医だからすぐに治してくれるわね。」

俺「あぁ、伝えとくよ」

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…コワレてるのは母さんあんただろ?無茶ばかりするからカナコがコワレちゃうんだ。ゆうべも遅くまでカナコの泣き叫ぶ声が聞こえた。また折檻してたんだろう? わが妹ながら、カナコの奴可哀想に…

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勤務する総合病院に着いたのは正午前だった。

医局に顔を出してから、階段を上がる。

扉に“院長室”と書かれた扉を開ける。

その部屋にいるはずの、院長秘書の姿が見当たらない…

…またかよ・・・、昼間っからよくやるよ…

俺「父さん、入るよ!」

声をかけると同時に、秘書室から院長室につながるドアを開ける。

予想通り、父は秘書と応接ソファーの上でコトの真っ最中だった。

「あっ、申し訳ありません。」

秘書は顔を真っ赤にして、乱れた着衣を直しながら慌てて部屋を出ていった。

父「なんだ、部屋に入るときはノック位しろ!

それに病院の中では父さんじゃなく、院長と呼べと言ってるだろう!」

俺「悪いね。緊急だったんだ。っていうか父さんも昼間からよくやるね。前の秘書もそれが元で辞めたばかりだっていうのに…」

父「ふんッ、院長職というのは色々とストレスが溜まるんだ!これぐらいのことは目をつぶれ!」

俺「それが元で、母さんがコワレちゃったんだろ?少しは自粛してくれよ。」

タメ息混じりで聞く耳を持ってもらえないとわかりながらも口にする。

父「あぁ、バレないように気をつけるさ!

で、要件はなんだ?緊急なんだろ?」

俺「また、カナコがコワレたんだ。朝からヨダレを垂らしながらへらへら笑ってばかりいる。」

父「またか? 今年に入って3人目か?少しペースが早いな。まぁ、しょうがない。マサキまた新しいカナコを探して来てくれ。得意だろ?」

俺「探すのも大変なんだよ。簡単に言わないでくれよ。」

父「母さんには、カナコが必要なんだよ。それはわかるだろ?お前もそろそろ新しい妹が欲しいだろ?」

…冗談じゃない。新しい娘が欲しいのはあんただろ?俺は知ってるんだ。今のカナコにもその前のカナコにもあんたが手を出していたことを…

俺「人聞きの悪いことを言わないでくれよ。いきさつはどうであれ、カナコは妹だ。俺はそんな目で妹を見たことはないよ。」

父「相変わらず、真面目なやつだ。まぁ、とにかく任せたぞ」

俺「わかりました。なんとかしてみます。」

そう言って俺は院長室を後にした。

出ていく俺と入れ替わりに、秘書が院長室に入って行った。

…また、先程の続きが始まるんだろうな…

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その夜、俺は自宅ではなく、借りているマンションの一室に帰った。

若い女の子を連れて。

女の子の名前はリサ。年齢は17歳だそうだ。

母親が浮気をしていた父親との夫婦喧嘩の末父親を刺し殺し、自殺を謀り一人っ子だった彼女は天涯孤独の身となり、生きるために学校を辞め、職を転々として生きてるらしい。

勤めていたキャバクラで歳がバレてクビになり困っているところに出くわした。

正におあつらえ向きの女だ。

リサ「凄~い、素敵な部屋ね。やっぱりお医者さんって儲かるのね~」

俺「まぁ、それなりにね。それよりも仕事の話だけど…」

リサ「住み込みで働かしてくれるんでしょ? 私としては願ったりかなったりなんだけど!」

俺「あぁ。3年前に妹が自殺してね。それ以来母親が精神的に参ってしまってね。住み込みで身の回りの世話をしてくれる人を探してたんだ。俺も父親も医者なんで、時間が不規則でね。」

リサ「それなら、任せといて。一人暮らし歴が長いから、家事も一通り得意だし。前に家政婦のバイトしてたこともあるんだから!」

俺「頼もしいね。じゃあ君に任せることにしよう。

まずは前祝いだ。飲もう。」

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それから二時間。リサは完全に酔い潰れて眠っている。俺はカバンの中から注射器を取り出した…

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リサ「お願いします。クスリを下さい。注射でもいいです!身体が張り裂けそうなの!お願いします。お願いします。」

リサと初めて会った時から2週間がたった。

そろそろ新しいカナコに仕上げないと。

母はかなり情緒不安定になっている…

何を聞いてもへらへらと笑ってばかりのカナコをずっと殴り続けている。

そろそろ限界が近いだろう…

俺「いいかリサ?お前は今日からカナコになるんだ。俺の死んだ妹のカナコに。そしてこれからはカナコとして生きて行くんだ。それを家族以外の誰にも知られては行けない。幸せな家族の一員、四人家族の長女カナコとして生きるんだ。上手く出来たらご褒美にクスリでも、注射でも好きな方をあげるから。わかったか?」

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リビングのフローリングの上を全裸で這い回るリサの前髪を掴み上げ、優しく語りかける。

リサ「なんでも言うとおりにします。カナコにでもなんにでもなりますから、お願いします!」

俺「いい子だ。さぁ、カナコ。ご褒美だ。」

注射器を取り出し、カナコに射した。

とたんにカナコはおとなしくなった。

俺「さぁ、父さんと母さんが待つ家に帰ろう。」

カナコ「はい、お兄さま。」

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新しいカナコが家に来てから2ヶ月が過ぎた。

とても優秀な妹だ。

母の身の回りの世話、父のあちらのお世話と従順にこなしている。

新しいカナコを迎えるにあたり、我が家はいつものように引っ越した。

カナコが新しくなる度に引っ越しをする。

近所に前のカナコを知るものが居ないところへ…

そしてそこで、お金持ちで仲の良い理想の家族を演じる。

コレが我が家のカゾクノカタチだ…

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「こんにちは。マサキさん。新しいカナコさんの様子はどうですか?」

俺はとあるバーに来ている。

このマスターは、全てを知っている。

俺「あぁ、上手くやってくれてるよ。ホントに優秀な娘だよ、今回のカナコは」

マスター「やっぱり、院長先生のあちらの相手も?」

俺「親父も気に入ったみたいだね。今までのカナコとよりも頻繁にシテルようだよ」

マスター「マサキさんはしないんですか?」

俺「俺? カナコは妹だよ。妹とそんな事にはならないよ。まぁ、もっともリサ時代には何度もしたけどね。」

マスター「変な所で真面目なんですね。それはそうと先代のカナコさんは」

俺「いつも通り、きちんと処理はしたよ。身元不明の変死体を親父が解剖して死亡診断書を書いておしまいさ。」

マスター「そんな事ばかりしてると、いつか痛い目に遭いますよ。気を付けて下さいよ。」

俺「は?お前誰に言ってんの?お前一人消すことなんて簡単に出来るんだよ。口の聞き方に気を付けろ。」

マスター「申し訳ありません。出すぎたマネをしました。お許しください。」

慌てて頭を下げるマスター

俺「でも、そろそろ飽きて来たよね。大病院のお坊ちゃんを演じるのも、今のカゾクと暮らすのも。」

マスター「えっ?じゃあ…」

俺「そろそろリセットかなぁ?」

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『今日のニュースです。

今日の未明、横浜の湾内で男性が浮いているのを、散歩中のかたが発見し110番通報をしました。警察が捜索したところ、男性は都内で病院の院長を勤めるタナカユズルさん、58歳。その周辺から40代のとみられる女性と20歳前後と見られる女性が発見されました。3人は病院に搬送されましたが、搬送先の病院で死亡が確認されました。』

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『タナカさんは10年前に奥さまを病気で亡くして以来一人で暮らしていたと思われていましたが、タナカさんの自宅周辺では、奥さまと娘さんとみられる女性二人と暮らしていたとの証言もあり、一緒に発見された二人の女性との関連と共に身元の確認を急いでいるとのことです。』

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マスター「また、上手く行きましたね。しかも長男を演じていたあなたの存在は全く出てこない。」

俺「当たり前だよ。そんなドジは踏まないさ。

俺とあいつがホントの親子だと思ってたのはこの秘書一人だけ。他の職員の前では一人の優秀な医者を演じてただけだからね。」

マスター「そしてその秘書さんを連れて、逃避行って訳ですか?」

俺「まさか。俺が誰かと行動を共にすると思ってんの?あの秘書には親子を演じてたのがバレてるから今は薬漬けにして監視してるだけさ。そのうちどっかで処理するさ。」

マスター「今回も見事なお仕事でしたな。仮面家族が役にたった訳ですね。」

俺「おいおい、簡単に言わないでくれよ。社会的立場のあるあのおっさんを洗脳するの大変だったんだぜ。事故で死んだ嫁さんと娘役を手配するのも大変だったし。元々居ないはずの息子役を俺は演じた訳だからね。まさか、あのおっさんと母親役として連れて来たおばさんがあそこまでコワレちゃうとは思わなかったけどね。」

マスター「でも、皆さんなかなか楽しんで家族を演じてたご様子でしたけど…」

俺「まぁ、カゾクノカタチなんて色々とあるんじゃないの? 俺には全く理解できないけどね。まぁ、本職の盗みの役にたってくれたんだから感謝しないとね。じゃしばらく姿消すわ。」

マスター「では、お気をつけて。」

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閲覧数コメント怖い
5,2006
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ロビンさん、コメント感謝です。
人間誰しも猟奇的な1面を持っているんじゃないですかね?
その大きさや、実行できるかどうかは別として…
あなたの身近な誰かももしかしたら…
なんちゃって(^_^;)

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よもつひらさかさん、コメントありがとうございます。
そう言って頂けるとありがたいです。
久しぶりのフィクションで、書いてるうちにグダグダになって自分でもよくわからなくなっていっちゃいました(^_^;)
飽きずに読んで頂いてありがとうございました(^_^ゞ

二転三転と良い意味で期待を裏切られました。素晴らしいです。

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